fishy

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.71
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本棚登録 : 467
感想 : 46
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022517135

作品紹介・あらすじ

友愛でも共感でもなく、この刹那に集う女たち。作家志望のライター美玖、共働きで女性誌の編集をつづける弓子、インテリアデザイナーのユリ。都内きってのナンパ街となった銀座のコリドーで、三人は互いのプライベートに踏み込まない距離感を保ちながら、この場かぎりの「ともだち」として付き合いをつづけている。気ままな飲みともだちに見えるが、彼女たちが抱える虚無は、仕事でもプライベートでも、それぞれに深い。結婚したばかりの男に思いを寄せ、不倫によって日常が一変する美玖。サレ妻となった弓子は、夫の監視に疲弊しながら仕事と家庭と自尊心を守ることに必死だ。ユリの生活はリア充に映るが、まったく不透明で真実を見通すことができない。愚かしく、狂おしく、密やかに――彼女たちの日常にひそむ罠と闇と微かな光。女性の生き辛さと新たな連帯をを鮮やかに切りとる著者の到達点。

感想・レビュー・書評

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  • 初金原さん。
    圧倒的な小説でした。
    さすが、芥川賞作家。

    結婚したばかりの男と不倫するフリーライターの美玖。不倫する夫の監視しつつ、家庭を維持することで自尊心を守っている編集者の弓子。何者だかよくわらないが、正統な理屈をいちいちこねくりまわすインテリアコーディネーターのユリ。
    3人は銀座のコリドー街に集まる飲み友だち。3人の視点が順番に語られることでストーリーは展開する。

    三者三様の人生が描かれているが、それぞれの視線がそれぞれに対し鋭く尖っているので、怖いっす。

    で、結構、事件が起こる。特に後半が怒涛。右往左往というか七転八倒というか…

    特にユリが最後まで不気味で…好き。

    三人は共通して男のしょうもない性に引っ掻き回されている。でも、強かに生きる。
    こういう女性の強かさがあったからこそ、今こんな社会あって、人類は繁栄しているんだな…と、実感。
    感謝です。

    ドロドロした小説なのに、なぜか読後感が清々しい。

    • naonaonao16gさん
      たけさん

      こんにちは!
      まさかのひょっとすると同じタイミングで金原さん読んでたのかな!?と思い、思わずコメントです!

      この作品、すごく気...
      たけさん

      こんにちは!
      まさかのひょっとすると同じタイミングで金原さん読んでたのかな!?と思い、思わずコメントです!

      この作品、すごく気になってたんですよね~
      金原さんの作品に出てくる登場人物「それぞれに対し鋭く尖っている」作品。なるほど…
      文庫待とうと思ってましたが待てないかもしれません…!

      ありがとうございます!
      2021/01/17
    • たけさん
      naonaonao16gさん、コメントありがとうございます!

      どうも同じタイミングでコメントいれさせていただいたようです(笑)

      この本と...
      naonaonao16gさん、コメントありがとうございます!

      どうも同じタイミングでコメントいれさせていただいたようです(笑)

      この本とても、面白いです。そしてしっかり痛いです。naonaonao16gさんには是非読んでほしい!
      2021/01/17
  • 金原さんの圧倒的な筆致に時折なぎ倒されそうになり、頁から目を離す。
    息が浅くなり、夢中で頁を捲っていた自分に気づき、遠くを見つめては深呼吸。

    これでもか、これでもかと綴られる人の露悪的側面の連続。
    表題Fishyだよなあ。
    頑張れば報われるとか、想いは通じるとか、辛抱すれば誰かに認められるとか、甘ったるくて、幻影に満ち、陳腐な定説は木端微塵に吹き飛ばされる。

    3人の女性たちがそれぞれ生きてきた過程のなかで、積み重ねた他者、世の中に対する苛立ち、怒り、憎悪、諦めらが言動となってほとばしる。

    年齢も立場も異なる3人の女性たちが、刹那的な自己承認欲求や居場所を求め、顔を合わせ言葉を交わす。
    従来自己嫌悪に満ちた女性たちは、時に他者を否定しては自分の位置を確認し、異論に対して猛烈な攻撃性を剝き出しにする。

    誰が正しく、誰が誤っているのか。
    逃げ場のない、相手を追い詰める議論は結局自分自身への怒りの投影ではないのか。
    愛したいのに、愛せない。
    甘えたいのに甘えられない。
    許したいのに許せない。

    他者への怒りの根源は、自己嫌悪に思えてならない。
    頭の中の途切れることのないぐるぐる思考の果てには、制御不能の感情の爆発と、騙しのきかない衝撃性、苛烈な感情の起伏が突如姿を現す。

