となりの脳世界

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.69
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本棚登録 : 939
感想 : 100
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022515551

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学評論随筆その他】デビューから現在まで各紙誌に書いてきたエッセイを一冊にまとめた決定版。小さな頃の思い出から、影響を受けた本や音楽、旅先での出来事、今まで気づかなかった勘違いに、コンビニバイトのこと。Twitterで話題の『「走らせている人」たち』も収録!

感想・レビュー・書評

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  • たださんのお薦めの本、やっと借りれました。
    村田紗耶香の素行を知るのに必修のトリセツとのことで興味深く拝読しました。
    超感覚すぎて理解できないと感じるところが多くっておののきの連続なんですが、たださんのレビューみて感じたのですが、たださんが通訳してくだされば村田沙耶香さんを理解できるような気がしてきました。

    2体の犬のぬいぐるみに平等に愛情を注げない自分を卑下したり、初恋を通過儀礼と感じ大人になること意識したりと恋に恋する感覚ともちと違うような具合。
    脳内お花畑の少女と違い表紙のイラストのように脳内で宇宙人とデートしてるような感覚ですかね。

    自意識過剰なんだけど謙虚で他人のことを思いやれる部分もあって、性格的マイノリティを共感できる人を見つけると嬉しくなったり。まあよくわからない部分もあるのですがコンビニエンスストアに宛てたラブレターにはキュンときました特に「貴方が私を人間にしてくれた。」ってところは衝撃が走りました。コンビニを異性に感じるところがキモ可愛いw

    コンソメスープをずっと、こそそめスープと頑固なまでに言い間違いしてて、最上級のコンソメスープをこそそめスープと呼ぶのだと勝手に定義づけて脳に誤認させ自尊心を保ったり。ゴキブリを見た時の共通の価値観は刷り込まれた認識だとゆう観点から新しく食料として認識できるよう脳を麻痺させる試みにときめいたり、彼女ならやってくれそうと期待してます。てか認知症が進むとそれらの事柄は無意識で誤認してしまうのでちと心配ですが・・。うちのお婆ちゃんも箪笥の裏に隠し扉があって旦那がそこから出入りしてるって本気で思ってたりしてます。

    固定観念を破壊することで新しい価値観が生まれる訳ですし、苦い物でも味を感じなくして食べることのできる「舌カバー」があれば凄い発明だって子供の頃憧れてたようですが、オブラートに包んで呑み込めば良くないって思ったんだけどそこは、沙耶香さんをたてて凄い発明だって歓声上げたくなりました。

    あと、こじらせ脳が同居してるとこ、1億円を1円玉にするとどれくらいの容量に入るかって本気で考えてるのか解りずらいところが不快に思えるんですが。小ぶりのバス2台分に入るとか。小ぶりのバスとかってなんて不明瞭な単位で測るんじゃいって思ってしまいました。それなら2階建てのはとバス1台で入るんじゃないかとかww
    ついでに、「2階建て鳩バスの値段」で検索してみたら8000万円ってでてきた。あれ、2000万入らないじゃんって混乱してくる始末。
    ちなみに1億円は1万円札で1万枚、たて32cm、よこ38cm、高さ10cmの容積になり重さは10kgだそうです。上に積み上げたら1mの高さです。
    これぐらいの認識で勘弁してほしいww
    悪くいってるつもりじゃなくて、距離感、温度差、異世界感、基準がずれてたら共通認識狂ってくるのは当たり前のことなんですが、そういった違いを愉しんじゃってるとこが魅力なんでしょうね。

    あとあと、イラストが可愛い、あのクチバシ少女最高でした。別れたハブラシとデートするとか3年間何処においてあったん!?

