小説『火の鳥』大地編 (下)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 168
感想 : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022517449

作品紹介・あらすじ

1938年上海、關東軍将校の緑郎が「火の鳥」調査隊に任命される。ほかに任命された仲間らと共に、かつて栄えた楼蘭に向かうが、そこで、火の鳥には時間を巻き戻す力があり、歴史の改変がすでに何度も繰り返されていることを知る。

感想・レビュー・書評

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  •  手塚治虫氏が書き遺したわずかばかりの「火の鳥」の構想原稿。これを基に、桜庭一樹氏が書き起こした小説「火の鳥 大地編」。桜庭氏が登場人物に、手塚氏の作品に登場するキャラクターをイメージして充てているのが嬉しい。(手塚プロダクション作画)

     小説の方は、やはり「ラノベ感」が拭えない。マンガなら、これでいいのにと思う。文章にすると、ちょっと違うかな。

     東条英機、山本五十六など実在の人物も登場する。そして日中戦争下の中国大陸を主な舞台に、火の鳥、タイムループ、核の火、楼蘭の美女をキーワードにして上手くまとめていると思う。

  • 桜庭一樹「小説 火の鳥 大地編」 - 文化・芸能:朝日新聞デジタル
    https://www.asahi.com/culture/hinotori/

    小説 火の鳥 大地編 下 桜庭一樹(著/文) - 朝日新聞出版 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784022517449

  • 上巻の3分の2位は手塚調だったので、もっと遺稿は残っていたのかと思っていた。上巻の感想はベタ褒めしたが、内心では遺稿が無くなった後が丸わかりだよなぁとがっかりしていた。が、実際は思っていたよりずっと前の部分から遺稿は無かったのだ。騙された。手塚治虫の火の鳥という作品の魔力か、筆者の力か。

    正直、タイムリープの繰り返しはしつこ過ぎて飽きたが、手塚治虫もやり過ぎな時があった気がするから、そういうのを踏まえているのだろうか。飽きたーと思って読み過ごすと、後であれれ?となって読み返す、みたいなのも合わせたのかな?
    キャラも、ああロックならありそうだ、猿田博士ならやりそうだ。これはタマミだ、と納得出来た。ただレッド公とサファイアには違和感があった。

    最後、巻末の参考資料の多さに脱帽。

  • 20210322-0324図
    下巻読了。

    火の鳥の力で、最初は過ちを訂正する為に時を戻していたけど、戦争の勝敗を軸にいつしか富と名声と権力の私利私欲にまみれた欲で時を戻す様になる
    延々と時を戻すこと17回。17回目の世界に
    「ああ、なるほどな」と思いました。
    結末は気分が良くなるものではなかったけど
    面白かったです。最終章で人の弱さと強さを突きつけられました

    これは『大地編』となっているけど、他のエピソードへと続くのだろうか?

    日本の歴史、特に近代史に興味が湧きました

  • 火の鳥の力は、手にしてしまうと持ち主の心を掻き乱す。
    過去をやり直せる、それはきっと抗い難い魅力なのだろう。
    だから、ある者は求め、ある者は捨てようとした。
    しかし、誰が大いなる力を簡単に捨てられようか!
    自分がこうありたい、そう願った未来を作り出せるのに!
    私が幸せなら、他の誰かがどこか遠いところで家族を失っても、命を落としても、構わない!

    ああ、それが許されるのか?!
    私は正しく生きていたいと望んだのに、かくも弱かったか!

    本書に登場する者たちは誰もがそんな苦しみを、悲しみを、弱さを抱えている。
    三田村財閥がどんな手を使ったとしても、緑郎が野心にまみれていたとしても、ルイや芳子がかつての王国を取り戻そうとしても、それは、どこかで納得し、理解できてしまう行動ではないか?
    上巻では奔放な悪女とみえた麗奈の悲しみも、敵味方不明な猿田博士の行動も、ただひたすらに幸せになりたいというたった一つの想いから始まっている。
    だとすれば、本当の悪は火の鳥ではないか?
    この鳥さえいなければ誰も苦しまなかったはずなのに。
    幼い頃漫画を読んだ時から思っていた。
    火の鳥がそもそもこんなにも弱い人間の元に現れなければよかったんじゃないか、と。
    だが、おそらくそれはそういうことではないのだ。
    火の鳥はあくまでもきっかけに過ぎない。
    争い難い力の前で、あなたはそこからどうするの、と火の鳥(作者)は問いかけている。