    予想不能な暴言、相手への攻撃、暴力等々胸が潰されるが、心の底にため込んだ自分への強迫性が私自身にも重なる。

    結局自分は何に充足を感じ、何を求めているのか。
    世間の「人並み」やら「幸せ」ではなく、「私が私であっていい」明確な理由なき安心感。

    何を選び、何を手放すのか。人と同じでなくていい。

    2人の小学生男児の母であり、家庭こそ自分の居場所と信じていながら、夫の不倫に裏切られる編集者弓子。

    夫と娘がいながら、次々と男性との一線を越えて何かを求め彷徨い続けるインテリアデザイナーのユリ。

    意中の男性に想いを打ち明けられず、既婚者となってしまった彼との不倫関係を続け、その関係性に耽溺する美玖。

    三人三様ながら、虚無感に溢れ、刹那的で、決してうまく人と関わることができない。私のなかにも彼女たちの要素がそこここに。
    特に弓子に重なる部分が大きいな。

    食洗機への食器の出し入れに関わる夫への違和感、細かい心情を上手に掬っている。巧い。生活の仕方、価値観、子育て観等々、全て他者である異なる存在の伴侶と折り合いを探す難しさ。

    中毒性がある金原さんの作品。また読もうっと。

  • 銀座コリドー街に集う三者三様の女性たち。
    フリーライターの美玖は海外赴任していった新婚の彼と不倫中。
    出版社で働くバリキャリの弓子は若い女と不倫した夫に家を出て行かれた。
    インテリアデザイナーのユリは夫に娘の胡桃ちゃんを預けて浮気三昧。

    立場も境遇もそれぞれ違う3人が、酒を飲みながら繰り広げるマシンガントークに爽快感。まぁ話している内容はドロドロだけれども。
    私が金原ひとみの小説を好きな理由の一つとして、全員に少しずつ共感できるというのがある。登場人物の誰か一人にのみ肩入れするのではなくて、「あぁわかる」「でもこっちもわかる」「それもわかる!」「わかる!!」というのが最後までずっと繰り返される。
    一字でも読み落としたら振り落とされてしまいそうなスピード感に必死でしがみついていると、ストーリーは次第にまるごと自分自身に置き換えられていって、結果としてパンドラの箱が開く。
    もやもやした感情や抱えていた虚無がどこまでも論理的に言語化されてしまうので、箱が開いたら最後、全てを理解してしまった私はもう以前の自分には戻れなくなっている。臭いものに蓋をしていた頃の自分には。

    ーー
    私は夫に愛されたかったし、抱かれたかった。でもユリの言う通り、私は愛される才能、抱かれる才能がなかったから愛されなかったし抱かれなかった。愛する才能も、抱く才能もだ。つまり恋愛的側面に於いて私は欠陥品で、夫はきちんとそういうシステムが起動している女に鞍替えしたということだ。夫は少しずつ、欠陥品である私を憎むようになっていったに違いない。でなければ、あんな態度で、二人で経てきた十数年、結婚式、婚姻届、出産、二度目の出産、子育て、旅行の数々、子供の小学校入学、何度も共に参加してきた学校行事、そういうものを走馬灯のように思い出していた私の視線を背中に浴びながら女と店を出て行くことなどできなかったはずだ。最後の最後まで、本当に愛されているのは私のはずという驕った望みを捨て切れなかった自分が情けなかった。愛されているどころか、私は恨まれてさえいたのだ。
    ーー
    最初は、この人と一度でもセックスできたら、私はその後の人生を幸せに生きていけるとすら思った。そんな風にして始まった恋愛が、彼と私の関係とは程遠いところで、完全に別のものに変容してしまった。それが不倫なのかもしれない。不倫は一対一の関係を築けない。いつも彼の陰には奥さんがいて、目を光らせ、彼めがけて飛んでくる害虫をエアガンで撃ち落とし続けているのだ。私は彼と付き合っていたというよりも、彼と彼プラスαと付き合っていたのだ。結婚している男というのは、どうやってもそれ単体で存在しようがないのだ。
    ーー

    結婚生活ってなんなんだろう本当に。不倫して請求される慰謝料ってなんなんだろう本当に。
    不倫された弓子と、不倫した美玖は真逆の存在なのに、この両者の違いが見失われていく。むしろそこには何か似通ってすらいるものがあるように思えてならない。

  • 世界観に引き込まれて、一気に読みきりました。
    「友達」とは何なのか?
    人との関係をつないでいるものは何なのか?

