ゴースト

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.28
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本棚登録 : 251
レビュー : 44
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022514837

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】目をこらすと今も見える、あなたの隣の幽霊……鬱蒼とした原宿の館に出没する女の子、戦時中活躍したミシン、ぼけたおじいちゃんの繰り返す謎の言葉、廃墟と化した台湾人留学生寮。温かいユーモアに包まれ、涙がこぼれる七つの幽霊連作集。

感想・レビュー・書評

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  • ゴーストと言っても全然怖くない。思わず涙が溢れることはなかったけど、優しくて切ない7つの不思議な物語でした。


    人や物にも思いがあって、それを伝えられる時にきちんと伝えよう、また聞いてあげよう、死んでしまったらもう何もできないのだから。
    ゴーストはみんなのまわりにたくさんいる。彼らの事を思い出してあげて欲しいということかなぁ。難しい。

    「キャンプ」の話が一番心に残った。マツモト夫人の痛みがひしひしと伝わってくる。辛くて苦しい。


    「第一話 原宿の家」結局幽霊か幽霊じゃないのか不思議な話。
    「第二話 ミシンの履歴」誇り高いミシンの歴史。
    「第三話 きららの紙飛行機」育児放棄されている女の子の前に現れた優しい男の幽霊。
    「第四話 亡霊たち」高齢のおじいちゃんに訪ねてくるのは幽霊?最後便箋に書かれていた言葉が哀しい。
    「第五話 キャンプ」苦労した人たちが辿り着いたキャンプでは。
    「第六話 廃墟」廃墟に惹かれるのはどうしてか。
    「第七話 ゴーストライター」ゴーストとは?この物語で伝えたかったのはこれかな。

  • 「幽霊」がテーマの7つの短編集、どの作品も戦中・戦後の雰囲気を色濃く感じ、直木賞作品の「小さいおうち」を思い出した。個人的には「小さいおうち」のスピンオフのような印象を抱いた。
    中でも好きな作品は、戦争を生き延びたミシンの歩みを綴った「ミシンの履歴」、育児放棄された女の子と戦争孤児の霊の出会いを描いた「きららの紙飛行機」、難民キャンプでの女性の回想に胸が締め付けられる「キャンプ」(ここで語られるハンスとマルガレーテとはあの名作の…!)、曽祖父の「リョーユー」という謎の言葉に隠された意味を探る「亡霊たち」。
    全体的に物悲しいけれど、決して湿っぽくはなく、ちょっと無気味だけれど、どこかあたたかく…中島さん作品特有の、読後の余韻だ。様々な感情が渦巻いてうまく言葉にはできないが、「ゴースト」という存在が現在と過去を繋ぎ、忘れてはいけないことを私たちに伝えてくれているのだなと感じる。
    巻末の参考文献が興味深かった。「忘れてはいけないこと」をしっかり心に刻み直したいと思い、いずれそこに挙がった作品も読んでみたい。

  • ゴースト、幽霊に関する短編。
    第一話の『新宿の家』が好き。
    こんなにうっとりしたのなら、相手がゴーストであってもいいじゃない。都会の中で時間が止まったような場所ってそれだけで味があっていいもんだな。

  • 『小さなおうち』以来の中島京子。7つの短編は時代背景も似ていて、懐かしさや昭和のぬくもりを感じさせるテイスト。巧みなストーリーテリングぶりが相変わらずみごとだなぁと各章ごとに思わされる。
     本書のタイトルにあるようにゴースト(亡霊)たちが関わる不思議なお話だけど、怪談の様相はまったくなく、時代背景や史実に基づいた、あるいはしっかり取材した事実も巧みに活かされた、実に地に足のついたストーリーだ(幽霊の話なのにね・笑)。

     亡霊、幽霊と書いたが、モチーフは土地、建物、あるいはモノに宿った思い、"念"といったものだろうか。目に見えて現れないものに、姿や形を与え、その意を語らしむ。新しい表現かもと思ったが、そもそも小説家の仕事とは、そういった、我々一般人が言葉に出来ない、さまざまな想いや感情を巧みに文章化するものともいえる。改めて、そう思える作品たち、なので上手いな、みごとだな、と思わされるのだった。

     なかでも「ミシンの履歴」は秀逸なお話。ミシンというモノを通して描く昭和史、戦前戦後の女性の立場、社会進出の様子などがよく判る。「頼まれればどんなものでも縫った」とまるでミシンが仕事を引き受けて衣服を仕立てていったかのような表現が面白い。
    「きららの紙飛行機」に出てくるケンタという幽霊は、何度もこの世に出て来ては一定期間を過ごし、実際死んだときと同じように、同じ場所で同じ交通事故で死ぬ(というのも変だが)運命にあるらしく、ぐるぐると同じ人生(?)を繰り返す。『ハリー・オーガスト、15回目の人生』等、リプレイものの話をどことなく彷彿させる面白い設定だ。
    「亡霊たち」「キャンプ」は、そこはかとなく反戦のメッセージをにじませる。とくに「キャンプ」はいろんな人種が入りまじることからも、昨今の中東情勢からの連想で、いわゆる難民キャンプなのかなと読み進むと、、、この設えには唸らされた。