    • たださん
      しじみさん、こんにちは。
      早速、読んで下さったのですね♪

      私が取り上げていないところを、たくさん紹介して下さり、ありがとうございます(^^...
      しじみさん、こんにちは。
      早速、読んで下さったのですね♪

      私が取り上げていないところを、たくさん紹介して下さり、ありがとうございます(^^)

      私も、村田沙耶香さんを理解できるなんて、これっぽっちも思ってはいませんが、基準の違いを愉しんでいる点には、共感致しましたし、村田さん自身の、あのクチバシのイラストの可愛さも同感で、レビューを読んでいて嬉しくなりました(^o^)
      2023/06/30
    • つくねさん
      たださん、こんつは♪

      たださんのレビューが素晴らしすぎて、被らないところに振ってみました。
      あのイラスト村田さん自身で書かれたんです...
      たださん、こんつは♪

      たださんのレビューが素晴らしすぎて、被らないところに振ってみました。
      あのイラスト村田さん自身で書かれたんですね。顔は単純なのに洋服の模様とか細かく書いちゃってるとことか、ルソーに通じる感じがしたし高校時代は美術部だったとか、彼女の絵なんかもみてみたく思いました。
      楽しい本教えてくださいましてありがとうございました。
      「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」行ってみたく思いましたがお化け屋敷でさえタジタジなので足がすくんで歩けない気がしてますがどうなんだろう。たださんは行かれましたか?
      2023/06/30
    • たださん
      しじみさん、おはようございます。
      お返事、ありがとうございます(^^)

      そうですね。村田さん自身の絵で、何か独特な雰囲気と味があるのが、彼...
      しじみさん、おはようございます。
      お返事、ありがとうございます(^^)

      そうですね。村田さん自身の絵で、何か独特な雰囲気と味があるのが、彼女らしいなとも思います。

      「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」、実は行っておりません。時期的に、人が集まる密閉空間はまだ少し不安で。
      確かにお化け屋敷も怖いと思いますが、こちらは、普段どれだけ視覚に頼り切っているのかを、実感する怖さがありそうですよね。
      でも、それが却って、人間の眠っていた新たな感覚に目覚めるような体験になるのかもしれないと思うと、一度は体験してみたいですね。
      2023/07/01
  • 村田沙耶香さんといえば、作品に時折ある、エキセントリックな感じや、メディアにおける、「あの呼び名」だけのイメージを持っている方に、是非読んで欲しいエッセイ集で、読めば、村田さんも色々な思いを持って生きてきた方だということを、きっと実感できると思います。

    私の場合、まずは村田さんの家族に注目がいき、お父さんの古いアコギに、お兄さんの「星新一」、「新井素子」の本に、お母さんの「赤毛のアン」シリーズの本と、こうした家庭環境下で育ってきた事に、「ああ…なんか分かる」と感じられるものがあったのが印象的。

    それから、村田さんの作品でもテーマにされる、大人について、「不完全な大人のままで」の、完璧な大人はおそらくどこにもいないのに、『子供だった私はそれを求めてしまった』ことに頷けるものがあり、そういえば、私の青春もそう考えて苦しんだ事があったなと思い出す。

    また、「映画で泣くこと」の、『大人の女性をちゃんとやっている時より、泣きじゃくっている自分のほうが大人なんじゃないか』や、「一番大切な部分を揺さぶる映画」の、『いつもまともであろう、普通であろうと頑張っている人たちの心に訴えかける、もっと人生を楽しめ』には、映画を通して、大人って何だろうということを、改めて問い掛けている気がする。

    そして、空想好きな村田さんの魅力全開なのが、「空想東京さんぽ」シリーズで、村田さんのイラストが可愛い事に加えて(唇がくちばし?)、独特な存在感のある毛筆書体が、またたまらないが、それ以上に、空想でこれだけ面白い話になる所が凄い(作家だから、そりゃそうだとは思うのだが)。

    それから、村田さんの人の良さを実感させられるエピソードがいくつかあり、「睡眠と反省」や「親切エレベーター」も印象的だったが、「バス自意識過剰」での、定期入れを持って全力で走っている村田さんを見た、バスの運転手が誤解しないように、つい小芝居をしてしまう不要な心理戦には、思わず笑ってしまい、『いっそ、「私はバス停ではなく駅に向かって走っています」と書いた、たすきを掛けながら走りたいと思うくらい』と書かれているのを見て、いい人だなあと思ってしまう。

    更に、「サプライズお土産」では、旅行中に同行者にお土産を買いたくなってしまう衝動にかられ続けている、村田さんが可愛いんだか、素敵なんだか。

    『あ、Bちゃん、お酒好きだからこれいいかも! あ、でも、一緒に旅行してる……』

    『これCさんに似合いそうだなあ。今一緒にいるけど……』

    これらの、村田さんの人の良さを感じるエピソードを見ていく内に、内容は全く同じではないが、こうした雰囲気を匂わす登場人物をどこかで見たような思いに駆られてしまい、作者と作品が全く別物の方ももちろんいるのだろうが、村田さんについては、どこか共通した雰囲気を感じさせるものがあって、それは、エキセントリックさと純粋さが同居している事からも、そうなのではないかと思う。

