風神の手

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 391
レビュー : 59
  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022515148

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】遺影専門の写真館「鏡影館」がある街を舞台にした、朝日新聞連載の「口笛鳥」を含む長編小説。読み進めるごとに出来事の〈意味〉が反転しながらつながっていき、数十年の歳月が流れていく──。道尾秀介にしか描けない世界観の傑作ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 遺影専門の写真館。そこで偶然行き会った人々は、運命の糸で複雑に繋がっていた。

    風が吹けば桶屋が儲かる。それなら、その風の始まりはいったいどこにあるのだろう? 3つの中編とエピローグで、物語の欠片が結び合わされていく。その熟練の技が素晴らしい!
    登場人物が悪人ばかり、もしくは善人ばかり、といった趣向の小説は時折見かけるけれども、ここには「根っからの悪人じゃないけれど、うっかりちょっと魔がさして悪いことをしてしまった」人たちが大集合。そして、そのうっかりが風になってバタバタとドミノを倒してしまう。その、脱力するようなやっちまった感が魅力。

  • 風神の手が起こした気まぐれな風によって、多くの人の人生が良くも悪くも変わっていく。出会いや別れを生み、それぞれがまた思わぬところで繋がっていた。
    運命とか巡り会わせとか、もし~だったら、あの時~れば…とか思いはいろいろあるけれど、今を生きていこう。
    道尾さんのこういう話、好きだなぁ。

  • 遺影写真館に関わる人を中心に数十年にわたるつながりの物語。恋人、友人、そして秘密を抱える老人、最後まで読み終えて、大きな物語になる。細かいところまでうまくつなげてるし、こういうの好き。一つ一つでいえば、「心中花」は気に入りました、恋する二人、よく書けていました。全てのつながりは風の神様によるものかしら。道尾さんは月が好きなのかな。

  • 最近の道尾さん作品はそこまでハマらなかったけど、今作は良かった!
    とある街を舞台にした連作短編かと思いきや、世代を超えてひとつの大きな物語が紡がれて行く。
    よく出来ているなぁとも思うし、実際私たちの身の回りでもひとつの事柄がきっかけで人生が変わったり、それがまた他の人に影響を及ぼしてたりするんだよね。
    その事柄っていうのも意図したものじゃなかったり、ほんの些細なことだったりして、まさに「風神の手」なんだなって思う。

  • 偶然吹いた一陣の風が神の手のように様々な偶然を引き起こしていく。タイミングといい場所といい、ここしかないというドストライクで嵌っていく。未来とは人知を超えて変わりゆくもの。運命の不思議に泣き、笑い、時には叫ぶ。受け止める我々人間にできることは、しっかりそれを真正面から受け止めること。4つの連作短編が読み進むごとに伏線を回収していく。おもしろいように大きく広がっていく風にこのうえない心地よさを感じた。

  • 道尾さんの小説はこのところちょっとパッとしないなあ・・という作品が多かったんですが、今回はおもしろかったです。
    遺影専門の写真館に向かう母子。そこから母親の過去の話に・・・・という冒頭からしてどうにも暗い展開なんだろうなあ・・・とちょっとげんなりとしましたが、読み進めていくうちにパズルのピースがぴたりとはまるかのようにつながっていくのがなんとも興味深い。見事の一言です。

  • 遺影専門の写真館に、今日もお客がおとずれる。
    回想連作小説かと思っていたら、だんだんと世界が交錯していく。つながりの意味が見えてきたあたりから、ぐっとひきこまれていく。
    ささいなできごとが、のちのち大きな変化となって現れる。風が吹けば桶屋が儲かる的な、ばたばたとつながって変わっていく展開が面白い。
    人の弱さ、悪意、葛藤。犯罪と思われることがありつつも、タッチが明るく、思いのほか読後感もいい。

