傲慢と善良

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.87
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022515957

作品紹介・あらすじ

婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。
その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。
生きていく痛みと苦しさ。その先にあるはずの幸せ──。
2018年本屋大賞『かがみの孤城』の著者が贈る、圧倒的な"恋愛"小説。

感想・レビュー・書評

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  • 婚約者の真実が急に失踪。
    婚約者である架が真実を探していくうちに彼女の過去などが明らかに。
    婚活で出会った2人の婚活の苦悩も書いてありました。

    真実がストーカーに追われ急に失踪するので
    ミステリー要素ありかと思いきやガッツリ結婚の話。

    この結婚系統の本最近読んだぞ。。。?と記憶を辿ると
    山本文緒さんの『自転しながら公転する』でした。
    私が結婚を意識する年齢だからか自然に引きよせてる?(笑)

    この2冊に共通していた考え方が多々出てきます。
    相手が自分に相応しいのか条件にはまるかを考えるけれど
    自分にそんなことを言える価値があるのか?と。
    そしてそれは傲慢なのだと。
    でもその傲慢さを取り除くと誰とでも結婚することになるのでは。。と考える私。
    そしてそれは傲慢ではなく熟考と捉えたい。
    お互いの条件のすり合わせも大事だと思うのです。

    傲慢と善良。
    頭では分かっている風でも文章で読むと、
    かなり痛いとこつくな。。と思ってしまいました。
    善良な人にも傲慢なところはあって、逆も然り。
    でも言い出したらきりがないですからね。
    あまり考えすぎると卑屈になってしまいます。

    善良すぎると無知、世間知らず。
    傲慢すぎると性悪。
    でも悪と傲慢は違うんですよね。
    時には悪よりも傲慢さで人を傷つけることもあるんでしょう、というかそちらの方が圧倒的に多そう。
    善悪は誰が見ても分かりますが、
    傲慢や善良は見る角度の問題でもあるので難しいです。


    単行本400頁以上ありましたし、毒親も登場しました。
    思うところは沢山ありますがレビューすると長くなるので
    ここら辺で。

    こんなに傲慢と善良について書いてある本がヒットして
    言葉の意味も広がりはしたはずなので
    いつか『それは傲慢ですよ』とか言われそうで怖いです(笑)
    ハラスメントの次は傲慢ですか。。涙

  • 久しぶりの長編小説。
    先が気になってぐいぐい引き込まれて読んだ。
    現代の恋愛や婚活の大変さが生々しく描かれていて読み応えある作品だった。

    婚活で知り合ったのは真実(マミ)35歳と
    架(カケル)39歳、
    ストーカーに遭っていると震える真実(マミ)に、架は結婚を決意し一緒に住むことにした。
    だがある日突然、真実(マミ)が失踪!!
    真実の居場所を探すため架は彼女の「過去」と向き合っていく為に、真実の実家に行ったりしていく。。。

    実家にいたときに結婚相談所で婚活をしていたというので、相談所の女性の小野里と会い、いろんな話を架が聞いていく…。

    現代の結婚がうまくいかない理由は「傲慢と善良」にあるー
    この小説のタイトルにもある言葉がテーマになっていて、それは作中で何度も出てきた言葉である…

    結婚となると、なかなか決められない。
    誰でも謙虚で高望みしていないと言い、自己評価が低い一方で、自己愛の方はとても強いとか…。
    ほんとに誰しもそうだと思う。

    なかなか自分に合う人に巡り会うのは難しい…。
    ピンとこないという言葉!その正体は自分につけている値段だという。

    ささやかな幸せが掴みたいだけなのに…
    傷つきたくない、変わりたくない…気持ちがある…、
    いろいろと頷きながら読み進めてしまった。

    一般的に男女間でも結婚したい時期やタイミングって違うと思う。
    出産を考える女性は早めに結婚したい気持ちも当然あるのだが男性側は、なかなか踏み切れないことも多いように思う。
    でも女性から結婚を迫れない女心もあるから悩ましい問題。
    男性側も妻子を持つことをなかなか決断できないために相手を逃してしまったりする。

    この物語の真実(マミ)もいろいろと悩んでいた、
    その気持ちはわかる…!

