椿宿の辺りに

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  • 朝日新聞出版 (2019年5月13日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784022516107

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

主人公の佐田山幸彦は、痛みと向き合いながら成長していく物語が描かれています。30歳の化粧品会社の研究員である彼は、従妹の海子と共に身体の痛みを抱え、鍼灸院「仮縫鍼灸院」の兄妹と共に祖先の地「椿宿」へ向...

感想・レビュー・書評

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  • 『しまった!』と、残り二章で思った。「f植物園の巣穴」を読んでから読めば良かったと、後悔。
    それまでの内容がわからないと言うことはないのだが、きっと読んでおく順番が逆だったら、もっと奥深く納得できたかもしれない。
    しかも、最後に「f植物園の巣穴」のストーリー説明が幸彦からの手紙に記載されている。

    と、言うことで、すぐに「f植物園の巣穴」を読んだのだが、この物語と紐付けようとして読んだものだから、途中訳が分からなくなり、2回も読んでしまうことになった。

    さて、本作であるが、主人公は、佐田山幸彦。山幸彦(山彦)には、海幸比子(海子)という父の弟夫婦の娘である従姉妹がいる。この神話の名前を持つ山彦と海子は共に身体を襲う激しい「痛み」をかかえている。最後の二章でこの痛みの因縁が明らかになる。

    山幸彦は、古事記に登場する神様である火遠理命(ほおりのみこた)。彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)は、日本書紀に登場する神様でこちらも山幸彦として知られている。
    主人公の山彦と海子の名前は、山彦の祖父・藪彦がつけたものであるが、藪彦の父、つまり山彦の曽祖父・豊彦が、f植物園に勤務しており、椋の木のうろの中に落ち込んで不思議な体験をする。

    この不思議体験の記録を読んだ藪彦が、父・豊彦がうろに落ちた不思議体験の中でドッペルゲンガーから投げかけられた「家の治水」という課題を投げかけられる。そして、この課題から海幸彦の神話にたどり着き、海幸彦、山幸彦という名前を自分の家系にある子供につける。
    それは、自分を含めてなし得なかった兄弟葛藤の力で、治水の力を呼ぶために。そして、網掛神社の復活にも関係している「家の治水」を空幸彦を含めた三人に託している。痛みは、この治水と関係がするのではあるが、結果として二人の痛みがなくなったかというところまではわからない。

    表紙の絵、名前から想像する時代とは異なり、話は現代の話であるが、この山彦と海子の時代から遡ること、山彦の父、その祖父の父、曽祖父がの時代にまで遡り、曽祖父が何もしなかったからではないか?と、さえ思ってしまう。

    最後二章で、しまったと思うと、同時に、最後二章で、この物語のカラクリがわかるので、最後の二章だけ読めばよかったという気にもなる。ただし、「f植物園の巣穴」をは理解していないと、腑に落ちない結末である。

    「あのね、帰りにミルクアイスをお願いね」と、母方祖母の魂が亀シに乗り移り発した一言に、思わず声をあげて、笑ってしまった。
    テンポという点では、今までの私が読んだ数少ない梨木香歩先生の作品とは全く異なっていた。(不思議な感覚は、共通しているのだが。)

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      kurumicookiesさん
      残しているけど、、、ドロドロした話になるので、書きませんが。。。
      kurumicookiesさん
      残しているけど、、、ドロドロした話になるので、書きませんが。。。
      2020/11/29
    • kurumicookiesさん
      え?!羨望の目でいつも拝見しているので、何でも単純に羨ましく思っているのですが…

      ごめんなさい(>人<;)

      どうぞ懲りずにこれからもよろ...
      え?!羨望の目でいつも拝見しているので、何でも単純に羨ましく思っているのですが…

      ごめんなさい(>人<;)