    ユリが言い放った言葉に答えが見えた気がします。

    その関係に友達という名前を与えた瞬間、友達を所有してしまうから。所有の概念こそが、他人を排除する意識を自身の中に生じさせてしまう。

    時間ができた時に、また読みたいと思います。

  • まるで嵐の中にいるかのような、全ての台詞に迫力がある小説で、読み終わった後は圧倒されて放心状態になった。どうしたらこんな会話を書けるのだろう?金原ひとみは現代の女性を書くのが本当に巧い。弓子、ユリ、美玖の3人ともが生きづらそうで、でもそれを直接吐露して慰め合うとか励ましあうとかそういう優しい空間はなく、常に殺伐としている。でも意外に爽やかさがある結末が良かった。この作品は初期の頃を思い出させるような衝動というかヒリヒリした感じが前面に出ていた。中学生の頃から金原ひとみの小説が好きで10年以上読んでいるけれど、相変わらず好きでこれからも読み続けたい。

  • 同世代だなぁ…と嬉しくもあり切なくもなった。デビューからずっと読んでますが、本当になんでこんなにいろんな意味で痛いんだろう。言語化、そう、金原さんって叫びとか言葉にしづらい感情をしっかりと言語化できるひと。
    アラサーにはこれ、すごく響くと思う。3人の女性どれも痛くて。でもわたしはきっと美玖が一番近い気がする。や、ユリな部分もあるかも。なんかもう最後が怖かった。それでもみんな一緒にいる感じ、真実か嘘かなんてもはやどうでも良い感じ。本音でぶつかってるのかそうでないのか曖昧な感じ。怖い。けど、好き。

  • 言葉って不思議。

    剥き出しの正しさは鋭利だし、
    感情の渦に撒き散らすとヒステリック。

    重くなったり、薄っぺらくなったり、
    響いたり、刺さったり。

    形状を変え飛び交って、それぞれの関係上で漂い出す胡散臭さ。
    読んでいて「友達」って何だっけ?ってなってくる。

    そういえば「◯◯のママ」と呼ばれ始めてから、
    自分というものが薄まっていったような……
    そうなんだよな、女ってこういうとこあるんだよなっていう共感。

    各々の状況下から各方面の視点で、リアルを容赦なく描き切る。
    表現力えげつナイス。

    そう、この重み。
    流石、金原ひとみ。

  • この3人は何故友達なんだ??と、初めは疑問と辟易とした気持ちになった。読み進めるうちに、それぞれの考え方や葛藤が見えてきて、何よりユリの正体がよく分からなくて一気読みするほど面白かった。
    最後の終わり方とかユリのこととか、よく分からない部分もあるので、また読み返したいと思う!

  • 金原ひとみにハマったかも。
    どうしても、純文学と言われる芥川賞系の作品が苦手で、ほとんど読んでこなかった。以前に新聞小説で彼女の作品を読んで、少しハードルが下がってはいた。
    最初は女3人のトークに辟易してしまっていたが結局、苦手と思っていたユリが一番気になる存在に。
    自分は本音を隠す弓子タイプだな、と思いながら読んでいたので、ユリの辛辣な言葉にビクビクしていた。ユリみたいに本音を出して、言いたいことを言語化出来たらいいなと思う反面、あんな友達は嫌だと思っている自分もいる。
    ユリというか金原ひとみなんだろうが、とにかく言葉が圧倒的。

  • おもしろかった
    3人全く違うけど、それぞれがなんか分かる

    ユリのホントが最後まで、よく分からないのが良かった
    ユリが一番怖いと思う人がきっと多いんだろうなぁ

    私は、流産したママ友のことを、ざまぁみろと言う弓子が一番怖かった

    旦那が帰ってきても、結局喜べず、セックスした時に、あーこういうことする人だった。レスになった理由が全て詰まってるセックスだったと思うとこ、いびきが耐え難いうるさいに変わるとこ、超リアルでホラー
    分かるわぁぁ。

    美玖は、人生の中で最も美しく最も心を奪われた恋愛が完膚なきまでに壊され晒されてると思う
    これがリアルだった。
    そうみんな自分の恋愛が素晴らしいと錯覚する時あるんよなぁ。過ぎてしまえは、ただの不倫やんって気づくんだよなぁ。

    不倫は良くないと、よく言うけど…
    こういうリアルな話を教えてもらった方が、なぜ不倫が良くないのか、わかっていいよなぁ。なんてね。


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著者プロフィール

83年東京都生まれ。03年『蛇にピアス』ですばる文学賞を受賞しデビュー。翌年同作で芥川賞、10年『トリップ・トラップ』で織田作之助賞、12年『マザーズ』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。

「2021年 『緊急事態下の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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