    でもこの物語の真実(マミ)に関しては………。

    いくら傷ついてしまったとはいえ…
    式場予約をしたまま、連絡をとらずに長期間、
    婚約者や家族に大きな心配や迷惑をかけたままでいたことは、30歳を過ぎているのに幼いのではないかと思わずにはいられなかった。

    だから結末はそっちに行く?
    と、ちょっとびっくりしてしまった。
    でも真実(マミ)の事を、全て受け入れられる架に驚きつつも、なるほどこれが、恋愛ってことなんだなと思えた。

    この本はこれから結婚…と考えたりしている世代や
    その親達世代も読むといろいろと考えさせられる
    1冊だと思った。

    • しじみさん
      チーニャさーーん、こんにちは♪

      辻村深月さんの作品すごく気になってるんですが
      KindleUnlimitedで最初に読んだ「パッとし...
      チーニャさーーん、こんにちは♪

      辻村深月さんの作品すごく気になってるんですが
      KindleUnlimitedで最初に読んだ「パッとしない子」って作品が
      じわーっとイヤミスぽくって、それから手を付けられずにいるんです。
      繊細な心理描写が得意な作家さんだそうで重いイメージあるんですが、
      チーニャさんのレビューみて、そろそろ冒険してみようと思いました。


      2023/10/14
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      しじみさーーん、こんばんは♪

      この本、私は読み終わり、なかなか抜け出せずに、考えさせられました。(私の場合です)
      私はどの登場人物も好きに...
      しじみさーーん、こんばんは♪

      この本、私は読み終わり、なかなか抜け出せずに、考えさせられました。(私の場合です)
      私はどの登場人物も好きになれなかったりしたのでモヤモヤしたのです。それでも、私はイヤミスっぽい作品でも好きなんで良かったんですよね…(笑)
      でも他のブク友さんはスッキリした読後感の方の方がかなり多いのでしじみさんも大丈夫かもしれません。良かったら読んでみてくださいね…♡
      2023/10/14
  • 自分と他人を比較してしまうことはもはや人間としての性だと思うが、そのときに自己愛が邪魔をしてどうしても他人を見下してしまう。見下せる部分を探してしまう。最終的には自分自身を都合よく解釈して大きく強くしてしまう。

    そんな誰もが一度は経験のあることがとてもリアルに詳細に文章化されていて、読んでいると目を背けたくなるような瞬間がある。

    エンタメとして読むにはヘビーかもしれませんが、他人との付き合い方を省みることができるとても素敵な本だと思います。

    少し残念だったのは最後の終わり方。
    変にあっさりしているというか打ち切りを告げられた漫画のように急転直下で話が完結してしまう。
    実際に波瀾万丈はそんなに起きないという点においてはこれもとてもリアルな終わり方ではあったけれど、もう少しフィクション的盛り上がりがあってもよかったなと個人的には思いました。

    あとこれは必要ないと思いながらも気持ちを残しておきたいという意味で書きますが、私は真実みたいな人は嫌いですね。
    傲慢の権化みたいな存在で小説の中では味を出してますが現実社会にいたら相当鬱陶しい。

    だからこそ最後に不満が残るのかもしれません。。。

  • 久しぶり辻村作品。面白かった。完全なる母娘の共依存。この典型の母娘の気持ち悪い関係性を垣間見た。いや~不幸だ!恋愛期を通り越し婚活する娘というより何故か母親がしゃしゃり出る。それに従う娘。自立したくないのか?できないのか?共依存によって最終的には母娘関係も崩壊し、さらに娘の人生をも蝕む。娘も婚活で感じる男性への違和感(傲慢)が読者のこころを窮屈にする。何故か?面と向かって話す時には善良的態度をとる娘。それが母親に対する態度と同じ。最後は他の女性からの軽蔑に耐えられない娘。辻村作品の「黒描写」を楽しめた。⑤

