傲慢と善良

著者 :
  • 朝日新聞出版
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レビュー : 178
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022515957

作品紹介・あらすじ

婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。
その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。
生きていく痛みと苦しさ。その先にあるはずの幸せ──。
2018年本屋大賞『かがみの孤城』の著者が贈る、圧倒的な"恋愛"小説。

感想・レビュー・書評

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  • 主人公は、西澤架とその婚約者の坂庭真実。真実はストーカーに困っているといい、ある日突然失踪する。架は真実の過去を調べ、真美を探し出そうとする。真美の過去、友人の言葉より、真相、より深い真美を、そして自分を知る。
    婚活・結婚の話、毒親の話、自分の評価の話、そして、タイトルの人間の傲慢さの善良のお話。どれも直球で心に響いてきた。「狭い世界で優越感を誇ったり」、「相手を理解しないのに、理解されたいと思う気持ち」傲慢さ、自分自身を含め周りにもあるよね。振り返ってしまったよ。駆け引きやバランス、難しいけれど、自分なりにそれをうまくこなして乗り越えてゆくのが人なのかしらね。「人を好きになるのは簡単なはずなのになぜこんなに難しいのだろう。苦しいのだろう。」とか、文中いたるところに的確にうまく表現しているところいっぱいで、あっという間に読了。ブラックな内容なところあるけれど、最後の、辻村さんの終わり方、良かったです。いやもう、個人的な思いだけれど、この本は辻村さんの代表作って良いくらい圧倒、読み応えあり。
    『青空と逃げる』の親子が出てきたけれど、読者サービスかな。

  • 婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。
    その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。
    生きていく痛みと苦しさ。その先にあるはずの幸せ──。


    一言で言えば、婚活・結婚・恋愛のお話。
    恋愛と婚活・結婚は違う。
    結婚に恋愛を求めてはいけないという言葉に反発しながらも
    グサグサきたーーー。
    現代の結婚がうまくいかないの理由は「傲慢さと善良さ」にある。
    「傲慢さと善良さ」は、矛盾なく同じ人の中に存在するんだなぁ。
    善良さは過ぎれば、世間知らずとか無知ということになるかもしれない
    その言葉は痛かったです。

    親の支配もなく、素直に親の言っている事を聞いてきた訳ではない
    私は主人公の真実とは全く違っている様で、実家暮らしで
    自立もしていないし、甘えているなぁ。
    真実程の異常な自己評価の低さが気になりましたが、
    とても似た所もあり…その善良さも傲慢に捉えられる面もあるんだと気付かされた。
    価値観の違う同性・考え方の違う同性から見るとこんな風に見えるんだと知らされた。
    でも私も架の女友達大嫌いだ!
    読んでてとても苦しかった。
    自分の中にあり直視することを避けてきたような真実を突き付けられた気がしました。
    今迄の色んな事を振り返り考えさせられた本でした。

    後半がらりと空気感が変わり、
    真実が逃避した場所が「青空と逃げる」に登場した仙台の「樫崎写真館」
    ヨシノさんや力や早苗さん…懐かしい人に再会できて嬉しかったです。
    優しい空気に包まれました。
    ラストはどうなるのかドキドキしましたが、幸せになって良かった(*´ `*)
    とても良い読後感でした。

    ピンと来ない、好きになれない、惹かれない…そんな人と結婚なんて出来ないよ
    婚活って本当に大変だ(*T^T)

    やっぱり辻村さんは凄いなぁ。
    こういうことを、しっかり鋭く言葉にし物語にしている。

  • 抉られる…とにかく心抉られる。
    こんなにも現代の婚活事情や結婚観に対して真っ正面から切り込んだ小説ってあっただろうか?
    自分の心の底にある言葉に出来なかった思いを的確に小説の中で表現してくれる辻村さんは今回も健在。
    最初は男の主人公架サイドから物語が進む。
    読み進むにつれて彼女の真実の傲慢さが見えてくる。
    でも、必ず辻村さんは物語を多方面から見せてくれるので、後半の真実サイドでは架の傲慢さが見えてくる。
    どちらにも共感出来る所が必ずあって、心抉られる。
    分かるけど、このどうにもままならない感じがとても心苦しい。
    きっと傲慢な恋愛をしない人なんて居ないし、誰もが善良さを見せようとする。
    恋愛に正解も不正解もない。
    きっとこの小説の結末に納得いかないと思う人もいるとは思うけど、自分はあのオチが好きだ。
    結局は二人の問題。お互いの本音をしっかりぶつけあって生きていくしかない。最後お互いがお互いに『何考えてる?』と、聞き合う所が凄く印象的だった。結婚しても他人は他人。心の本音もぶつけていかないと、何を考えてるかなんて分からない。そう言う面で、上辺だけで付き合って行くのじゃなく二人で生きて行くんだと言う風に最終的にあの二人は気づけたのかなと思った。
    いやーでも、とにかく抉られた小説だった。

