国宝 青春篇 (上)

  • 朝日新聞出版
4.14
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感想 : 171
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 9784022515650

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】1964年元旦、長崎は老舗料亭「花丸」。侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、この国の宝となる役者は生まれた。男の名は、立花喜久雄。任侠の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌は人々を巻き込み、喜久雄の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。『悪人』から10年、新たな最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 祝映画化!

    オーディブルにて読む。

    九州やくざの親分の息子が、歌舞伎役者として名を成す話。

    講談調の語り口がユニーク。
    また、本編終了後に、まるで舞台をみているかのような「特別音声編」も収録。
    オーディブルで読むのがおすすめの作品と思う。

    ♫長崎は今日も雨だった/内山田洋とクールファイブ(1969)

  • 喜久雄の何気ない日常も大きな転機も、喜久雄と共に人生を歩いているような感覚で読み進められました。真っ直ぐな喜久雄がとても素敵で下巻が楽しみです。

    • yhyby940さん
      はじめまして、これ読んでみたいと思ってるんですよ。
      はじめまして、これ読んでみたいと思ってるんですよ。
      2024/06/30
  • 狭客の一人息子に生まれ、父の死後、歌舞伎役者となり精進していく喜久雄の物語。講談調の語り、シーンの転換が巧み。三代目半二郎を継ぐあたりからの後半の展開が凄い。喜久雄を支える幼馴染の徳次も良かった。映画『太陽の…』の撮影現場、二代目半二郎の息子俊介の怪猫…などの印象的なシーン。
    読書予定リストには入っていたのですが、タイトル『国宝』に躊躇していましたが、手に取って良かったです。花道篇が楽しみです。

  • 2024最後の1冊はこれ。
    年末年始を上下巻でっていうのも悪くないでしょ?(*´꒳`*)
    最初は語り口が「〜でございます」って感じだから馴染まなかったんだけど、テンポが良くてどんどん読んじゃう。
    歌舞伎の御曹司とヤクザの息子が切磋琢磨しながら歌舞伎の世界を生きていく。
    いやぁこれは一言では表しきれないわぁ。
    俊ぼんの気持ちも喜久ちゃんの気持ちもどっちも痛い…切ない…割り切れないねぇ。
    あ、忘れてたこの本の見開きの触り心地がなんか高級感漂ってていいのよ。
    なんか紙っぽくないというか。
    この白地に赤っていうのも言葉にできないゾクっとくるものがあるよね。
    下巻はこの赤と白が逆転してて何が待ち受けているのかとゾクゾクするわ!
    下巻は新年のおたのしみ♡

    今年も残すところあと数時間。
    皆さま良いお年をお迎えください╰(*´︶`*)╯♡

  • 独特の語り口がぽんぽんと小気味よく、歌舞伎のことを何も知らない私でも、テンポよくすらすら読めました。
    裏切りあり、いじめあり、波乱万丈。
    毎日、血のにじむような稽古をして、芸事の世界は、儲かるときは、一瞬で、落ちれば、借金の海。
    とても、並みの神経ではやっていけない、浮き沈みの激しい世界だと思いました。
    歌舞伎は一度も観たことがありませんが、歌舞伎を目の前で観ているような気持ちにさせられる文章でもありました。


    以下、途中までのストーリー。

    1965年、昭和40年。
    長崎の任侠一家の跡取り息子の立花喜久雄15歳、権五郎が抗争事件で亡くなって一年後。

    父の後妻のマツを郷里に置いて幼なじみの徳次と恋人の春江とともに、大阪の歌舞伎役者の花井半二郎の家に住み込みでやっかいになり、半二郎の一人息子で同い年の大垣俊介と共に歌舞伎の世界に入ります。

    二人共、半二郎に女形の才を見出されてその道に進みます。
    「俊ぼん」「喜久ちゃん」と呼び合いながら、二人は同じ道を目指していきますが、父の半二郎が交通事故に遭ったとき、半二郎が代役に選んだのは、果たして俊介ではなく、喜久雄でした。

    そして俊介は「探さないでください」と置手紙をして。そしていつの間にか、男女の仲になっていた春江も一緒でした。

  • 本作は吉田修一先生の作家生活20周年を記念し、刊行された作品とのことで、初めて本著者の作品を読んでみた。上巻の感想であるが読み応えがあった。

    文体が「~でございます。」「~なものでした。」で、少し慣れない丁寧な口語で描写されているため、NHKの朝ドラを思い浮かべながら読み進める。
    長崎の任侠ものかと、少しテンションが下がりながらも、作者の経歴を調べてみると、長崎出身であることを知り納得する。(が、長崎はあまり関係がなかった)

    「任俠の一門に生まれながら、この世ならざる美貌を持った喜久雄。上方歌舞伎の名門の嫡男として生まれ育った俊介。二人の若き才能は、一門の芸と血統を守り抜こうと舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜けていくが――。長崎から大阪、そして高度成長後の東京へ舞台を移しながら、血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り、数多の歓喜と絶望が、役者たちの芸道に陰影を与え、二人の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。(吉田修一さん新刊「国宝」1万字インタビューより)」