    • アールグレイさん
      こんにちはポプラさん(^_^)/

      辻村作品を読んでいるとのこと、傲慢と善良、だったんですね!この作品、私は2年位前に読みました。ブクログ入...
      こんにちはポプラさん(^_^)/

      辻村作品を読んでいるとのこと、傲慢と善良、だったんですね!この作品、私は2年位前に読みました。ブクログ入会前でしたので感想を残すということはなく、印象の強い本ならば思い出して書けたのに、と今ブクログの有り難さを感じています。
      ポプラさんのレビューで、思い出すことができました。ありがとう!
      (*^。^*)
      2022/10/10
    • ポプラ並木さん
      アールグレイさん、こんにちは。感想無いんだね。残念。。。
      この話しは結構2極化した評価でした。
      自分は閉塞感ある内容で、共依存、友人から...
      アールグレイさん、こんにちは。感想無いんだね。残念。。。
      この話しは結構2極化した評価でした。
      自分は閉塞感ある内容で、共依存、友人からのキツイ言葉で黒辻村が発揮されていました。
      最後はハッピーエンドだったのですが、まぁ、楽しめました!
      ま他辻村作品読みたいです。
      実は名前探しの放課後を読んでいないので、これを読みたいなぁと思います!
      2022/10/10
  • ストーカーが自分の家にいる…!
    恐怖で震えながらタクシーに乗り込み、架に助けを求めて電話をかける緊迫の場面で物語は幕開ける。
    このストーカー被害をきっかけに、婚約者の真実と一緒に暮らすようになって2ヶ月。真実は突然失踪する。
    真実がストーカー被害に遭っていたことを訴えるも、警察は事件性は低いと判断。架は、真実が語っていた「以前婚活で知り合った男」を探すべく、真実の過去を辿っていくが…。

    現代の婚活のキーワードは、タイトルにある「傲慢と善良」。作者は、ジェーン・オースティンの名作『高慢と偏見』から着想を得たという。
    『傲慢』と『善良』は、作中でも何度も繰り返される。
    その意味するところは結婚相談所の小野里さんの言葉にある。

    一人一人が自分の価値観に重きを置きすぎる傲慢さ。
    他方で、善良な人ほど親の言いつけを守り、誰かに決めてもらうことが多すぎて"自分がない"ことになり、過ぎれば世間知らずや無知になる。
    傲慢さと善良さが矛盾なく同じ人の中に存在する、不思議な時代なのだと。
    婚活時に皆が繰り返す"ピンとこない"の正体を、小野里さんはこう言う。

    「その人が無意識に自分はいくら、何点とつけた点数に見合う相手が来なければ、人は、“ピンとこない”と言います。──私の価値はこんなに低くない。もっと高い相手でなければ、私の値段とは釣り合わない」

    辻村さんらしい、息苦しく、恐ろしく視野の狭い地方社会、子離れできなくて依存性の強い母親の存在なども絡み、現代の婚活の難しさが浮き彫りになる。

    架は婚活、真実の捜索を通して自分自身を見つめ直していく。しかしミステリーかと思っていたら、真実視点にうつる後半は失速したように感じた。大恋愛って何だろう?ラストはあまりしっくりこない。男性は、架の行動をストンと納得できるのだろうか。

    それにしても一番強烈に印象に残ったのは、架の女友達だった。毒舌通り越してただの毒だろうと。
    男友達の彼女を勝手に値踏みして毒を投げつけ、「あの子はやめときなよ」と唆す。『傲慢と性悪』で女友達視点の裏物語を書いたなら、さぞやおどろおどろしい作品になるだろう。

    • 地球っこさん
      マリモさん、
      ああ、モヤモヤが言語化できなくてモヤモヤ……とてもわかりますぅ(。>д<)
      わたしもいつもそんな感じ。
      レビューも「なん...
      マリモさん、
      ああ、モヤモヤが言語化できなくてモヤモヤ……とてもわかりますぅ(。>д<)
      わたしもいつもそんな感じ。
      レビューも「なんというか……」とか、よく使う 笑

