あっち側の彼女、こっち側の私 性的虐待、非行、薬物、そして少年院をへて

  • 朝日新聞出版 (2020年10月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784022517203

作品紹介・あらすじ

取材対象者と新聞記者として出会った、結生と小坂綾子。「なんかまた話したい、って思いました」という結生からのメールをきっかけに、ふたりは結生の人生を振り返る作業を始める。実母からの暴力と、継父からの性的虐待を受けて児童養護施設で育った結生。万引き、援助交際、薬物に囲まれた中高時代の荒れた生活から少年院を経て、自分らしい生き方を模索するなかで抱え込んだ苦悩と葛藤を吐露する。重い過去を引きずりながらも前に進むことをやめない結生の姿を通じて「人が育つこと」「生きること」を問い直したノンフィクション。

みんなの感想まとめ

重い過去を抱えながらも前に進む主人公の姿を通じて、「人が育つこと」や「生きること」の意味を深く考えさせられる作品です。性暴力や援助交際、薬物といった厳しい現実に直面した彼女の経験は、私たちに対する思い...

感想・レビュー・書評

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  • たまたま、何となく、手に取りました。

    「性」と「愛」の混乱。性暴力の罪深さを思いました。

    安心して過ごせる場所と、話せる人との出会いを経た先で、混乱を整理した先の、情景。

    等身大のその人の姿が浮かび上がってきて、とても身近に感じられました。

    支援でも、サポートでもなく、人として出会うこと。
    よりよく生きていくために、私たちにできること。

    どうしてこの本を取り寄せようと思ったのか自分でも思い出せないのだけれど、読めてよかったです。

  • 本書の「主人公」で、著者でもある結生(ゆうき)の、巻末に載ったプロフィールは凄絶だ。

    《一九九六年生まれ。生まれてすぐに実父のDVから乳児院に預けられ、児童養護施設で育つ。一時的に実母と継父と暮らすが虐待を受け再び施設へ。度重なる非行から少年院に入り、出院後は服飾の専門学校に進学。(以下略)》

    しかも、「実母と継父と暮らすが虐待を受け」とある部分は、実母からの暴力と継父からの性的虐待なのである。継父は、結生がまだ8歳のころから性的虐待を重ねていたという。

    そのような生い立ちの結生が18歳のとき、もう一人の著者・小坂綾子と、新聞記者と取材相手という形で出会う。
    それから数年間、取材の域を超えた深い関わりを持った2人が、共著という形で作り上げたのがこの本だ(いまの小坂は新聞社を辞めてフリーライター)。

    本文は結生の一人称で綴られている。
    とはいえ、小坂が結生の思いを文章化したものだろうが、読者にそういう内幕を意識させない。結生の心の中を垣間見るように読むことができるのだ。

    この手の〝虐待を受けた女性のライフストーリー〟は、一つのジャンルといってよいほど、すでにたくさんある。
    本書はそれらの類書と比して、主人公の内面を文章化する手際が鮮やかだ。
    それは、小坂と結生の間に深いラポール(信頼関係)が成立し、結生が心の底まで見せたからこそだろう。

    また、結生は小坂以外の大人との出会いにも恵まれていたと思う。
    少年院の教官、保護観察官、弁護士、自立援助ホームのスタッフたち……登場する人たちはみな、杓子定規な決めつけをせず、結生の個性を最大限尊重したうえで、彼女の立ち直りに手を貸したのだ。

    本書を読むと、子どもへの性的虐待が「魂の殺人」と呼ばれる理由がよくわかる。
    継父から性的虐待をくり返されたトラウマから、結生は男性とのコミュニケーション感覚が狂ってしまっていた。

    《父親との関係が男性関係のベースにあるわたしにとって、同級生や友達以外の男性とのコミュニケーションは、いつも性的関係がセット。援助交際の相手とも、性的関係があることで安心できたし、会話が弾んだ。友達でもない初対面の男の人と、性行為もせず、かしこまってにこやかに会話をするという技術は、自分には備わっていない。》107ページ

    また、子ども時代に虐待を受けていた人にありがちなことだが、結生は「解離性障害」にも陥っていた。

    しかし、結生はトラウマを乗り越えて蘇生し、自分らしく生きられるようになる。
    読後感は、重いけれどもさわやかである。

  • ふむ

  • あっち側もこっち側もないって思ってはいるけど、自分よりも苦しい辛い経験をしている人に対して、変な思いやり方をしちゃうことって、あると思う。
    気兼ねというか。
    対等に話をするって、鏡のように、自分の心情も滲むから、難しい。
    分かったような気にもなりたくない。
    簡単に共感出来ないよな。
    福祉関係の仕事に就いている人は本当に凄い。

  •  ある少女がいた。実父から性暴力を受けて児童施設へ保護。実母に引き取られるも、そこでも継父から性暴力を受け、非行に走る。あげく薬物の摂取等で少年院へ。もう、どうなってもいい、どうすべきかわからない、というのが彼女の正直なスタンスだったかと思う。
     しかし、入所中、そして退所後まで見守ってくれた保護観察官と、退所後に入居した自立支援施設の担当者との出会いが彼女をもう一度人生に向かわせる。彼女は高卒の資格認定試験を取り、さらにとある資格試験にもパスしてある職業のプロフェッショナルとして再度人生を歩み始める。
     著者は自分の十代、家庭環境と重ね合わせながら彼女の辿ってきた道をじっくりと見直していく。それぞれの場所で彼女はどう思ったのだろう、どう感じたのだろう、他の選択肢はあったのだろうか、等々。
     私自身も、彼女と大同小異の環境に育った子どもたちを身近に見ながら過ごしている。でも彼女のようなパターンを辿る子はほんとうに極少と言っていい。十代における「出会い」の重要さを、この本は改めて教えてくれる。この本から大人が学ぶべきこと、それは自分が十代の子どもたちにどう接しているか、通りすがりの他人になってしまっていないか問い直してみることだろうと思う。

  • 国立女性教育会館 女性教育情報センターOPACへ→https://winet2.nwec.go.jp/bunken/opac_link/bibid/BB11482202

  • フォーラムの注目本として紹介されていた。
    自分が今までどれだけ恵まれて育ってきたかと考えさせられる。
    援助交際や薬物をしている人をいいとは思わないけど、人によってそうならざるを得ない人もいる。自分と違う人を、拒絶しない人でいたい。

    結生さんを支えた多くの人たち。
    してあげてる、ではない。役職として関わるのではなく、一人の人として関わるということは自分の中の葛藤もあって、迷いもあってすごく大変だと思う。
    私も患者さんと、人として関わっていきたいと思った。

    生きていれば思い通りにいかないことも多いけど、それら全て「やらされてる」んじゃなくて、自分で決めて「やっている」。自分で選択してるということに責任を持ちたい。

  • 結生、ゆうきと読むのは珍しいと思って、それだけで手に取った本。
    あっちとこっちに、線を作らない、自分で自分を諦めない、分からないことを分からないと言って学ぶ姿勢は素晴らしい。

    この著者は、周りの人に恵まれたから、ここまで来れたのだろう。
    可能なら、この人にしかできないことで、同じ境遇にいる人を、気にしてあげて欲しい。
    救う、などおこがましいことではなく、彼女が、綾子さんにしてもらったような関係を保てる人になるとか。

    みんないろいろな人生がありますね。

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