      どうぞ懲りずにこれからもよろしくお願いいたしますm(_ _)m
      2020/11/29
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      kurumicookiesさん
      此方こそスミマセン、、、或る面ノホホンと生きているので幸せだと思っておりますし、無かったコトに出来ない修羅も...
      kurumicookiesさん
      此方こそスミマセン、、、或る面ノホホンと生きているので幸せだと思っておりますし、無かったコトに出来ない修羅もありますし、、、
      日常生活では忘れた振りをしています。。。
      2020/11/30
  • 主人公の佐田山幸彦は、
    30歳の化粧品会社の研究員。
    鬱と肩の耐えがたい痛みに苦しめられている。
    従妹である海幸彦(海子)も同様で、
    身体の痛みに苦しんでいた。
    そんな時、海子から「仮縫鍼灸院」という
    鍼灸院を紹介される。
    快癒の手助けをしたいという、仮縫治療院の
    兄妹の妹、亀子(かめし)と共に、痛みの原因を
    探るため、祖先の地でもある「椿宿」へと向かう。

    山幸彦の肩の痛みの描写が、実にリアルで、
    こちらまで肩が痛くなりそうだった。
    (椿宿で、痛みは劇的に軽減する)
    小さいお稲荷さんや、亀子が癒しキャラで
    なかなか可愛い。

    以前読んだ同じ著者の作品、
    「沼地のある森を抜けて」よりは読みやすい。
    神話、古事記の話にも広がり、
    なんとも不思議な感じがして面白かった。
    「f植物園の巣穴」が姉妹編らしいので
    そちらも読んでみようと思う。

  • 今まで読んだ梨木香歩作品で
    一番おもしろかった
    辛気くさい山幸彦とサバサバした海子、なぞの仮縫兄妹とか
    キャラが立っていて
    因縁深い土地とか
    あっと言う間に読了
    なにげに土地開発のありようが描かれて(河川の治水、南海トラフ)
    盛りだくさんなのに
    破たんなく物語が進む
    最後の手紙のやりとりはちょっとどうかな?説明くさいかな?

  • 「f植物園の巣穴」の主人公・佐田豊彦を曽祖父に持つ、佐田山幸彦(さた やまさちひこ)が主人公。
    海幸彦山幸彦の神話からとった名前でなければいけなかった理由というのが今一つ納得するには弱い気もしたのだけれど…
    結局、山彦の災難の根源が、豊彦が問題を根幹治療しなかった所為のようなので、その子・山彦の祖父の籔彦(やぶひこ)さんが「お前の代で何とかしろ」という願いをこめて命名した、と受け取って良いのだろうか。
    山彦さんとしては、負の遺産を相続してしまった気持でいっぱいだったろうけど。

    読み方によってはホラーなのだけれど、恐ろしさ、おどろおどろしさは感じられない。
    文章もユーモラスであり、山彦自身が、激しい痛みに責められる自分の状況を“悲喜劇”と称しているせいもあるだろう。
    古いいわくつきのお屋敷を“文化財”として見る、教育委員会のオープンな視線も、その職員の緒方珠子(おがた たまこ)さんの淀んだ空気は読まない、ポジティブな性格のかもしだす雰囲気もあるかもしれない。

    不思議な物語として面白く読んだけれど、もしかしたら、山彦さんの“痛み”と家の問題は因果関係は無く、同じ症状に悩まされる従妹の海子さんがかかったお医者さんの見立て通りだったかもしれない。

    作者は教訓的なメッセージを送る意図はないのかもしれないけれど、今までなんとなく気難しい、ある意味子供っぽさをまとった30代だった山彦さんが、古い家を相続して、それをどう保って行くかという問題を考えて行く過程で、一歩成長するという物語なのかもしれない。
    佐田家のような由緒はないにしろ、親の空き家を相続して「さてどうしよう」と困っている人は自分も含めてたくさんいる。
    そう考えれば、ホラーでも何でもなく、山彦さんが、痛みを感じながら生きて行くのが人生と感じたことは、生きているからには多少のやっかいごとを抱えて行くのは仕方のないこと、ということなのだろう。

