ディス・イズ・ザ・デイ

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.84
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本棚登録 : 353
レビュー : 60
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022515483

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】サッカー22チームの22人のファンたちは、それぞれの思いを抱いて2部リーグ最終試合の「その日」に向かう。職場の人間関係に悩む会社員、別々のチームを応援することになった家族、十数年ぶりに再会した祖母と孫など普通の人々のかけがえのない喜びを、サッカーを通して鮮やかに描き出す連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 津村記久子さんの新刊ならば中身を見ずに買うので、これもサッカーのJリーグサポーターの人たちを描いた短編集ってことも知らずに買って、わたしはサッカーのことはほぼまったく知らないんだけど、それでもすごくおもしろかったし、すごくよかった。最初、出てくるチームが架空のものってことすらわからなくて、(これだけ本物っぽく何十も架空のチーム考えるだけでも大変じゃない??津村さんのJリーグ愛?)、マスコットの着ぐるみ「つつちゃん」が見たくて思わずスマホでグーグル検索して、出てこないから、あ、架空ぅ?!って思った。。。
    どの登場人物もみんな(Jリーグサポーターの人たちって老若男女いろいろな人たちがいるんだなということもこの本で知った)ごくごく普通の人たちで、とくに大きな事件とかできごとがあるわけでもなく、ちょっとしたうまくいかないことや悩みは雑多にあって、ごくごく普通の平凡な、言っちゃえばおもしろくもないような毎日を送っていて、それがふとしたことからJリーグ(それも、華やかな一部リーグとかじゃなくて二部とか三部で、わたしは、そういえばそういうリーグもあった、そういうリーグの試合とかサポーターってこんな感じなのか~、っていうのもこの本で知った)の試合を見にいったりするようになって、ほんの少しずつ、なにかが変わっていくっていう。この、「ほんの少し」って感じがとてもよくて。現実も、こんなふうに変わっていけたらいいなと願ってしまう。
    嫌な人がひとりも出てこなくて、嫌な場面もなくて、ただ漠然と生きていてもいいこともあるかも、と思えてくる。大げさだけど、こういう本が「救い」になることもあるんじゃないかと。

    そしていつも書くけれど、わたしは津村さんの文章が本当に好き。なにかちょっとした言いまわしというか書き方が、すごくチャーミング。だから、着ぐるみの「つつちゃん」とか思わず見たくなってしまう。あと、全国のJリーグのサポーターの話だから各地の方言もでてきてそれもチャーミングだった。各地の風景の描写も素敵で、どこも行ってみたくなる。

    • たまもひさん
      これ、新聞連載を楽しみに読んでました。単行本も買うつもり。いいですよねえ。
      私が津村記久子さんを読むようになったのは、niwatokoさん...
      これ、新聞連載を楽しみに読んでました。単行本も買うつもり。いいですよねえ。
      私が津村記久子さんを読むようになったのは、niwatokoさんの感想のおかげです。どれを読んでも何と言うかホッとする感じ。決して甘いわけではなくて。そういう小説ってなかなかないと思うのです。
      2018/06/14
    • niwatokoさん
      そうか、新聞連載だったんですねー。長い。相当、取材とかされて各地にも行ってらしたみたいですね。
      そうなんですよね、おとぎ話的な甘さはなくて...
      そうか、新聞連載だったんですねー。長い。相当、取材とかされて各地にも行ってらしたみたいですね。
      そうなんですよね、おとぎ話的な甘さはなくて。だからこそ、頑張るぞ!とかではなくて、ほんとに「ホッとする」感じになるんですよね。ちょっと自分の現実にも希望がもてるような。読んでいるあいだけっこう笑えて楽しい気持ちになるところも大好きです。 
      2018/06/14
  • おもしろくないわけがない。架空のリーグとはいえ限りなくJ2であろうリーグの22チームを応援する人たちそれぞれの物語。おもしろくないわけがないのだ。

    観戦のきっかけも必ずどこかに共感できるポイントがある。この物語の素晴らしいところは、必ず自分の体験を思い出し、その淡い感覚とスタジアムの雰囲気を思い出させるところにあると思う。

    さらには、偶然にもこの架空のリーグには、出生地の浜松(エンブレムの浜名湖の鳥居が最高。まさにあの鳥居のある町生まれ。)、母の実家がある鯖江(このメガネのエンブレムもたまらない)、出身大学のある三鷹、結婚後に住んだ松戸にチームがあり、自分に縁があるようでなんだか嬉しくなってしまった。表紙をめくったら飛び込んで来る、どこか楽しげですらある各チームのエンブレムが散りばめられた日本地図をみた瞬間からこの本を心から楽しめるのが決まったような感覚だった。

    試合前数時間からスタジアムで過ごすあの時間。試合終了後、様々な感情で帰路につくサポーターたち。明確には言えないけど、またスタジアムで試合を観たいと思ってしまうあの不思議な感覚がどの物語でも蘇ってくる。各章終わる直前の数行でこの感覚が襲ってくるから不思議だ。

