植物忌

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.22
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本棚登録 : 190
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022517609

作品紹介・あらすじ

書きおろし・単行本未収録作を含む全11編、異色の植物小説集いとうせいこう氏、絶賛?「植物へ植物へ、ヒトが溶けて滲み出す。これは多方向的で悦ばしい『変身』の群」アイビーを体に生やして着飾るうちに植物化した人間たちの幸福な未来を描いた「スキン・プランツ」、蜂起する植物たちと特殊工作員ネオ・ガーデナーが対峙する「始祖ダチュラ」等、11編。ヒトが植物の世界に取り込まれていく虚構に、現代社会への痛烈な批判を込める――。■収録作品避暑する木ディア・プルーデンス記憶する密林スキン・プランツぜんまいどおし植物転換手術を受けることを決めた元彼女へ、 思いとどまるよう説得する手紙ひとがたそう始祖ダチュラ踊る松桜源郷喋らんあまりの種― あとがき■著者プロフィール星野智幸(ほしの・ともゆき)1965年、米ロサンゼルス生まれ。早稲田大学卒。新聞社勤務を経て、1997年、『最後の吐息』が文藝賞を受賞しデビューする。2000年『目覚めよと人魚は歌う』で三島由紀夫賞、03年『ファンタジスタ』で野間文芸新人賞、11年『俺俺』で大江健三郎賞、15年『夜は終わらない』で読売文学賞、18年『?』で谷崎潤一郎賞を受賞。ほか『植物診断室』『呪文』『未来の記憶は蘭のなかで作られる』『のこった もう、相撲ファンを引退しない』『星野智幸コレクション』『だまされ屋さん』など著書多数。

感想・レビュー・書評

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  • 著者初読み。
    植物雑誌に掲載された植物絡みの短編集。

    ラジオ「高橋源一郎の飛ぶ教室」でテーマの植物関係本の紹介繋がりで著者の「スキン・プランツ」に興味を持って。

    正直、初めて知る作家さんでしたが、今まで知らなかったことが悔やまれる。

    あとがきも一つの短編に組み込まれている不思議感。
    星新一に近いジャンルだともいえるけれど、いや別種?のような新鮮さ。

    この感覚、読まないとわからない!

    おいおい別作品をゆっくり読んでみようと思う。

  • 星野智幸先生作品ってSFってか海外文学??みたいで苦手なんですけど、コロナ禍でさすがに先生も弱ってたんかな、なんか一般人にもやさしい書き口だった
    中身は尖ってるけど

  • 今までにない感覚の小説。ファンタジーなのか?フィクションであり得ない話なのに妙にしっくりくる。人間という物で繋がっているからだろうか。

  • ヒトが植物に取り込まれていく恐怖と幸福。
    植物になって言葉を無くして一体になることは
    それは言葉無くして分かり合えることになるのか。
    言葉がないと分かり合えないけれど、言葉があっても分かり合えない。
    それでも植物と一体にならなくても繋がることができると思いたい。
    だけど、例えば桜は怪しい不穏な美しさで人を惹きつける。
    その美しさの理由を求めると、孤独な人はより惹きつけられる。
    言い争うことで生きていけると思う私に対して、空彦は鈍感さを抱えたままに生きていけない。
    記憶する密林に囲まれた空彦はより感覚が研ぎ澄まされている気がする。
    空彦の不安定さが好きだった。

  • 比較的よくある日常の風景に見えなくもない状態で始まった第一話はしかし、読み手(=人間)を油断させる侵攻の第一歩でもあったと、後になって思う展開だった。これは地球の意志なのか。人間たちがじわじわと植物に取り込まれていく流れにおぞけ立ち、警戒が増していく中で迎えた最終話には、思わず天を仰いでしまった。また、この本を手に取ったときに「おや?」と感じたもの……それは匂いだ。表紙や裏表紙をめくると、あるいは本文のページからぷんぷん漂ってくるこの匂いが、気分を悪くするのに一役買っている。

  • 植物と人との関わりを描いた短篇連作。「Made In Plants」というシリーズものではより明確になっているが、幸福な共存というわけではないのは本書のタイトルに“忌”の字が入っていることからもわかる。どの作品も奇想に満ちていておもしろかった。自宅の庭を自然に返して久しいが、ガーデニングが趣味の人ならより楽しめる(もしくはおののく)かもしれない。

  • 植物忌
    星野智幸

    ∞----------------------∞

    こういうの大好き。ファンタジーなのは分かるけど、不思議なものを読んだなと思う。どうやったらこういう発想ができるようになるんだろう。特に好きなのはスキン・プランツ。