  • 出だし、一気に引き寄せられた。

    婚活で知り合った2人。
    結婚が決まりこれから幸せになるはずだったのに、真実が消える。

    私も真実と一緒ではないまでも、自分というものがないかもしれない。
    よく思う、流れのままに今まで生きてしまったなと。
    結婚もあまり考えずにしたかな。

    婚活というテーマはあまり自分の人生ではなかった事なので途中で戸惑ったけど、家庭環境やそれに伴う本人の性格や考え方、それを傲慢ととるか善良ととるか。
    一歩踏み出す勇気とか。
    ん~考えさせられる。

    最後は真実も凄く気持ちが強くなってたし、架はいい奴だった。

  • 傲慢と善良

    このタイトルは他の何にも変えられないほどに内容とマッチしている。
    善良さ故の傲慢な人間。
    真実がそれを象徴する人物であった。
    結婚とは、親のあり方とは、お見合いのあり方とは。
    善良や傲慢のあり方は人それぞれであり、誰にも決めつけることができないのである。
    そんなことを、考えさせるきっかけとなってくれる傑作。


  • 読んでいてなかなか微妙な気持ちにさせてくれる本でした。
    婚活という恋愛とは違う地平にある活動。でも好きでもない人、むしろ一緒にいるのが苦痛な人と一生いるなんて無理。それくらいなら一人の方がよい。という気持ちよく分かる。けれど他の人が普通にしている事が出来ていないという焦りも本当によく分かります。
    婚活で知り合った2人、2年を経て結婚に至ろうとするときに、突然の彼女の失踪。サスペンス的なものを想像してしまいますが、かなり歪んだ恋愛小説でありました。
    正直読んでいていい気分はしませんでしたが、最後まで読むとすとん腑に落ち付る本です。
    僕自身、第三者が介入すると恋愛や友愛は変質していくと身を持って体験しています。2人だとうまくやっているのに、親や親戚や友人が影でも存在するとぶち壊しになる事って結構あります。本当は上手くやっていかなければならないのでしょうが、どちらかを取らないといけない時を見誤らないようにしたいものです。

    毎度思うのですが、辻村さんは取材しないで勢いと想像で描いた方が絶対いいと思っています。この本も取材したぞーっという感じがかなり出ていてそこが少々面倒でした。でもなかなか良い本でした。

  • 何年振りかぐらいに小説を読んで泣かせて貰いました。いやあ、この小説はすごい。自分は20代半ばで結婚したのでザ!婚活と言った経験はないが、婚活経験者も経験中のひとも、いやそうでないひとにも是非読んでほしい。もともと素晴らしい小説を書く辻村深月が、次のレベルに突き抜けたぐらいの良い作品だと思う。

  • 適齢期を過ぎた男女の前に立ちはだかる「結婚」という名の壁。
    世の中にはあっさりと結婚を決める男女もいるにはいる。
    けれど頭の中であれやこれやと難しく考え込んでしまい、遠ざけてしまう男女も多いのが現状。
    「傲慢」と「善良」、相違える意味合いを持つ2つのキーワードの混在が、人生最大の決断を阻んでしまう。

    今作品の主人公・架と真実も、結婚しようと婚活に勤しみ縁あって出逢えた二人。
    けれど二人の周囲に生じる僅かな影が、やがて大きな黒い壁となり二人を惑わせてしまう。
    渦中にいる二人は外野の無責任な声に惑わされて、ほんと大変。
    けれど出逢い方はどうあれ、結婚に至るまでのストーリーは何れも、結果的には二人だけの「大恋愛」になり得るのだと思えた。