     そして終章「ゴーストライター」。
     社史や立身出世譚を本人たちに代わって執筆するなど代筆業を主に営む小さな出版社に就職した主人公が、とある日とあるバーで、ゴーストたちからゴーストライターの極意を聞くという面白おかしい作り。ユニークな設定や昨今話題となったゴーストライター話や過去の有名な代筆の話などを巧みに織り交ぜながら、実は言わんとするところが、本書のバックボーンというか、全編に一本の筋を通すお話であり、小説家としての著者の思いも語られているのかなと感じるところ。つまり、こうだ。
     職場の上司、三流編集長は、ポートレート撮影に喩えてゴーストライターの極意をこう説く;

    「『おしごと』するカメラマンはね、実物より、ちょっとだけ美人に撮るわけよ。それと同じでね、書くときも、実物より、ちょっとだけよく書く必要があるわけ」

     それを聞いていた、そのバーにいた男(恐らく幽霊)は、編集長が寝落ちしてから主人公にこうアドバイスする。
    「人というのはね、そうそう、簡単には気持ちを変えないよ。容易には口を開かないよ。口を開かせるには、こちらの思いを伝えなければならないんだ(中略) そうだよ。こちらに思いがなくて、どうして人に語らせることができるかね」

     男が出て行った後を継いで、女(こちらも幽霊?)が言う、
    「死んだ者の執念とか、怨念が、生きている人に憑りついてなにかを動かすなんて、そんな古典的なことを、あの人はまだ信じたいのよね(中略) そんなことはないの。起こらないの。実際は逆なの。生きている者の怨念が、あたしたちを骸から引っ張り出すの」

     死んだ者の怨念という喩えで、この短編集の骨子を見事いい放っているんだなぁ。生きている者、つまり著者中島京子が、小説の形を使い自分の思いを、ゴーストをして語らしめているのだなということがよく判る。実に、お見事!!

  • 短編7作。
    切ない哀しみ。
    立ち行かない歯がゆさと、悔恨。
    ふとした温かみが胸を抉る。
    戦争は何も生まない。

  • タイトルの示すとおり、ゴーストの登場する7編からなる短編集。

    幽霊といっても怖がらせるオカルトではなく、背景にある戦争や昭和の設定がうまく生かされていて、現実の出来事とリアルに結びついている。
    亡くなった人たちの切ない思いを、今を生きている私たちが受け継いでいくことの大切さを静かに教えてくれる一冊だった。

  • 温かい気持ちになったあとに、思わず涙があふれてしまう。
    ――風格のある原宿の洋館はGHQの接収住宅でもあった。
    そこに小さな女の子はなぜ出没するのか?
    戦時中、「踏めよ 殖やせよ」と大活躍し焼夷弾をあびながらも生き延びたミシンの数奇な運命とは?
    少しぼけた仙太郎おじいちゃんが繰り返す、「リョーユー」という言葉の真意は孫娘に届くのか?
    おさるのジョージの作者たちは難民キャンプで何をしていたのか?
    やわらかいユーモアと時代の底をよみとるセンスで、7つの幽霊を現代に蘇生させる連作集。

    【目次】
    第一話 原宿の家
    第二話 ミシンの履歴
    第三話 きららの紙飛行機
    第四話 亡霊たち
    第五話 キャンプ
    第六話 廃墟
    第七話 ゴーストライター

  • これだけ科学も医療も発達しているのに、話からにことは数え切れないほどある。
    見えるものだけが真実だとするのはあまりに乱暴で短絡的だ。

    本書は「ゴースト」にまつわる七編の物語だ。
    『ミシンの履歴』
    祖母が使っていたミシンを思い出した。
    祖母は工賃をもらって仕立物をしていたそうだ。
    幼い頃は手作りの手提げや服や色々なものを作ってもらっていたけれど、既製品の方がカッコよく見えて、使うのが少し恥ずかしかった。
    それでも、祖母のミシン部屋は好きで、いつもそこにいたものだ。
    私の思い出はともかくとして、戦前から戦後にかけてミシンがたどった歴史は九十九神と化したミシンの思い出だ。
    必死で生きてきたあの時代。
    そこに想いを馳せる。

    『きららの紙飛行機』
    少年と少女の物語。
    ケンタが話すことはもはや現代人は何を言っているかわからず、外国語のようだ。
    「浮浪児」のケンタは、いつか成仏できるだろうか。
    できてほしい、と切に願う。
    ケンタからもらった紙飛行機を、きららは飛ばし続けられるだろうか。
    願わくばそうあってほしい。

    『キャンプ』
    手塚治虫の『日本発狂』を思い出す話だ。
    物語の展開は全く違うのに、キャンプがそれを思い起こさせるのだ。
    彼女たちはどこへ行くのだろう。
    惑うことなく、光さす方向へ歩いていけたら良いのに。

  • 亡霊たちが良かった。高校生の女の子とひいおじいちゃんとの亡霊たちを交えた交流。

  • タイトルのごとく、幽霊、あの世、といった題材で編まれた短編集。ただし、怪談というよりか、“不思議なお話”といった感じで、なかなかじんわりくるようなものもあります。直木賞作家らしい、と言っていいのかわからないのだけど、ユーモアと、ちょっぴりのセンチメンタルのテイストもあり、いい意味で読ませてくれる話がそろっている。

    特に気に入ったのが、第三話「きららの紙飛行機」。母にしかるべき育児を放棄された少女きららと、自分でもいつ現れるのかわからない幽霊少年ケンタ。二人の奇妙な交流を通しながら、人のあったかさ(暑苦しいまでいかない)みたいなものを感じさせてくれる珠玉の一品です。

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