    スタジアムのある町の高校に通っている当時はさほど興味がなかったのに、大学進学で東京に出て、就職も東京に決まった前後から、地元の象徴なのか、単に黄金期で強かったからなのか、急に地元のチームが愛おしい存在になっていった。可能な限りスタジアムに行くようになった。初観戦は確か2000年の国立競技場。ホーム初観戦は2001年FC東京戦。この時は母親と観に行って「東京の応援がすごかった」という感想の母親に何だよ、と思った事を思い出す。試合も前半のPKを守り切っての勝利というやや渋い展開だったせいもあるだろうけど。母親は昨年亡くなってしまい、この本を読んでいたら必然的にホーム初観戦のこの試合を思い出して少し切なくなった。ただ、この本を読まなければあの試合の事も思い出すことはそうそうなかっただろうし、この作品に少し感謝したい気持ちになった。

    他にもたくさん試合を観に行き、一喜一憂してきた。家族ができてなかなかスタジアムに行けなくてもテレビ観戦でドキドキしている。作中でプレーオフにキーパーにヘディングを決められて昇格を逃したチームがあるが、まあ今となっては磐田サポーターにとっても苦笑いしながらいじられるポイントだ。

    スタジアムにいる人間にみな大なり小なりのドラマがあるのはとても素敵なこと。たかがサッカーチームを応援する事で、サッカーチームを応援しない人生ではなかなか味わえない感情を多く体験してきたと改めて思った。

    次の試合が、また楽しみだ。

  • 舞台は、架空のサッカー二部リーグ、22チーム。それぞれのチームを応援するファン達の、それぞれの想い。
    あまりサッカーに詳しくないもので、どんなもんか…と思いながら読み始めたが、やっぱり津村作品好きだわ~!と今回も十分に思えた。親子、兄弟、祖母と孫、職場の同僚etc…様々な関係性の登場人物たちの悲喜こもごもが、サッカーを通じてユーモラスに語られる。ぎこちなかったり、接点がなかったりといった関係性が、試合を観戦することで少しずつ変わっていく。その日偶然知り合ったばかりの他人同士でも、思いがけず距離を縮めていく過程がまたよくって、こういう関係性を書かせたら津村さんの右に出る人はいないんじゃないかと思うほどにツボだ。津村さんの、人への寄り添い方が、私は心から好きなんだと思う。
    登場人物たちは、勿論コアなサッカーファンも多いけど、大して興味のないのに試合に足を運んでみたらハマり始めたというライトなファンも登場するので、むしろそんなファンがじわじわと夢中になっていくのを読むのが楽しい。とにかく情報量が多いので、何度も見返しのエンブレム一覧を見ながらゆっくり読んでいった。試合の描写もまたリアルなので、「架空のチームって設定だったはずだけど…もしかして実在するんだっけ!?」と錯覚してしまった。それほどまでに緻密な設定。相当綿密に全国各地を取材したんだなということが窺えるのだ。各地の方言、地域の特産を生かしたスタグルやキャラクターなど、ディティールの細かさもまた魅力。
    サッカーに興味がなくても面白く読めるけど、サッカーの知識が豊富ならもっと楽しめるのかなと思う。津村作品は読んだことのないサッカーファンに、是非とも読んで頂きたいな。

  • サッカー二部リーグの最終節に右往左往する各チームのサポータたちの姿をほほえましく楽しく描いた連作短編集だ。

    かつて応援して一度は離れた地元チームを「勝っているときだけ試合を見に行くようなやつ」と思われたらどうしようというどうでもいい自意識を発動させる男や、チームのマスコットキャラクターに惚れ込んで試合よりもマスコットに会いに行く女、選手を心の支えとしてきた兄弟、サッカーにまったく興味がなかったのに、神楽繋がりの応援に駆り出されたり憧れの先輩の影を追いかけていつのまにやらサポーターになってしまう者、などなど、なんともいえない「ふつうの人々」が、決して有名ではない、強くもない二部リーグのサッカーチームの勝敗に一喜一憂する様はなんともいえず読んでいて楽しい。

    津村さんらしいというか、熱血応援、というのではなく、どこか一歩引いて応援している自分を観察しているような距離感の登場人物が多く、好きなのに傾注しすぎない、その温度感が心地よい。

    自分の生き死ににも損得にも関係ないチームをただ応援する、そういう行為は確かに傍から見ると不思議で、でも各々に意味があるんだろうなぁと読んでいて思った。

  • J2がモデルと思われる架空のサッカー二部チームを応援する人々による短編群像劇。
    日本各地でサッカーの応援に行く人々の普通の生活(悲喜こもごもの)と試合との関わりがとてもいい。それぞれのサッカーへの思い入れは温度差というかきっかけ含めて差があるのだけれど、普段の生活に影響を与えていく。
    中年なのでド派手に始まったJリーグを知っていてあんなにド派手なのに理念や目標が地域とスポーツの密接化(→ここ曖昧ですが)を謳っていてホンマか〜?とも思っていたのだけど流行りというものが過ぎて四半世紀たった今、その地域に深く結びついた最初の目標に近い姿になっているのではないかなんてこの本の描写だけで思ってしまった。取材もたくさんされたようで各スタジアムの様子も目に見えるようで、特に呉は行ってみたいなと感じた。
    最初に出てきた引きこもりの女子大生、同じ選手を応援してきた兄弟、孫と同じ名前と生年の選手が好きなおばあちゃん、その後が気になる人々も多いけど、それぞれがまたサッカーを応援しながら人生を引き続き送るんだろう。
    サッカー好きなら元ネタを思い出したりして2倍楽しめそうな本だった。