  • 久しぶりの梨木さん。ペインクリニックや役場の教育委員会など設定が現実的だなと思ってたら、神話や稲荷のキツネやあやしい鍼灸師で梨木ワールドに。『f植物園‥』読み返したくなった。

  • 自然、人間の体、こころの入り組んだ痛みは
    家の治水、三十肩、鬱と絡み合い、主人公を彷徨えるツボ・椿宿へと導く。

    皮膚科学研究員の佐田山幸彦は三十肩と鬱で、従妹の海子は階段から落ち、ともに痛みで難儀している。なぜ自分たちだけこんな目に遭うのか。
    外祖母・早百合の夢枕に立った祖父から、「稲荷に油揚げを……」の伝言を託され、山幸彦は、鍼灸師のふたごの片われを伴い、祖先の地である椿宿へと向かう。
    屋敷の中庭には稲荷の祠、屋根裏には曽祖父の書きつけ「f植物園の巣穴に入りて」、
    明治以来四世代にわたって佐田家が住まいした屋敷には、かつて藩主の兄弟葛藤による惨劇もあった。
    『古事記』の海幸山幸物語に3人目の宙幸彦が加わり、事態は神話の深層へと展開していく。
    歯痛から始まった『f植物園の巣穴』の姉妹編。
    「Amazon」内容紹介より

    なんとも不思議な巡りあわせでこの本にたどり着いた気がする.というのは、ちょうど弟に先祖のことを聞いたばかりだったから.ワタシは特段変わった名前ではないし、ペインクリニック にお世話になるほど痛いところもないのだけれども、ふと気になったのであった.

    自分的には非科学的なことを大々的に信じているわけではないけれども、ない、ということを証明することも自分には不可能であるので、判断は保留にしている.ただ、「病は気から」といった具合にたぶん帰納法的にできたことわざみたいなものに現れるようなことについてはそういうこともあるのかしらん、ぐらいには信じている.
    というようなことを想起させるような内容.
    あと、運命の糸、みたいなものも想起させるような内容でもあった.あずかり知らない世界、のようなものを彷彿とさせる作品.

    主人公の独白、というのは他人の心情まで代弁するから、一定程度は思い込みで、本当はどう思っていたのか、考えて行動したのかが正確ではないからミスリードするんだなぁと思う.こういうのがキライな人はフィクション読みたくないんかな.

  • 3分の1ぐらいまでは紛らわしい名前に閉口。主人公が日本神話に出て来る「山幸彦」、従妹の名前が「海幸彦」をもじった海幸比子、実家の店子は宙幸彦、曽祖父母も加わり、新しく人物が登場するたびに、頭の中で家系図を組み入れるのに一苦労しました。そもそも日本神話や古事記を知らないのですから。もっと明るかったらと思わずにいられません。
    鍼灸院の亀子から、主人公を悩ませている痛みは、山彦の実家・椿宿という地域と関りがあるのではないかと云われます。眉唾もののような展開に、私も成り行きまかせとばかり同行した次第です。
    「私は長い間、この痛みに苦しめられている間は、自分は何もできない、この痛みが終わった時点で、自分の本当の人生が始まり、有意義なことができるのだと思っていましたが、実は痛みに耐えている、そのときこそが、人生そのものだったと、思うようになりました。痛みとは生きる手ごたえそのもの、人生そのものに、向かい合っていたのだと。考えてみれば、これ以上に有意義な『仕事』があるでしょうか」
    果たして、痛みを抱えている者にとって、痛みとは生きる手ごたえと云える時がいつ訪れるのだろう? 筆者が言いたいことは充分理解しながらも、苦しみの最中で脱したいと喘いでいた自身の体験を通して、嵐が過ぎ去った後にもそのような境地にはなれませんでした。思考が止まってしまいすべてが遮断され取り残されたような感覚は思い出しただけでもぞっとします。山彦の酷い痛みの描写を読みながらも他人事のように受け入れている彼と私はいったい何が違うのだろうか。立ち向かえる強靭な精神力を持つ人には可能かもしれないけれど、私のような軟弱な者には難しいと思わざるをえません。日々それなりに努力は重ねていますよ。
    本書は「f植物園の巣穴」の続編だそうです。「f植物園~」を読めばもっと理解できるのでしょうが、手に取るには少々時間を要しそう。

