椿宿の辺りに

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022516107

感想・レビュー・書評

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  • f植物園の巣穴の続編、読もう読もうと思って積みっぱなしだったものを読む。前作の主人公の子孫たちのお話だけど、彼が放っておいたはるか昔からの因果がいよいよ滞り、子孫たちの体に激痛となって現れる…という話。日本神話や風土も共鳴し、物語は大きく広がっていく。不思議というよりはちょっとオカルト謎解きという感じが漂うかな。何代も前からの因縁が、不思議な縁で集まった子孫たちの間であきらかになりほぐされ繋がれていく…という流れは「からくりからくさ」に近いけれども、あちらのほうがスケール感の大きさや物語のおさまりも好みだったなと思う。
    この物語では致命的な自然災害になりえる地形等もそのままに自然に成り行きを見守るべきだ、という見方を終わりに持ってくる。「そういう積極的に『ただ待つ』姿勢に、何か、これからの私どもの在り方への示唆があるような気がしています」という今作主人公の言うとおり、家系に宿ったしこりに対しても特に何をするでもない。ただ明らかにすることで、主人公たちの痛みは根源を見つけて収まっていくのだ。謎解きに終始し、動きのない感じがちょっと消化不良に感じるのかも。私としては、命を懸けて自然災害と闘ってきた人間たちの営みも尊重すべきものと思うので、自然破壊するよりは人が災害で死んでも仕方ない、みたいな結論も少し疑問に思うところはある。自然や人のもつ運命的な成り行きやつながりを尊重し慈しみ、自然を愛する梨木さんの気持ちもわかるし、大きな視点でみればそうなのかもしれないけど…私はまだそこまで達観できてないなあ。

  • 面白かった。
    神話と土地の記憶と人の縁と、もろもろ。

    最初数ページ語り女性かと思ってた。
    口調の丁寧な男性でした。
    深く語られることはなかったけれどどうも母との関係に若干の問題?があったもよう。

    次々と襲ってくる身体の痛み。
    その原因は先祖の地にあった、というちょっと不思議な話し。
    自分の身体の中にその原因がないってちょっっとこわいよなーーっとも思ったり。
    痛いのイヤだ。
    なんか色々繋がってる、というのは面白いし、受け入れるなら気持ちのよいものなのだろう。良縁にも恵まれたみたいやし。

    海彦山彦の話、山彦、そんなヤな奴やったっけ?
    お爺さんのオリジナル山彦のアクに強さにちょっと引いた。

    急に植物園の穴でてきたのでびっくり。
    読んだはずだけどイマイチ印象がないなーー。
    これを受けてもう一回読むとおもしろいかな。

  • 【読了メモ】読み返したいと思っていたf植物園の巣穴に、こんなところで出会えるとは。

  • f植物館の巣穴は、結構好きな本だったので、続編と聞き、期待していたんだけど、やや尻すぼみな着地だった気がして、ちょっとがっかり。
    修験道の仮縫兄弟は、ほんとにちゃんとした力がある人として、描かれた方が好みだったなぁ。ぼやかして書かれてると、もやもやしました。
    昔の作品は好きだけど、最近の梨木さんは、ちょっと好みから外れてきた感じがします…。

  • 心に住み着いた考え・問題を解決しないと何も始まらない。それがつまりは、ほかの日常生活にひびいている。
    続きものなのを知らずに読了。あまり入りきれなくて理解しがたかった。

  • f植物園...を以前読んでいるのにその物語の輪郭をはっきりと思い出せず、情けないと思いつつ、f植物園の方を再読することに。(現在再読中)
    大きな時間の流れの中で、自然環境の影響を受けて土地が変化していく様、それをこれからの時代にどう活かしていくのか、そういった「海うそ」から繋がっている問題意識が底流にあり、日本という国の始原に遡る神話の世界、そしておそらくは震災に幾分かは動かされた噴火というモチーフを加えて、物語が成っている。
    全く個人的なことだが、夏に伏見稲荷に詣った。以来そこで求めた稲荷の面にずっと見下ろされている。

  • 最初の方で語られる主人公の(古事記の)山幸彦評が的確過ぎて...
    だよねー,誰だって怒るよね,自分の大事な大事な商売道具,無理やり借りていってなくされたら.
    海幸彦に深く同情.

    そっか,海幸の力をそぐための計画的犯行か...

  • 日本神話(この本に出てくるのは海幸山幸のお話)やオカルトが好きな人には面白いかもしれないけど、私には合わなかったようです。結末も、「なんとなく、こういうことが言いたかったんだろうな」というのがぼんやり理解できた程度で、すっきりとはしませんでした。

  • 亀シ最高。樹木希林がぴったり。仮縫老人は樹木希林と似てないけど、鈴木清順で。どちらも故人ですが。
    海幸山幸の話は子どもの頃好きというわけでもなかったけど、なんだか気になる話だった。今考えると、普通の昔話(当時は昔話と神話の区別がついていなかった。)は一応オチがつくというか、ある程度まとまっているものなのに、これはラストにスッキリ感がなかったからではないだろうか。因幡の白兎はスッキリと納得できたのだが。
    梨木さんももしかしてそうだったのかも、と思った。
    面白かったのだが、f植物園の方が個人的にはいいと思った。先祖の因縁が子孫の体に痛みとなって現れるみたいな話(というほど単純でもないのだが)の流れが、何となく昔のオカルトみたいで好きじゃないんだと思う。
    でも、さすが梨木香歩、誰にも真似できない物語。芥川賞候補になってもおかしくないと思うが、あれは一応新人賞だから、難しいか。

  • 滑り出しも流れも面白かったのですが、広げた風呂敷を畳めていない、畳める気もない? 物語の広がりが梨木さんにしては物足りかなったです

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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