      恋愛小説っていうことから「?」とは、またまた気になることを、マリモさんたらっ 笑

      辻村さんは、実はあんまり読んだことなくて(調べてみたら2作品と1エッセイのみでした)興味のある作家さんなのですが……
      そういえば、辻村さんもたくさん作品ありますね。今年は辻村さんもチェックだな。
      さっそく図書館に「傲慢と善良」予約しました♪

      「高慢と偏見」、わたしはちくま文庫・中野康司(訳)で読んだのですが、思ってたよりも読みやすかったですよ。訳もいい感じでした。
      機会がありましたら、ぜひ(*^^*)



      2021/01/30
    • マリモさん
      そう、なんというか…は私もよく使います!
      内容に入るとネタバレになるのでやめますが、後半の唐突な感じが…なんというか…だったのです(^^;;...
      そう、なんというか…は私もよく使います!
      内容に入るとネタバレになるのでやめますが、後半の唐突な感じが…なんというか…だったのです(^^;;

      辻村作品は初期の頃から好きで、ずっと追いかけたい作家さんです(ブクログに登録していないものも多いのですが)。
      デビュー後ずっと精力的に書いておられるから、かなり作品数も多いですね。他の作品の登場人物がちょい役で出てくることもあります。明るめのトーンのものと、ダークなトーンのものがあり、最近は作風も少し変わってきていて、色々と挑戦されているのかなと。ただ、この作品にもあるような、地方の狭い社会の息苦しさ、女子の微妙な友達関係、母娘の葛藤あたりは、よく出てくるテーマです。
      他の人の辻村作品三選や辻村作品十選を見ていても、かなり好みは分かれるようです。私は、最近読んだものでは、『東京會舘とわたし』が好きでした。

      高慢と偏見、見ていたら出版社ごとに訳が色々とあるのですねー!ちくま文庫のをチェックしてみます♪翻訳本は、読みやすさが大事ですよね!(最近では話題のペストも読んでみたのですが、頭に訳が入ってこなくて挫折しました。翻訳本は難しいです…)
      ご紹介ありがとうございます♪
      2021/01/30
    • 地球っこさん
      マリモさん
      今年、開拓する作家さんは辻村さんにします(今さら 笑)
      「東京會舘とわたし」も読んでみます♪
      ありがとうございました(*^...
      マリモさん
      今年、開拓する作家さんは辻村さんにします(今さら 笑)
      「東京會舘とわたし」も読んでみます♪
      ありがとうございました(*^^*)
      2021/01/30
  • 昔に付き合っていた人が、全く結婚を意識してなかったのに、いつの間にか自分よりも先に結婚していた…何かショック。

    結婚だけが幸せではない!って、わかっていても、同級生の結婚式に出席すると取り残された感に…焦る。

    かと言って、適当に手を打つかと言うことも出来ず、一生に一回と思うと慎重になる…なかなか決めれない。

    主人公は、39歳の西澤架。男性である。婚活アプリで知り合った35歳の坂庭真実と9月に結婚が決まっている。
    本作は、真実が自分の部屋にストーカーの影を見つけ、逃げている場面から始まる。タクシーに乗り込み、架に助けを求める真実は、怯えていて、この話はストーカー被害の話かなぁと想像する。真実は、この日以降、架の家に泊まっていたのだが、それから2ヶ月後の2月3日、忽然と架を残して姿を消してしまう。