  • 鬱に頭痛、腰痛、三十肩に頸椎ヘルニア…痛さの百花繚乱状態の佐田山幸彦。
    彼はあの『f植物園の巣穴』の主人公・佐田豊彦の曾孫だという。
    歯痛に悩んだ豊彦の痛みが伝染するかのように、山幸彦もまた様々な痛さに悩まされる。
    これはもう一族の宿命と言っても過言ではない。
    痛みの原因を探る内に一族の歴史を紐解くこととなり、またもや不可思議な世界へと誘われる。
    稲荷に狐に古事記に…梨木さんの好きなワードが続々登場。
    登場人物達のコミカルなやり取りに何度もニヤリとなり、『家守綺譚』シリーズが読みたくなってきた。

    「痛みに耐えている、そのときこそが、人生そのもの」
    「痛みとは生きる手ごたえそのもの、人生そのものに、向かい合っていたのだと。考えてみれば、これ以上に有意義な『仕事』があるでしょうか」

    苦痛にしか思えない痛みもありのまま受け入れる。確かに生きているから痛さが分かる。
    先祖と生者との目には見えない強い繋がりをしみじみ思う。
    たとえ同じ時代に生きていなくとも、やはり血は争えない。
    そして昔からその土地にある神社は大切にしなければ、と心新たに思った。

  • 前作「f植物園の巣穴」以上にすごく好きな世界観だった。

    痛みから始まり導かれるように紐解かれる様々な物語、土地、歴史、自然、そして縁。全てが必然的だったと思うぐらいの繋がりなるものを感じた。
    読みながらそっと自分に当てはめ、身体の内、外での繋がり、巡り巡るものを想像したくなる。

    巡る痛み、身体と心の繋がり、そして何よりバランスを保つことの大切さ、自分の中の「痛み」や「滞り」に目を向け向き合う時間の大切さを教えられた気分。

    最後の山幸彦と宙幸彦との手紙のやり取りが心に響く。

    梨木さんの紡ぐ言葉、世界がスッと沁み渡っていくこのひとときにもう少し浸っていたかった、それぐらい良かった。

    • あいさん
      こんばんは(^-^)/

      もう読んだんだ!速い(*≧艸≦)
      f植物園よりも好きな世界観だったんだね!
      f植物園よりわかりやすい世界...
      こんばんは(^-^)/

      もう読んだんだ!速い(*≧艸≦)
      f植物園よりも好きな世界観だったんだね!
      f植物園よりわかりやすい世界ってことかな?
      私も機会があれば読んでみよう(*'-')ゞ
      昨日読み終わった本面白かったんだけど、進まなくて難産だった(笑)時間かかったわ。
      また、読んでください。
      2019/06/26
    • くるたんさん
      けいたん♪おはよう♪

      うん、これは前半スローだった植物園に比べると、現代のお話だからサクサクいけて読みやすかったよd( ˃̵௰˂̵ )
      ...
      けいたん♪おはよう♪

      うん、これは前半スローだった植物園に比べると、現代のお話だからサクサクいけて読みやすかったよd( ˃̵௰˂̵ )

      難産本、わかるー!楽しみにしてるわ♡
      2019/06/26
  • 海彦山彦神話を現代の椿宿あたりにメタモルフォーゼして、神話や神社・稲荷をまぶしながら、先祖や歴史を遡って、主人公たちを悩ます障りを探るお話。とぼけたことを真面目な顔で語るユーモア小説か。強い梨木さんの支持者たちが高評価をしていますが、それこそ、狐につままれたような不思議な読後感を得ました。