    -避暑する木-
    百合男は飼い犬オノノンが肥料となった「をの木」とその種を世界中に撒こうと思う。そして自分は犬だという颯爽と心が通じ合う。

    -ディア・ブルーデンス-
    触ったら腐っていく病が流行る頃、青虫になりたいと願い希望を遂げるぼく。人は強い想像で自分を変えたり子供を創る。

    -記憶する密林-
    身近な人が亡くなる度に植物を買って育てるようになったという空彦。その彼が亡くなり、ひとつのヒースを貰い育てることにした。ただ水をやるだけで自然に任せ、空彦の記憶を持ったヒースを増やし続ける。

    -スキン・プランツ-
    独創的なタトゥーを入れたいと皮膚から植物を生やす男。それをきっかけにカツラ代わりのヘアプランツが流行り出す。花を咲かせると代償として生殖能力が無くなる。しかしその花の種が地面で実るとそこから胎児が生まれる。

    -ぜんまいどおし-
    植物転換手術を受けると体は勝手に身体を診断して修復するようになる。失敗すると人間植物となり植物化するが、成功してもぜんまいがなくなると人間はいずれ植物の養分となる。

    -植物転換手術を受けることを決めた元彼女へ、思いとどまるよう説得する手紙-
    手術を受けようとする彼女は、エコロジスト。温暖化や人口爆発を自ら抑えようとする。が、70歳になってから受けても良いんじゃないの?

    -ひとがたそう-
    ハイパー植物の陰謀を暴きくじく特殊工作員ネオ・ガーディナー。仲間が身分を隠して結婚した男性は討伐対象のマメ科人形草。彼女は人類が生き延びるために草になったのだという。

    -始祖ダチュラ-
    ダチュラに襲われ次々とネオ・ガーディナーの仲間が殺られていく。戦い貶めていたはずが、ダチュラの思うがままに動かされ高貴な姿にしてしまっていた。

    -踊る松-
    人さらいともブラックホールがあるとも言われる踊松神社。みんなが神様。神社は風の神様が祀られている。

    -桜源郷-
    桜の花からは瘴気が出て、人の脳を破壊し死に至る。花見に行くと桜の花びら(唇)からは吐息や笑い声。桜は元は多くなりすぎてしまった人だった。

    -あまりの種-あとがき-
    他の話に度々出てくる「からしや」。枯れたり弱ったりしている植物を集めて売ったり譲ったりしているお店の話など。

    -喋らん-
    鈴虫が羽を擦り合わせて鳴くように、ススキのギザギザの株に、磨いて作ったツメの株を合わせて音が鳴る「泣けるススキ」の発明。その後は音の鳴る植物の開発ラッシュ。話しかけると答える「喋らん」。人との意思疎通は無くても良い時代に。

    2024/03/31 読了(図書館)


  • 短編が10.最初の「避暑する木」を読んで、意図がつかめなかったので、「あまりの種― あとがき」を読んでみると、作者の思いが何となく分かったと感じたので、最初から読み返した.植物化する人間がテーマではあるが、発想が飛んでおり、出てくる言葉も異様だ.「からしや」のコンセプトが全体にはびこっている感じだが、個々の作品自体は独立している.題名も飛んでいる.「ディア・プルーデンス」「記憶する密林」「スキン・プランツ」「ぜんまいどおし」「植物転換手術を受けることを決めた元彼女へ、思いとどまるよう説得する手紙」「ひとがたそう」「始祖ダチュラ」「踊る松」「桜源郷」「喋らん」.理解の範囲を超えた発想には驚いた.

  • 短編集短編集11編と後書き。
    植物に魅せられ、同化し、乗っ取られたり殺したり、植物への偏愛といろんなアプローチを描いている。「スキンプランツ」が良かった。

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著者プロフィール

1965年、 アメリカ・ロサンゼルス市生まれ。88年、 早稲田大学卒業。2年半の新聞社勤務後、 メキシコに留学。97年 「最後の吐息」 で文藝賞を受賞しデビュー。2000年 「目覚めよと人魚は歌う」 で三島由紀夫賞、 03年 『ファンタジスタ』 で野間文芸新人賞、11年 『俺俺』 で大江健三郎賞、15年 『夜は終わらない』 で読売文学賞を受賞。『呪文』 『未来の記憶は蘭のなかで作られる』 など著書多数。

「2018年 『ナラ・レポート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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