  •  いやあ、良かった。さすが道尾秀介。最近はコメディータッチでドタバタ系の作品が多かっただけに、この作品を描いてくれたことは嬉しい。

     全ての章にタイトルが付いているが、1つ1つは独立した作品で、それが実は全てが繋がっているという道尾秀介ならではの技。
     1つ1つの作品が素晴らしく、もちろんその繋がりでアッと驚きたい気持ちもあるのだが、その章が終わってしまうのが本当に残念なくらい素晴らしい作品群。
     
     私の1番のお気に入りは『心中花』。女子高生と漁師の不器用な恋愛がなんとも微笑ましい。そしてその心中が痛いほど伝わってくる。少しの嘘がきっかけで運命が翻弄されてしまう。
     『口笛鳥』では少年2人が事件に遭遇。子どもの心理描写を描かせたら道尾秀介の右に出るものはいないんじゃないかな?と思わせるほど。そういう感覚わかるなあと、自分も子どもに戻り、その世界に入り込んでしまう。
     『無常風』。いよいよ事件のきっかけが明らかに。
     さあ、ラスト!『待宵月』。登場人物が全員集合。

     人間は常に選択を迫られていて、どっちを選ぶかによってその未来は大きく変わってしまう。いつも自分が信じた道を選択していきたいなと思う。

  •  最近の道尾秀介作品の安定感は、際立っている。かつてのようなダークな作風は、すっかり鳴りを潜めつつある一方、これぞ道尾作品という安心感はある。過去の作風との比較に意味はないのだろう。本作こそが、道尾秀介の「今」なのだから。

     舞台は、鮎の伝統漁が行われている、川沿いの町。モデルがあるのかわからないが、そんな町には特異な写真館が存在していた。川と写真館と町が、数奇な運命を紡ぐ。視点が異なる物語の繋がりが、最後に明らかになるという趣向である。

     趣向自体に目新しさはないが、自分の知る限り、道尾作品としては珍しい。一時期、自らの作品を、頑なにミステリーではないと主張していた道尾さんだが、本作は謎の要素も読みどころであり、いい意味で角が取れてきた印象を受ける。

     事情により、町から引越すことが決まっていた女子高生と、事情により、夢を諦め町に戻っていた漁師の青年との恋。引越し直前に起きた出来事とは…。おいおいおいおい、最初の章から先が思いやられるじゃないかと、この時点では思っていた。

     続く章では、小学5年生の少年2人を中心に進む。先の章と共通するキーワードはあるものの、この時点では繋がりがわからない。あまりに危険な少年たちの冒険譚。昭和の頃なのだろうが、ここまで付き合える友情は、なかなかないのでは。

     雰囲気が異なる2編に続き、次の章へ。……。そんなの聞いてないよという告白の連続に、複雑な反応を見せる、「当事者」2人。確かに、「過去」があって「現在」がある。しかし、その「過去」が作られた原因は…。簡単に咀嚼はできない。

     とはいえ、様々な運命のいたずらがあったけれど、「現在」は悪くはない。全体的にはハッピーエンドと言える。だが逆に、「過去」の運命のいたずらのせいで、「現在」が不幸だと感じるケースもあるはずだ。現実にはそちらの方が多いだろう。

     人間は弱い生き物だから、苦境を外的要因のせいにしがちであり、そこに「過去」も含まれるだろう。本作の登場人物たちも、解釈に悩みつつ、最後には前を向いた。それは簡単なことではない。だからこそ、本作に安心感を抱くのかもしれない。

  • ここ最近低調の感があった道尾さんだが、この新作は面白かった。
    遺影専門の写真館に訪れる人々。飾られていた写真が過去の出来事を思い出させ、それぞれの数奇な人生がクロスする連作短編集。謎解きの楽しみは無いが、途中途中に共通のキーワードを挟みながら最終章に連動していく構成はミステリそのもの。感動もあり、久々に没頭して読む事が出来た。
    近年の道尾さんの作品は必ずといって良いほど子供が出てくるが、今作は長い年月の話なので、子供の登場に必然性があったのも良かった。

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