    架はストーカーが真実連れ去ったと思い、必死で探す。警察に相談はしたものの、居なくなった現場の状況などから、警察は真実の意思でストーカーと一緒にいなくなったのだと言い取り合ってもらえない。『えー、事があってからでは遅いのに、これだから…』と、昔、ニュースになったストーカー事件を思い出す。本作はストーカー被害のストーリーではないため、結局、警察の判断は間違ってはいないのであるが。
    『ストーカーは、いったい誰なのか 』、『真実は今、本当にストーカーと一緒にいるのか?』、それよりも何よりも『いったいどこにいるのか?、戻って来てくれるのか?』と、架は、不安な気持ちの中、真実の実家がある群馬まで通い、群馬県庁の元同僚、結婚紹介所を通じて見合いをした相手と会う。そしてまた、真実の両親や姉から真実のことを聞いていくうちに、子離れできていない傲慢な両親、親離れできていない真実が見えてくる。真実の姉の言葉を借りて説明するのであれば、親に子離れさせないのは、実は子供が望んでいるせいである。そして、親が子供を思い通りにしたいけど、子供だって親の言う通りにしていたい。つまり、親と子の「共依存」だという。すごく説得力のある言葉だ。親と子の傲慢の共存が浮かんでくる。そして、私自身、親は、どうだろうかと、どこまでが一般的で、あるいは許容範囲で、その境界はどこなんだろうと考えてしまった。

    親の世界、価値観が常識のごとく、子供を自分の価値観の中に縛り付ける。「あなたは世間知らずだから」とか、何歳になっても「頼りない」と「親の言うことを聞いていれば間違いはない」と、思っている。社会人になっても「外泊は駄目だ」と言う親。「親が選ぶ人と結婚することが幸せになる」と信じている親。親の望む「いい子」のまま自立する機会を持つことができなかった子供は、親の世界、価値観の中で自分の世界、価値観を見つけ出すことは難しい。そして、真実のように、一人で東京で生活すると、決心し親から離れようと決めたものの、「親の世界で生きていくことができなかった」という罪悪感に縛られ、結局、親離れができない。親と子の呪縛である。

    また、「いい子」を演じる真実は、親だけでなく、架に対しても「いい婚約者」だと思われようとする。それは人間の心理としては当然のことだと思うのだが、この後、自分が架のことを思う気持ちと同じ気持ちではないことを知ると、見かけの「いい子」は、架を残して親元に帰ろうとするが、今回はたまたま、親元に帰れなかった。

    読み進めていけばいくほど、真実の性格、考えがわかってしまい、同情の余地すら浮かばない。架の女友達の美奈子たちと同じ気持ちになる。(私が、真実側の人間ではないからなのだろうか…それとも同じ側の人間なのでイライラするのであろうか…)

    架が真実の両親の価値観や真実の性格を、理解していくのに、どうして諦めないのか…と、美奈子たちから聞いた真実のストーカーの嘘の話を聞いて真実に対する気持ちが冷めないのかと、架の気持ちも私にはわからなくなる。
    それは、やっと見つけた結婚相手だからか、真実が嘘までついて架の気持ちを繋ぎたいという気持ちがわかるからなのか、それとも架にとって、真実はすでになくてはならない存在になっているからなのか…

    真実のストーカー騒動が、嘘であったと分かり、第二章は真実が架の家を飛び出した理由、そしてその後の行動について、真実の視点で描かれている。

    架に70点と評価されたことを美奈子たちから聞いて落胆する真実。何も告げずに架のいない間に家を飛び出した。
    結婚できなくなるのは嫌なのに、架にストーカーの嘘をついていた事を奈美子たちにバラされる恐怖。母にも姉にも頼ることができないのに、飛び出して来てしまった真実は、昔の見合い相手・金居から聞いたボランティアの話を思い出して、仙台でボランティアに手をあげる。

    結婚しようと思っているのに、衝動的に居なくなり、架に心配をかけてしまうことは、考えないのだろうか?結局は自分の気持ちを優先で、架が自分と同じ気持ちでないことに腹を立ててる。自立できていない上にプライドが高いだけではないか…真実なりの考えがあってのことかもしれないが、私の真実に対しての印象はより悪くなる。

    仙台でのボランティア紹介で、あの「青空と逃げる」で登場した谷川ヨシノが登場する。思わず『おおー、もしかしたら、こんな親子がいたと、力たちのことを回想するシーンがあるかも』なんて、思っていたら、何と『樫崎写真館』の名前が上がった!そして回想ではなく、力と早苗がちょうど写真館を手伝っていたタイミングであった。「青空と逃げる」のスピンオフのような展開になる。