  • f植物園の続編とは知らなかった。
    こういう独特の雰囲気の小説は、久々。
    完全に全てを理解できているわけではないが、落ち着いてゆっくり読みたい物語。
    現実ではスピリチュアルな方はあまり信用できないが、この中ではありだなと感じる。

  • 『f植物園の巣穴』の姉妹編。痛みと地縁で、そのことを開いていく。何度かデジャヴのような不思議な感覚に襲われる。この数年、身体に思考が停止するような痛みがあるからなのだろうか。治療はしているが、原因がひとつだけではなく、身体の歪みを治したら改善したこともあった。もう少しで読み終わる頃に、浅間山が噴火。ダブル台風にも警戒と天気予報は伝えている。天災が増えているので、身体が感じることを素直に受け止めたい。あらためて『古事記』を読みたい。子どもの頃に『因幡の白兎』は感銘した記憶がある。

  • 私も今、五十肩なんです。これ、未罹患の方にはなかなか想像つかないと思うのですが(私がそうだった)、本当に悶絶するほど痛いことがあるんです。
    山彦はまだ三十代なのに肩の痛みに苦しんでいて、読んでいて私の肩も痛みました。気の毒すぎる。母との関わりに屈託があり、かなり屈折した性格に仕上がっている山彦と、いとこの海子とのやりとりは、まるでコントのよう。
    仮縫氏と亀シは胡散臭すぎるし、山彦の屈折に影響したお母さまもなかなかのキャラクター。個性豊かすぎる登場人物に、山彦のトンガリもそんなに目立たないです。

  • 「f植物園の巣穴」に連なる話。

    度重なる“痛み”に悩まされている、主人公の山幸彦と、従妹の海幸比子。
    彼の元に実家の店子・宙幸彦から手紙が届いたことから物語が展開します。
    「f植物園の巣穴」を読んだのが10年前で、殆ど内容を覚えていなかったのですが、その中で提示された課題が子孫の代まで持ち越されて本書の物語に繋がっていくのですね。
    ラストの手紙の中で明かされる、様々なリンクには思わずため息が出ました。そして「古事記」を改めて読み直してみたいと思った次第です。

  • 『f植物園の巣穴』を読んだのが、随分前だったので、再読してから臨めばもっと味わえたのかなぁと、ちょっと残念。

    もちろん記憶に薄くても、ストーリーはちゃんと読めます!

    身体の痛みは、どこに起因しているんだろう。
    簡単に、疲れているんだろう、ストレスなんだろう、と片付けてしまいがちな痛みの元を辿ると、そこには自分の名前の由来を含め、家の縁起が深く関わっていることを知る。
    知りたいことや、会いたい人に、知らず引き寄せられていく中で、かつて祖父が暮らしていた家を訪ねるのだった。

    こういう、家(先祖)とか命名にまつわるテーマって最近ではあんまり見かけなくなった。
    そんな中にあって、切れないもの、縁という存在を、梨木香歩の現実とも夢とも言えない、ふやふやとした世界が上手く引き込んでいく。

    こういう小説を読むと、身体のツボが、とか、家の風水が、とかソワソワしてしまう単純な自分。

  • ともに痛みに苦しむ従妹と主人公とのユーモラスな会話劇から展開していく物語は、日本書紀の喩えを取り込みながら、延々と粛々とつないできた人と人の縁、土地と人の縁を豊かに描き出す、ほかにない興趣を残すものでした。

    神話や自然に造詣の深い作者だからこその説得力と想像力のブレンドが利いた、過去と未来と人ひとりひとりの尽きない因縁の話だと感じました。

    自然は、たとえいっとき壊れても暴れても、あるがままに放っておけば自ずと回復するだろうに、理由を追求し手を加えたくてたまらない、そんな人のサガとはどうにも相性が悪いものでしょう。