    私たちは失敗から学ぶ。
    でも1人ができることは多くはない。
    だから代わりに作者は示す。
    こうしたらこうなる、だから、正しいと思う方を、と。
    そんなメッセージを受け取りつつ、純粋に私は本書を読めたことが嬉しい。
    これこそ手塚、これこそ、桜庭一樹、これこそが、物語、小説!
    乱世編から始まった私の『火の鳥』は何度でも繰り返しやってくるだろう。
    そして過去には戻れなくても何度も私の間違いを正すだろう。
    火の鳥!それは、きっと、私自身なのだ。

  • 火の鳥がもたらすものは「罰」、それも人間の内面にある「欲」を増幅させ「醜さ」を露わにするもの、だからこそ人の持つ「やさしさ」や「すがすがしさ」が際立つ物語。
    それは「生命とは」を描く手塚治虫の『火の鳥』の一貫したテーマの一つであった。

    おそらく、賛否両論だろう。セリフ回しは大げさで舞台のナレーションのような説明色の強い文章は好き嫌いがあり、まるで映画のようなコマ割りの漫画『火の鳥』を新たな物語で小説化するのは無理があるかもしれないが、江戸川乱歩の冒険小説のようだと思えば、昭和の雰囲気になる。好き嫌いのでる緑郎(ロック)のキャラも、私は手塚漫画らしいと思う。
    なにより『火の鳥』がまた読めることがとても嬉しい。
    激動の昭和初期を生き抜く人々の群像劇の舞台で、手塚治虫の作ったキャラクターが歴史上の人物と共演する。
    猿田博士、緑郎、正人のほか、冒頭の人物紹介画では手塚漫画でお馴染みのキャラが登場し、拍手喝采!

    もう一つの物語
    1900年の遺跡発掘と女性ミイラの発見から、一躍有名となった「彷徨える湖 ロプノール」と「消えた楼蘭王国」の物語は、ともすれば暗くギスギスした昭和史に、ほんの少しロマンの香りを添えてくれる。

    劇中で三田村要造が「生命とは記憶だ」という……ならば「忘却」もまた「生命の定め」なのか……。

    「私ならもっとすごい『火の鳥』が描ける」という人、チャレンジしてみてください……物語の記憶をつなぐために……。

  • 初読。図書館。戦争の時代を描きながらそこにある人間を描くことは容易ではないだろう。多方面から重箱の隅をつつくような揚げ足をとられ、作品の本質が追いやられてしまうことが想像される。戦争の時代を何度もタイムリープするという設定で類似した描写を繰り返すことが、不思議な効果を生んでいる。歴史的事実への冷徹さというか、無力感というか。だからこそ余計に登場人物たちの業の深さが哀れでもある。火の鳥を8月6日の広島に運んだラストには驚愕した。

  • 原作というか漫画の火の鳥は昔読みました。
    やっぱり、漫画で読みたかったなあという感じがします。

  • 正直期待外れ。手塚の人気キャラを呼び水にしたが、あまり連関できてない。
    作者が女性のせいか手塚にある色気や暴力性がなく、思想のぶつかり合いも生命の尊厳を問う仕掛けがやや弱い。
    タイムリープで歴史の修正はありがちな素材だからキャラの掘り下げをしてほしかった。三田村の回想シーンが冗長すぎて、コミカルで幼稚に見えるのが難点。反戦意識で書いたのだろうが教科書で見かけるレベルの文士は登場させる必要があるのか?
    戦局を資料を写してダラダラ描写した後半部も飽きたし、この著者ならもう少し踏み込んで書けたはず。残念だ。
    脚本家に修正してもらってアニメ映画にしたほうがいいかも

    読了しての結論。
    回想を除けばスピード感があり、脇役に救いがある。
    最終章でうまく纏めているが、間久部兄弟の泥くさい対立がもっとあればよかったかな。惜しい。

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著者プロフィール

1999年デビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞、08年『私の男』で第138回直木賞を受賞。21年2月、小説『火の鳥』刊行予定。

「2021年 『東京ディストピア日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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