    このボランティア活動を通して、自分の価値を見出し、自立をしようとする意識が芽生えたことで、真実自身が強くなった。個人的には架と離れて、新しい恋をして欲しかった。
    が、本作は架と真実は、結婚する。
    最後まで、ふたりに対する気持ちはスッキリしなかったのが本音。

    石母田の言葉通り、『これって、大恋愛の物語だったんだ』と分かり、恋愛小説だからスッキリしないのも理屈ではないのか…と、無理矢理納得した。

    • しずくさん
      2年前に読み、私の読後感もすっきりしなかったのを思い出しました。若いkurumicookiesさんだってそうなのねぇ。私の感覚も古臭くはない...
      2年前に読み、私の読後感もすっきりしなかったのを思い出しました。若いkurumicookiesさんだってそうなのねぇ。私の感覚も古臭くはないのだと何だかホッとなりました(笑)
      2021/02/14
    • kurumicookiesさん
      しずくさん、こんには(^o^)

      コメントありがとうございます!

      ですよね!!
      ふたりにはここで別れて新たな道に進んで欲しい。と願ってしま...
      しずくさん、こんには(^o^)

      コメントありがとうございます!

      ですよね!!
      ふたりにはここで別れて新たな道に進んで欲しい。と願ってしまい、この結末はおさまるところに強引におさめられた感が残りました。

      私もしずくさんと同じ感覚とお聞きして、ホッとしました 笑
      いつもコメント参考になります!
      今後ともよろしくお願いいたします。

      追伸: 若くないですよー(*⁰▿⁰*)
      2021/02/14
  • 婚活で知り合い結婚を控えていた西澤架と坂庭真実…西澤架が結婚に踏み切ったのは、坂庭真実をストーカーから守りたい…そんな想いを強くしたからでもあった…。ある日、坂庭真実が忽然と姿を消し…彼女は無事なのか、手がかりを求めて実家のある前橋を訪ねる…。

    読み始め、思ってもなかった経過に驚きました!婚活ってこんな感じなの??これから婚活しようとしている人、今婚活している人にはちょっときつい展開…。作中に「傲慢と善良」って結構出てくるけれど、そもそも婚活で異性を値踏みすること自体が傲慢??…いやいや、婚活だけとは限らない…友達間でだってそういうことってあるかもしれない…そんなことを考えながら悶々とした気持ちで読みました。西澤架目線の章から坂庭真実目線になって、その頃から、彼女を応援したい気持ちになりました!自分の人生、好きなように、誰にも左右されずに生きていいんだよって…エンディングも希望のあるエンディングになったので満足です。

  • 「夜の中を、彼女は走っている。
     街灯に乏しい深夜の住宅街の闇の中を、せめて明るい場所に出るまでは、と休まずに全力で。
     身体が震えていた。恐ろしくて。悲しくて。怖くて。苦しくて。」

    冒頭の3行を読んだ時、これはミステリー?やめられない止まらないヤツだわ…と1日費やすことを覚悟した(のは家族だろう)。

    初めはミステリーかと思ったけれど…。

    主人公の男女は、それぞれ39歳と35歳。
    もう結構なオトナである。
    どちらも、結婚に何か障害があるわけではないのに、結婚できない(強いて言えば、女性の母親が毒親っぽい)。
    曰く「ピンとこない」…ああ、お決まりの文句ですね。
    当然、周囲からは辛辣なことも言われたりするのだが、所詮他人事…。
    そんな二人が、婚活アプリで知り合い、二年付き合った末、とうとう結婚することになった矢先、彼女の方が姿を消す。
    彼の方は、ストーカーに拐われたのではないか?と事件性を疑い、あてにならない警察に代わって彼女を探す…。


