メメント・モリ

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022515711

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学評論随筆その他】「ちょっとそこのあんた、顔がないですよ」──本当の死が見えないと、本当の生も生きられない。1983年の刊行以来、30年以上にわたって多くの読者に読み継がれ、さまざまな人生に寄り添ってきたロングセラーが、奇跡の再登場。現代を生きる人々へ。

感想・レビュー・書評

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  • メメント・モリ、死を想え。本当の死が見えないと本当の生も生きられない。そのことを実感させてくれる本だった。本書にはたくさんの死があるが、不思議と残酷ではない。怖くもない。むしろ、死を示されることで、生きているということを見つめ直すことができる。現代日本に生きる私たちは、いつの間にか人の死に立ち会うことがめっきり減ってしまった。死ぬ前は病院に送られ、死体は棺桶の中でしかみることはない。もともと、人間の死はもっと身近なものだったはずだ。死に触れることで生を実感する機会が得られたのに、それが失われてしまった。実はそれに伴う損失は、数字には現れない大きさがあるのではないか。そう考えさせられた。
    本書には、美しい自然の写真がたくさんある。不思議なことに、その写真からは風や波の音、生き物の声、息遣い、そこに存在する空気感が伝わってくる。ただの視覚情報なのに、それ以外の情報を多分に含んで、自然の息遣いを訴えてくる。初めて写真をみて感動したかもしれない。嬉しい体験だった。

  • 著者は写真家・作家。
    1970~80年代、世界各地を旅して、写真とエッセイを組み合わせた作品を多く発表。
    本書は元々、1983年に刊行されており、こちらはその新装版として2018年に出たものである。初版がないのでよくわからないが、内容には大きな違いはないと思われる。

    おそらくインドで撮影されたと思われる、イヌがヒトの死体を齧る写真、そしてひとこと、
    ニンゲンは、犬にくわれるほど自由だ。
    が添えられた1枚。これが多分、本書で最もインパクトがあり、最もよく知られる1枚だろう。

    初版刊行当時、この本は相当売れたらしい。けれども個人的には知らなかった。
    先日、美術番組で紹介されていたのを見て、手に取ってみる気になった。

    冒頭の文字だけの章に記されるように、メメントモリ(MEMENTO-MORI)とは、ペストが流行り、人々が享楽的に生きていた中世末期のヨーロッパで盛んに使われたラテン語の警句である。「死を想え」、「死を忘るな」を意味する。

    こうしたものは感性で見るものなので、人により、あるいは同じ人でも見るときにより、受ける印象はさまざまだろう。
    生と死が表裏一体であることに衝撃を受け、覚醒を感じる向きもあるだろう。
    つまるところ、死を想うということは、背筋を伸ばして生を生き直すということでもあるのだから。

    歯並びの悪い老人3人の写真もいいが、南国の赤い花が好きかな。
    どこかしら寺山修司や、同時代に流行った「パパラギ」なども思い出させる。時代を越えて生き延びるものであっても、どこか時代の手触りは残すものなのだ。
    「あの頃」のパルコの広告なんかもちょっと思い出す。それは、インパクトのある写真にインパクトのある言葉、という体裁から来るものだけではないような気がする。

  • 10年以上前、大学生の頃に買って読んだときよりも言葉の味わいが増したような気がして(そもそも以前は味わうという感覚自体あったのかあやしいけど)言葉は字面以上に多くのことを語るものだと、写真に添えられた薄い銀色の文字で書かれた詩からそう印象を受け取った。きっと写真について、もっとたくさんの言葉を費やしたとしたらもっと誰にでも分かりやすく何事かを表現することもできるだろうが、あえて簡潔に、圧縮、省略した言葉を添えることで見える風景がある。それはもしすると生と死の中間にあるもので、誰もがけして知ることのできない死について、ほんの少しでも触れられそうな場所に、読んでいる間の僕はいたのかもしれない、というようなことを思った。 

  • 殆どか美しい景色でしたが、目を背けたくなるような写真も何ページかあって私には刺激が強すぎました。
    言葉にインパクトがあってストレートに心に響きます。
    あとは生きるとこしか残されていないほどありとあらゆる人間の弱さを吐き出すがいい。
    この言葉が一番好きです。


  • 読んで見たがよくわからなかった。
    この本は『汚れれば汚れるほど値打ちが上がる』という、文章は好きだ。

  • 急にわたしも
    いつかポロポロの白い骨になって
    存在がなくなるのだと
    現実味を帯びてかんじた
    ぞくっとした
    いつか死ぬ
    当たり前だけど想像できてない
    いつか絶対死ぬ
    やるべきことはなんだろう
    わたしが死んだときに
    だれか見送ってくれる人がいたらいいな

  • 写真と短文で読みやすい。
    けれどメッセージは強い。
    まだ理解しきれないところもある。
    ふと読み返せるようにしておくといいかもしれない。

  • 少し前に遠藤周作の『深い河』を読んだせいか、この写真集の冒頭に編まれた乳海(ちちのうみ)はガンジス河に自力で、他人の手を借りて、あるいは死して運びこまれて積み重なる。荼毘に付される人々を通じて死を感じ取れということなのだと思うが、作者の思いが強すぎて作品との会話にエネルギーを使うのが少し苦痛だ。これをむさぼり食って糧とするくらいの気力を持てというメッセージなのかもしれないと、世界各地の写真を通じて少しだけ感じ取った。

  • andymoriを聴くものとして読まねばという気持ちで。祭りの日に韻を結んだまま死ぬなんて最高にロックだ。

  • 素晴らしい写真、詩集ですが、私には、きつすきました。日頃から、死には直面する仕事ではあるのてすが、だからこそなのか、死にたいする気持ちの違いで、私には受け入れられない現実世界てした。
    ただ、事実としてあるがままの世界を写している事そのものは、凄いと思います。

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著者プロフィール

1944年福岡県生まれ。『印度放浪』『全東洋街道』『東京漂流』『メメント・モリ』『黄泉の犬』『日本浄土』『コスモスの影にはいつも誰かが隠れている』『死ぬな生きろ』『書行無常』『なみだふるはな』など。

「2022年 『若き日に薔薇を摘め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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