  • 婚活や結婚のことで悩んでいる人がいたら、誰に相談するよりもこの本を読んだ方がいいと思う。登場人物たちのどのタイプに自分が当てはまるかは人それぞれだけど、誰であっても心をえぐられるはず。
    えぐられ方が、「パッとしない子」の文調に共通するものがあったように思う。
    自分の傲慢さと母の過保護を第三者に指摘された気分。

  • 読み応えたっぷりの分厚さ。
    構成でいえば、私は『盲目的な恋と友情』に近いのではと思いました。第一部と第二部で、視点が変わる。
    物事は、視点によって、見方によってとらえ方が違う。それぞれの偏見を通して明らかになる事実が積み重ねられ、重くなってきたところで種明かしとなる。
    息苦しく積もり積もっていった自意識過剰、ルサンチマン、自己愛、偏見。
    辻村深月先生はいつも、このあたりの捉え方が鋭く、読んでいるだけでもヒリヒリしてしまう。
    また見事なのが母娘間の共依存・毒親とまでいかない毒親の描き方。

    自意識過剰、ルサンチマンは、若い世代が主人公の著作でよく書いてきたと思う。デビュー作の『冷たい校舎の時は止まる』の頃から思春期の心情を見事に描いているし、それ以降も良く見られる。
    母娘間については『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』以来の強烈さを感じました。『太陽の坐る場所』は、娘が猛烈に拒否してる感がありましたので、ゼロハチ~の方が近い気がします。

    大人になると、取り繕うのも、この人にはここまで見せると範囲を決めることで卒なくこなして、うまく逃げおおせているけれど、久しぶりに内面を抉られました。

    そう、これが好きなんだな。
    『子どもたちは夜と遊ぶ』で月子が浅葱に惹かれた理由。かっこいい人のカッコ悪いところを見たとき。

    完璧な人なんていなくて、みんな内面にどろどろしたものを抱えていて、それを整理しようとしたり見ないふりしたり、それをもってして相手を傷つけたり、葛藤している。自分のことを棚に上げて酒の肴にして数を権威にして意地悪く言う人もいるだろう、本作の美奈子達みたいに。あさましい。

    そんなものよりも、自分の足でくじけて、必死に立て直した真実の方が気高く美しい。
    架の決断も、納得ができた。

    第一部を読んでいるときは、読んでいた時間が夜更けだったということもあり、ミステリー?と怖くなった。

    本に挟まれていた紙ペラにこう、著者の言葉が書かれていた。

    「胸を張って送り出す、
    辻村版❝恋愛小説❞です。」と。

    読み終わった今、それが腑に落ちる。
    まさしく、そうだった、な。と。

    辻村深月の今までの集大成ともいわれるような『かがみの孤城』。本屋大賞も受賞し、とても高く評価されている。
    でも、私はあれもいいけど、こっちこそダークホースで集大成なのでは?と思わずにいられない。

    辻村深月に初めて出会う、思春期の子供たちへ、ならば、間違いなく『かがみの孤城』を勧めるが、今まで辻村作品とともに年を重ねてきた大人へは、これを勧めたい。

    彼女の持ち味、彼女の鋭い洞察力、巧みなミステリーちっくな文構成力。
    ヒリヒリした中で、最後の晴れやかな終わり方。
    今までのいろんな作品に見られたものが集結して開花したように思える。月子と浅葱の痛々しい愛や、ゼロハチの母娘や、思春期や社会人の仲良くもない自分と階級の違う人種と思える人からの心ない偏見や見下し。
    いろんな鬱憤を真っ向面から向き合い、どろどろヒリヒリしながらも、そこじゃないよ、と逃げるかのように、でも確かに導いてくれる。

    ジャックデリダの言う『脱構築』を思い出しました。
    二項対立に縛られる必要はない。

    真実と架のこれからも幸せを願ってやまない。
    でも、わかる。
    きっと絶対、2人は大丈夫だ。

    そして本作では辻村先生ならではの多作品とのリンクが2つほど見られて嬉しい。1つはほんの些細な一文程度だけれど。比較的最近の作品同士でのリンクということもあり新鮮。

    また次回作がとても楽しみです。

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著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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