    このタイトルを見て、咄嗟に浮かんだのは、オースティンの「高慢と偏見」。
    読んでみて、やはりそのオマージュ的作品なのだと思った。

    現代の結婚の難しさを、辻村さんは「傲慢と善良」という相反する言葉に込めたようだ。
    相手のことをよく知りもせず、「ピンとこない」と言ってしまう傲慢さ。
    一方、親には従順で、社会性もきちんとある善良さ。
    いや〜、ほんといいところを突いているのですよ〜。
    流石です、辻村深月さん。

    私は、この善良というのは、平たく言えばマジメということかな…と思った。
    マジメだけど、勉強はイマイチ。
    マジメだけど、要領が悪い。
    マジメだけど、世間知らず。
    …なんか自分のこと言ってるみたいだけど…。

    マジメだからと言って、世間で上手くやっていけるわけではない。
    でも、最後には一回り成長しハッピーエンドを迎えることになるので、そのマジメさが報われて良かった。

    「島はぼくらと」の谷川ヨシノさんがまた登場する。チラッとしか出ないワケあり親子は、「青空と逃げる」の主人公らしい。そちらも読まないと。
    2020.5.5

  • 婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。
    その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。
    生きていく痛みと苦しさ。その先にあるはずの幸せ──。


    一言で言えば、婚活・結婚・恋愛のお話。
    恋愛と婚活・結婚は違う。
    結婚に恋愛を求めてはいけないという言葉に反発しながらも
    グサグサきたーーー。
    現代の結婚がうまくいかないの理由は「傲慢さと善良さ」にある。
    「傲慢さと善良さ」は、矛盾なく同じ人の中に存在するんだなぁ。
    善良さは過ぎれば、世間知らずとか無知ということになるかもしれない
    その言葉は痛かったです。

    親の支配もなく、素直に親の言っている事を聞いてきた訳ではない
    私は主人公の真実とは全く違っている様で、実家暮らしで
    自立もしていないし、甘えているなぁ。
    真実程の異常な自己評価の低さが気になりましたが、
    とても似た所もあり…その善良さも傲慢に捉えられる面もあるんだと気付かされた。
    価値観の違う同性・考え方の違う同性から見るとこんな風に見えるんだと知らされた。
    でも私も架の女友達大嫌いだ!
    読んでてとても苦しかった。
    自分の中にあり直視することを避けてきたような真実を突き付けられた気がしました。
    今迄の色んな事を振り返り考えさせられた本でした。

    後半がらりと空気感が変わり、
    真実が逃避した場所が「青空と逃げる」に登場した仙台の「樫崎写真館」
    ヨシノさんや力や早苗さん…懐かしい人に再会できて嬉しかったです。
    優しい空気に包まれました。
    ラストはどうなるのかドキドキしましたが、幸せになって良かった(*´ `*)
    とても良い読後感でした。

    ピンと来ない、好きになれない、惹かれない…そんな人と結婚なんて出来ないよ
    婚活って本当に大変だ(*T^T)

    やっぱり辻村さんは凄いなぁ。
    こういうことを、しっかり鋭く言葉にし物語にしている。

  • タイトルの「傲慢」と「善良」が惜しみなく、何度も繰り返される本は初めてかもしれない笑。どちらも一人の人間の中に存在してるからはっきり決めにかからなくてもいいのにとさえ思いました。

    また、繰り返し使われるワードの中に「微か」があり、「かすか」と読むのか「わずか」と読むのか曖昧でしたが読み方と意味までバッチリ覚えられたので良かったです笑。

    坂庭真実と自分のすぐそばにいる人とで重なる部分が多くてとても他人とは思えなかった。世間知らず、箱入り娘…自分の知ってる世界が全てで、常識が通用しない。女子校の純金、18金、メッキの話も聞いたことある。

    ストーリーですが人を殺すわけでも殺されるわけでも自殺するわけでもなく、西澤架が真実の失踪した原因を探る形で時ばかりが経っていく感じでした。手掛りが少ないとはいえ、親や姉は焦ってもいないし探してないのも不思議。最初に出ていた興信所の話はどこへ…

    評価は高いものの、自分には面白さが理解できず読み切る事が目的になってました。

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

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