- 本 ・本
- / ISBN・EAN: 9784022515889
作品紹介・あらすじ
【文学/日本文学評論随筆その他】ある日は地方営業でワイングラスに石を投げられ、ある日はサインをネットで売られる。自ら「負け人生」とかたる日々をコミカルにつづった切なくも笑える渾身のエッセー。withnewsの大人気連載が、大幅改稿・加筆されて待望の書籍化! 人生、諦めが肝心だ。
感想・レビュー・書評
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動画サイトで出版のことを知り、手に取りました。
ルネッサーンス! でおなじみの髭男爵。シルクハットをかぶった方の、山田ルイ53世が著した一発屋芸人の日常譚です。
一番笑ったのはハロウィーンの話。
おばあさんの天然ぶりと、グラスを鳴らし続けるシュールな状況に思わずクスッとしました。
しかし、芸能界のヒエラルキーって凄いんですね。
売れない人は不要な人と言わんばかりの冷遇を受ける様は、読んでいるこちらもヒリヒリしてくるほどでした。
ここ最近は執筆とラジオが主な活動ということで、ポッドキャストを聴いてみたいなと思いました。
山田さんと言えば、ネタ中にはあまり気づかないのですが、落ち着いた声でラジオと相性はとても良さそうですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前著「一発屋芸人列伝」で多くの芸人達を
鋭い視点で分析して、軽妙な筆致で表現
した内容から一転、今作では自身の一発芸
人としての悲しくも、笑える日常をこれま
た絶妙な比喩を駆使して描き出しています。
一発屋であるがゆえの本当にリアルな日常
には涙を誘います。
しかしその矜持はいささかも衰えていない。
よく言われる「プロ意識」という言葉。
この言葉は「何も成し遂げたことがなさ
そうな素人」から発せられることの方が
格段に多い、と愚痴ります。
このメンタリティは山ちゃんに通じるもの
があります。
いつもファイティングポーズを忘れずに
生きることを目指す人に送る一冊です。 -
本のタイトル通り一発屋芸人の、というか書き手自身の不本意な日常をおもしろおかしく書いた一冊。前作『一発屋芸人列伝』と同じく、いやそれ以上に多彩な比喩表現が繰り出されていて、声を出して笑う部分があった。しかし少々やりすぎではないか?狙いすましたような比喩表現に書き手のドヤ顔がチラついて、イラッとする部分がなくはない。まあうまいけどさ。
ちょっと気になったのは、サインするのが嫌だとか、営業活動に若干の差し障りがありそうなことが書いてあること。書かない方がいいのでは?冗談半分なんだろうけど。ま、余計なお世話ですがね。
『一発屋芸人列伝』と同様、観察力にうなる部分もあった。「世界観芸人」との格差を書いた章の指摘は鋭い。売れている絶頂期にも拘らずこういう点に気がついてしまうのは不幸なことかもしれない。しかし、これだけ文章が書けるんだから、この人はきっと小説も書けると思う。ここはひとつ、某世界観芸人が書いた「火花」を超えるおもしろい小説を書いて欲しい。
終わりの方の章は、若干マジメモードだけど、それも良かった。一発屋を弁護、再評価したいという思いや、ラジオ愛が綴られていたりするが、最後の締めの文が良かったので以下引用。
『それでも、とりあえず生きる。とりあえずは大事だ。棺桶に入るまでは、とりあえず、それでいい。「何もなくても、生きているだけであなたは輝いている」などと嘘を吐くことはできないが、輝かなくとも生きていける。生きていていい。それだけは確かである。』 -
『「自分が結婚したときそう言えばあのギャグが流行ってたな~」と人々の記憶に寄り添う存在、言うなれば人生のしおり。それが僕達一発屋である』
などと素敵な表現もしてみたりはするものの、基本は一発屋であることへの劣等感にまみれた文章が綴られるこの本。作者はお笑いコンビ髭男爵の山田ルイ53世氏。
有名芸能人と比べて、才能溢れる若手芸人と比べて、最高潮のときの自分と比べて・・・。作者は色んなところから自虐の種を拾ってくる。
更には自分達を使うテレビ局の人間や営業先の人間、街中で声をかけてくる人々へもその冷静で皮肉めいた目線は向けられる。一発屋だから、芸人だからオモチャ扱いして当然だろうという思考が透けて見えるエピソードには、ゾッとさせられる。(電車の中で誰がガムをくっつけにいくかコソコソ相談する高校生など)
基本は悲しく切ないエピソードが続くが、多様で魅力的な比喩の力なのか、そこに「自虐ばっかりもうたくさん」という満腹感は生まれてこない。
本人の体験談を基にしたエッセイではあるが、この本はもはや「お笑い芸人」という一つの職業を題材にした私小説である。 -
描き方によっては「華々しい成功からの転落人生」という言葉で簡単にまとめられてしまいそうですが、「一発屋芸人」という自分自身が置かれた状況を登場人物として客観的に描き、毒をも飲み込む笑いに繋げる語りの巧みさは見事です。
終盤で筆者が書いているように、なりたい理想の人間になれなくても「なれた自分でなんとかやっていく」という肯定感が、本書全体にカラッとした質感を与えているような感じがします。 -
髭男爵山田ルイ53世のエッセイ集。自身の芸人人生を自虐的に語るも、軽妙かつウィットに富んだ文章であるため悲壮感は感じられない。お笑い芸人としての王道から逸れて一発屋芸人と呼ばれている現状を自覚し、自然に受け入れている彼の文章を読んでいると、ついつい肩の力が抜けてしまう。「負け」を飲み込む男爵の達観した姿勢は、「ナンバーワン」や「オンリーワン」を目指すことが善とされる世の中の風潮に一石を投じてくれる。
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前半はいかにも芸能人のエッセイだな~って感じなんだけど、書き下ろしの2章からは濃度が増して面白かったです。締めもいい。
本人は卑屈だけど、やっぱ当たるべくして当たった芸人なんだなと感心しました。 -
2022年7月3日読了。一発屋芸人山田ルイ53世によるエッセイ集。すでに文筆家として名を成して、レギュラー連載を複数持つ身であってもやはり本業は芸人、それも「一発屋」のレッテルを負いながら地方イベントに勤しむ日々、とは芸人とはほんま厳しい世界なのね…。書籍タイトルからして「不本意な日常」とあり、基本愚痴や自虐、世間を呪うような独り言のたぐいが多く、著者ならではのギャグや突っ込み、鋭い視点などもあり面白いは面白いのだがあんまり笑える内容でもなかったかな。
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頭がいい。
著者プロフィール
山田ルイ53世の作品