    歌舞伎は人生で1度しか足を運んだことがなく、一般的な知識しか持っていない。柳広司先生の「風神雷神」で、宗達の想い人が阿国であった設定で、その時に歴史的なことを少しだけ調べたくらいである。

    歌舞伎の起源は、1603(慶長8)年、出雲の阿国による「かぶき踊り」が京都で始められたとされている。
    柳先生の「風神雷神」では、この阿国と伊年(後の宗達)が恋愛よりもっと冷めてはいるが、そんな関係になる。そして、阿国が伊年の元を離れている間に遊女歌舞伎が人気となる、というような記載もあった。調べるところによると、歌舞伎の歴史は、阿国、遊女、そして少年が行う若衆歌舞伎を得て、今の成人男性が女形を演じる今の歌舞伎に至ったということを知る。商売(金儲け)を考え出す人の知恵と規制は、いつの時代からもあるのだなぁと感心した。

    演目は、江戸時代の歴史的な出来事「時代物」、江戸時代の人々の生活「世話物」、そして、歌や音楽に合わせ踊る「舞踊劇」の3つに大きく分かれ、本作でも出てきているが、『仮名手本忠臣』、『道成寺物』、
    『信州川中島合戦』、『勧進帳』、『曽根崎心中』などがある。
    本作の中で演目の説明があり、それが参考になる。演目の読み方、ストーリーの説明を知ることができ、本作への興味が広がる。

    本作の「丹羽屋」という屋号は、実際にはない。立花喜久雄は父親を殺された後、上方歌舞伎の名門「丹羽屋」の花井半二郎にお世話になる。美貌な容姿と、自身の努力もあり、半二郎の名を継ぐことになる。血族の関係が深い世界に飛び込んだ元任侠の息子。芸能界での栄光を垣間見たのも束の間、落ちた者に対する執拗な弱い者いじめ。成功への道から外れた喜久雄がいかして這い上がっていくのであろうか。

  • ちょっと興奮気味でございます!!

    極道の家に生まれ、歌舞伎の世界(しかも女形)…
    に入った喜久雄。数奇な人生を追った大河小説。。
    って凄すぎるでしょ。

    青春篇は喜久雄が三十歳位までなんだけど…いろんな事が起きちゃうの。嬉しい事も悲しい事も…
    本当に目紛しい変化でびっくりしちゃう。
    花道篇がものすごく楽しみ♡

    ストーリーが流れるようにトントン進む進む。
    小説を読んでいるというより、映像や舞台を観ているみたい。
    きっと語り口なんだろうな…。
    小説の語り口が講談のようなもんだから
    読みやすい読みやすい……。
    スーッてスーッて入ってくるの。
    ひとつひとつの描写や、登場人物の心の機微だったりが、語り口のおかげできちんと情景が浮かんでくるのも…吉田修一さんの上手さなのかしら。

    「花道篇」もゆっくり味わって読もーっと!




  • 2018年初版。面白く上巻を読み終えました。50年ほど前、高校一年の頃に友達に薦められて読んだ五木寛之さんの「青春の門」を思い出しました。主人公の運命が、どのように展開していくのか、とても興味が湧きます。教科書通りに生きていない主人公、理不尽な出来事に流されながら懸命に生きる主人公に魅力を感じます。後編がどのように展開していくのか、とても楽しみです。

  • 私の本棚では『怒り(上)』が絶賛中断中の吉田修一さん作品。なんでだか情景がさっぱり入ってこない。
    この国宝もおなじく堅苦しい語り口で、「女形の歌舞伎役者」「厳しい下積時代」「元ヤクザの息子」という際立つキャラクターのおかげで喰らい付いていけた。


    ──俺なんか一本の木やねん。せや、ただの一本の木やから、馬鹿にされたら悔しなんねん。でも、自分が山やったら、木一本馬鹿にされたところで気にもせんやろ─

    特異な世界観の中にも共感できるセリフ発見。
    ヨガにタダーサナ(山のポーズ)という直立不動の体勢がある。ただ立つだけ。これが難しい。なにせ正解が分かるようで分からない。たまに電車に乗ったとき、吊り革にもつかまらず参考書を読んでいる中学生に出くわしたりすると二度見して驚愕する。こいつ山かと。(何の話)


    ところでAudibleでは尾上菊之助さんの朗読!
    時おり響きわたるホンモノの口上に目が覚める。(寝とるんかい)一度は生で歌舞伎を見てみたい。まずはアマプラで坂東玉三郎師匠かな。

    さあさあ下巻の幕開けでござぁいぃ。

  • 喜久雄と俊介
    任侠一門の息子と歌舞伎の名門の息子
    浮き沈みが激しい芸能の世界で、
    二人の光と影が交差しながら、
    駆け抜けるように読んだ。
    歌舞伎の演目も重なり
    人間ドラマと歌舞伎、1度で2度楽しめ、
    とても面白かった。下巻も楽しみ。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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