    けれども、人だって自然を、土地を愛し尽くしたい気持ちを忘れたわけではない。愛する人に肩を預けるように、ゆるりとそっと寄り添って、自分ができる方法で、森を土を水を慈しんでいきたい、そんなあたたかさとゆるやかな希望を感じる物語でした。

  • 久しぶりに梨木香歩さんの本を読みました。f植物園の巣穴と繋がっていたなんて!もう一度読み直してから読めば良かった。もう一度読み直してみよう。
    三十肩と頚椎ヘルニアと鬱を持ち、かなり深刻な痛みとともに生きている山幸彦。リウマチ性多発筋痛症の上に、階段から落ちて肩を骨折し、同じく深刻な痛みとともに生きている、山幸彦の従妹の海幸比子。
    「実家」の店子である鮫島宙幸彦より、家を出ることになったので賃貸契約を解消したいという手紙から物語は始まる。
    山幸彦は深刻な痛みを取り除くため、海幸比子から勧められた鍼灸院へ行き、そしてそこで出会った亀シに導かれる様に、彼女と共に一度も訪れたことのない「実家」へ行くことになる。椿宿の辺りへ。彼らの名前の由来、痛み、家、そして先祖からの歴史。痛みの経絡・ツボはどこにあるのか。
    とても不思議で、核心が掴めそうで掴めない…そこに一つの風の通り道を作ることで、何かが動いていく。確かにf植物園の巣穴の姉妹編なのは頷ける感じでした。

  • 「椿宿の辺りに」(梨木 香歩)を読んだ。
    「f植物園の巣穴」の続編なのだが、受ける印象がずいぶん違う。
    救済と癒しの物語としての「f植物園の巣穴」であったのに対して、本作は一族が連綿と抱えてきた宿痾を明らかする旅の物語と言えるかな。
    評価は分かれるかもしれない。
    さらなる続編が欲しい。(2021.05.18)


    沈黙していたこの5ヶ月間は好きな作家のお気に入りの作品ばかりを読んでいた。チャンドラーとかディック・フランシスとか梨木香歩さんとかね。
    唯一、『椿宿の辺りに』を新しく読んだ。
    家守綺譚 →冬虫夏草→f植物園の巣穴→椿宿の辺りに→海うそ→ 家守綺譚 →冬虫夏草→(無限ループ)

  • 古事記に顕れる二人の神、山幸彦、海幸彦をその名に持つ従兄弟同士が、謎の激痛に悩まされる。
    山幸彦は、祖母の夢枕に立った祖父のことばを受けて、双子の鍼灸師の一人を伴い、あの佐田家に初めて足を踏み入れると・・・。
    梨木香歩さんの奇譚シリーズ。双子、二つ、は、古代日本で禁忌とされることが多かったようです。そこに現れる宙幸彦(そらさちひこ)の存在。その土地の持つ力関係が人に影響を及ぼすことは、ありうるかもしれない。

    もちろん「f植物園の巣穴」のことはきれいに忘れているので、これから読み返します。

  • 「f植物園の巣穴」からは抜け出せなかったのだが。
    痛みを足されて少々陰鬱な気分で読み進む。
    わたしの「滞り」もいつか流れていくだろうか。

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著者プロフィール

作家。小説に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』(新潮社)、『家守綺譚』(新潮文庫)、『海うそ』(岩波書店)、『椿宿の辺りに』(朝日新聞出版)など。エッセイに『ほんとうのリーダーのみつけかた』(岩波書店)、『炉辺の風おと』(毎日新聞出版)など。児童文学作品に『岸辺のヤービ』(福音館書店)、絵本に『蛇の棲む水たまり』(ブルーシープ)などがある。

「2025年 『森のはずれの美術館の話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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