  • サッカー2部リーグのサポーター達の群像劇。

    流石です、津村記久子!
    それぞれにそれぞれの暮らしがあり、そこに小さなドラマがある。
    22チームを全て網羅し、最後にしっかり回収する。
    なんとも楽しい読書タイムでした。

    架空のチームの架空のエンブレムのくだらなさ(笑)
    アドミラル呉のエンブレムがかっこいいかな。

    息子の成長する背中を見送る親の『若松家ダービー』
    選手に孫をダブらせて応援していた『おばあちゃんの好きな選手』が良かった。

  • ロシアワールドカップが目前となり、監督交代や最終的に選ばれるメンバーが誰になるのかなど世の中の盛り上がりを感じるこの時期に出会った本。
    息子がサッカーをしており、昇降格があるリーグ戦の難しさやドキドキ感をなんとなく理解しているが、Jリーグとなるとあまり詳しくない。2部以下のリーグだとゲームがつまらないという勝手な印象のみでの判断かも。
    息子の高校サッカーも残り2年弱。終わった後は応援に行く事もなくなるので、どうしようと思い悩む今日この頃。
    そんな中、サッカーを楽しむ事はまだまだできるんだよなぁと思わせてくれる作品でした。
    選手、サポーター、それを取り巻く人それぞれの人の想いがあり、地元だから、出身地だから、転勤で訪れた街だから、理由はなんであれ、応援したい気持ちになり、チームを応援することだけじゃなく、同じ想いを持つ仲間との時間に価値を見出したり。
    こうあるべきという答えは自分の中にあるんだ。いや、自分の中にしかないんだろう。

  •  短編11話。全国各地のJリーグ2部チームを応援する人々の日常を描く。チームは架空だよね?後書きを読むと、現地取材はしているのもあって、めっちゃ具体的。サッカー知らない私からすると、試合の描写はつまらないはずなのに、やたらと細かい選手の名前や設定や、各クラブの懐事情による経営方針などディテールすごく楽しめた。
     津村記久子って関西の普通の人々の生活書くのが上手いなーと好きだけど、全国各地の描写もやっぱり好きだ。想像上のチームの争いと絡めながら、人々の生活を静かにかけるってすごい。なんか作者の新しい面が出てきたのかな。

  • サッカーのサポーターに視点をあてた小説ということで、これは読まねば!とワクワクしながら読んだ。サッカー選手やクラブが主役ではなく、応援するサポーターが主役。こういうお話、待ってました!
    どのお話も読みながら「分かる~」なんて共感しながら読んだけど、ニッチすぎて、果たしてサッカーに興味のない、それも、サポーター?なにそれ?という人たちにおもしろいと思ってもらえるのかな…と不安になりつつ読んだ。スタジアムのこの独特な空気感はやっぱり体感しないと分からないんじゃないかな。だからこそ、このお話を読んで少しでも応援に興味を持ってもらえたなら、スタジアムに足を運んで欲しいなと思う。

    私はJ1クラブを応援しているので、J2クラブとは雰囲気もとりまく環境もちょっと違う。でも、何度かJ2の試合も観に行ったことがあって、その時感じた空気がこのお話によく現れていたなと思う。読みながら、あのクラブっぽいな~なんて想像を膨らませるのも楽しかった。
    私はゴール裏で跳び跳ねて応援している人間なので、10話の「唱和する芝生」が一番読んでいて気持ち良かった。

    またこんな風にサポーターのお話読んでみたいなぁ。

  • W杯の時期に読めてなんだか嬉しい。あんなに華やかじゃないけど。
    でも、2部っていうのが絶妙に身近で、ごく普通の、何かモヤモヤしている人達を一歩前へ?進めて行くところが良かった。チーム名とか勝敗とか、絶妙に華やか過ぎないのがよい。カマタマーレ思い出した。
    津村さんはサッカーに詳しいと以前エッセイで読んでいのでなんだかより楽しめた。津村さんらしいドライさが、立ち止まっている人たちを湿っぽくならないように見せてくれて、その温度がちょうどよかった。

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著者プロフィール

津村 記久子(つむら きくこ)
1978年、大阪府大阪市生まれ。大阪府立今宮高等学校、大谷大学文学部国際文化学科卒業。
2005年「マンイーター」(改題『君は永遠にそいつらより若い』)で太宰治賞を受賞し、小説家デビュー。2008年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、2009年『ポトスライムの舟』で芥川龍之介賞、2011年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、2013年「給水塔と亀」で川端康成賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2017年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞、同年『アレグリアとは仕事はできない』で第13回酒飲み書店員大賞受賞をそれぞれ受賞。
近刊に、『ディス・イズ・ザ・デイ』がある。

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