    また、上記の思いを更に強くしたエピソードに、「お土産という日本の性」があり、外国では、会社にお土産を買って配る人は少ないのに、何故日本ではと、面倒くさく思う人たちに対し、村田さんが、『旅先という、その非日常の中で、ふと、自分の「日常」の一部として思い浮かんでくる人たち。そういう人にお土産を買う時、自分には帰っていく「日常」があるのだな、という気持ちになる』と書かれた言葉には、非日常だけでなく、日常も愛している事が計り知れて、これこそ、村田沙耶香さんの人間性の一つなんだと思い知るとともに、村田さんがエキセントリックな一面だけの人ではないことが、実感できるのではと思います。

    そして、非日常といえば、「楽園から始まる私へ」での、スリランカの旅を通して、『この星を味わっている』や、『この美しい星と出会い直した』といった新たな思いとともに、『懐かしい自分が目覚める感覚』も体感したことに、旅における体験が自己の覚醒や成長も促す素晴らしいものであることを、再実感。

    それから、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」は、未体験で行きたくなったので、村田さんの言葉に従い、先が読めずにいる。

    タイトルの、「となりの脳世界」には、『人の脳の数だけ世界がある』という考えから、「自分ではない誰かの脳を借りて、そこから見える世界を、のぞいてみたい」、そんな村田さんの思いに共感し、私は村田さんの世界を、思いっきり楽しませてもらいましたが、改めて感じたのは、人間とは、決して単純な存在ではないという、当たり前といえば当たり前なこと。

    しかし、そんな当たり前なことすら、忘れ去られそうな世界において、本書の存在はかけがえのない大切なものにも思えてきますし、私は本書を読んだことで、また少し、村田さんの存在が身近で愛おしく感じられましたし、小説を書かれている方のエッセイの必要性を実感いたしました。

    いつか、みなさんの脳の中も見せてもらいたいと、書かれていた、村田さん。

    私のでよければ、喜んでどうぞ。
    というよりは、ぜひ村田さんに見てほしいと強く願う私。

  • 村田沙耶香さんの小説は気になっているのですがまだ読んでいません。
    この方の小説はタイトルに惹かれるのですけど、まだ「読みたい!」ってならないんですよね。
    どうやら小説の中身よりも、村田沙耶香さん本人に興味が湧いているみたいです。

    この本は「私の脳の中はこんな世界です。」というエッセイらしいので、ちょっと覗かせてもらおうという好奇心で読んでみました。

    村田沙耶香さんは、自分が周りの人達と少し違うということに気づいているようですが、
    「人は皆、自分の作り上げた思い込みの世界で暮らしているところがあるのではないだろうか。」
    と思うので、(他人の)脳世界を覗いてみたくなるのだろう。と言っています。

    そのとおりだと思います。

    ・宝物の棒の想い出
    ・こそそめスープ
    ・正座が逆の人へ
    ・「走らせている人」たち
    などが、特に面白かったです。

    岸本佐知子さんの域には達していませんが、可愛らしい妄想癖があって真面目におかしなことを考えているのが微笑ましいです。

  • 村田さんの脳内を少し覗けた気がしました。おもしろかったです!コンビニエンスストア様が印象に残っています。

  • 「コンビニ人間」を、依然読んだ。
    コンビニ大好きな方とは、知っていた。
    まさか、恋人だったとは・・・

    人それぞれ、脳内ではいろいろなことを考えるもの。
    この著者の脳内は、まるで、宇宙のよう。
    宇宙人やら、異世界とも、脳内でつながっている。

    本の表紙に、走っている人がいるが、
    そうゆうことか、と、読んで納得。
    自分では思いつかないような発想がたくさんあって、
    ある意味、すごく楽しかった。

    素直な天然的性格が、周りを驚きと明るさに導き、
    たくさんの友人に囲まれている様子がよくわかる。

  • 著者の本を読むのは『コンビニ人間』以来の2作品目なのだが、なるほど『コンビニ人間』は空想ではなく、彼女そのものだったのだな。
    どうやら、一生懸命「人間になろう」「人間を演じよう」として生きている方のようである。

    明らかに「変わっている」彼女は、友達にとても恵まれていると思う。
    飛行機の中で「人間っぽく振る舞おう」とする彼女に対して「さやか、皆が映画を観てるからって無理して観ることないんだよ、飛行機の中ではね、好きにしてていいんだよ」と、彼女の何もかもを察して言ってあげる友達は凄いな。

    私が本書で少しだけ共感できたのは「親切エレベーター」と「バス自意識過剰」だけである。
    他には私はコーヒーの蓋を外す派だが、それは単に極度の猫舌だからであって、適度に冷めたら、飲む時は蓋をしたりしなかったりなので、著者のように「中身をぶちまけちゃうから」(彼女の場合、蓋を付けると中身をぶちまけてしまう)ではなく、「それはないけど、熱いよね」と言う彼女の友人派。

    「走らせている人」に関しては、著者だけでなく他にも存在するらしいが、私は「何を言っているかさっぱり意味がわからない人」だ。

    読み進めていくと、前出のエピソードが頭にインプットされているから、後半では「大丈夫だろうか、この点は…?」と心配になってくる。
    小鼓を打つ時には、「正座は大丈夫だったのだろうか?」と気になり、フジロックの話で「(昔のフジロックで)富士山が見えた」と言っているけれど、「それは富士山ではない山を見ていたのでは?」と思ってしまう。
    (これに関しては彼女は、そもそも全く別の勘違いをやらかしていたのだけれど…)

    彼女には作家とコンビニ店員という天職があって、良い友達や仕事仲間に囲まれて、幸せそうで良かったなと思う。

  • 村田さんがデビューしてから10年以上かけてほうぼうに書いたものを集めたエッセイ集。やっぱり長い歳月を経て書かれているので村田さんの中身が丸わかりになっている。コンビニ人間では「人間であること」がとても意識されていたが、普段からそういう意識を持っておられる方なんだなぁと思った。純文学の小説って人となりが表れるんだね。村田さんが世界を眺める目は普通ではない。正座を逆にしてしまうとか、スポーツで右側を応援してしまうとか、可笑しなエピソードがてんこ盛りだ。背平泳ぎは笑ってしまった。でも中でも「地球の歩き方妄想」が一番好きかもしれない。僕も日本語で書かれた日本の「地球の歩き方」や、宇宙人のための本物の「地球の歩き方」を読んでみたい。

  • 最近村田さんの本をよく読んでいる。

    村田さんのすごいところは、
    自分が普通でないことを認めながら
    普通である人や事も受け止めて共存しよう
    としているところだと思う。

    そして誰もが小さい頃に感じていた
    漠然とした感情を大人になって何年たっても
    まだしっかりと忘れずに持っていて、
    それを言葉で的確に表現して、
    私たちに思い出させてくれる。

    もっとこの人の本を読みたいと思える本だった。

  • 著者作品のルーツが分かるオモシロエッセイ! 飲みたいぞ! こそそめスープ。空想東京散歩シリーズがお気に入り。北区飛鳥山界隈の明日死ぬ佐藤さんが好きです。他作品を更に読みたくなる隠し味のような一冊でした。

  • 「コンビニ人間」ではまり、「消滅世界」でちょっと心が離れ、「地球星人」でコリャもう理解不能かとそっと離れていくつもりでしたが、このエッセイ読んでもうちょっと読んでみようかなと思っています。
    そもそも不思議な本ばっかり書くなと思っていましたが、これ読むと全くもって納得です。本人が宇宙人のようなので書く本も不思議で然るべきかと思います。
    人間ぽくいるために努力しているというのが、コンビニ人間の主人公と被ってなんだか可愛らしくなって来てしまった。
    スポーツでどちらを応援しますか?と言われて、「主に右側を応援します」って何言ってんだこいつって思うじゃないですか。でも彼女の自己分析を読むとなんだか頷けてしまうんですね。
    そんな謎理論が山盛りなのですが、理屈っぽいわけでは無くて完全に沙耶香ワールドに巻き込まれる感じであります。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部卒業。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞。その他の作品に『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

「2021年 『変半身(かわりみ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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