ペッパーズ・ゴースト

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.65
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本棚登録 : 7105
感想 : 641
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022517920

作品紹介・あらすじ

中学校の国語教師・檀千郷(だんちさと)は、受け持ちの女子生徒から自作の小説原稿を渡される。その小説の中では、猫を愛する奇妙な二人組・ネコジゴハンターが大暴れしていた。そして檀先生は、ある条件下で他人の明日の体験が少しだけ観えるという、不思議な力を持っていた。ネコジゴハンターとは何か。父の言葉、悲観と楽観、猫と野球……、檀先生が「サークル」に関わるにつれ、物語は加速していく。
小説を読む楽しさ、面白さに満ちながら、うつむく人を明るい方へとそっと連れ出す、一大エンターテインメント長編!

感想・レビュー・書評

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  • 二カ月近く前から本棚登録して待っていた伊坂さんの新作でした。
    今までの伊坂さんの話と比べるとエンタメ的にはいまいちだと思いました。
    印象的だったのはニーチェの言葉と作品の主人公、壇先生の最後の、事件がすべて終わってからの推理です。

    「作家生活20周年超の集大成となる一大エンターテイメント長篇」と帯にありますが、ちょっとそれにしては私はもの足りなかったです。

    伊坂さんの直筆の「初回限定」川口澄子さんのイラスト付きポストカードがついていたのは嬉しかったです。
    「興味のあることや好きなもの、心配なことや怖いことを詰め込んだところ、今までの自分の小説の特徴が集まったような物語になりました」と書いてあります。
    このカードが今回ファンとしては一番嬉しくて、何度見ても、ニンマリしてしまいます。

    とすると伊坂さんは猫や、未来を視る能力、プロ野球、ニーチェに興味があり、集団自爆テロを恐れているのかなとか想像しました。
    あとは小説を書く中学生の女の子。伊坂さんも小説家だし。
    東北イーグルスというのはもちろん楽天イーグルスのことですね。

    現実と中学生の女の子が書いた小説が次第にリンクして融合するところはさすがにやはり上手いと思いました。

    ニーチェの言葉では
    「人生で魂が震えるほどの幸福があったなら、それだけで、そのために永遠の人生が必要だったんだと感じることができる」
    というのが印象的でした。

    壇先生の最後の推理が当たってたらすごく面白いのですが、ボカシてありますね。

    • まことさん
      yyさん。

      きゃー!
      レビューを全部読んでくださり、いいね!まで、ありがとうございます!
      何よりも嬉しいです♪
      yyさんのお好みに合えばい...
      yyさん。

      きゃー!
      レビューを全部読んでくださり、いいね!まで、ありがとうございます!
      何よりも嬉しいです♪
      yyさんのお好みに合えばいいのですが。
      伊坂さんの世界を楽しんでください。
      そして、決していいね!の強要ではありませんが「逆ソクラテス」もマイレビューありました。
      2021/10/14
    • yyさん
      まことさん

      (^-^) レビューを読ませていただくの、楽しいです。
      「逆ソクラテス」はずいぶん前から、図書館で順番待ち。
      そろそろ...
      まことさん

      (^-^) レビューを読ませていただくの、楽しいです。
      「逆ソクラテス」はずいぶん前から、図書館で順番待ち。
      そろそろかなぁ…。
      という待ち時間も わくわくです。
      2021/10/14
    • まことさん
      yyさん。

      わーん。
      いいね!ありがとうございます!
      「逆ソクラテス」順番待ちでしたか。
      楽しまれてください。♪
      yyさん。

      わーん。
      いいね!ありがとうございます!
      「逆ソクラテス」順番待ちでしたか。
      楽しまれてください。♪
      2021/10/14
  • さあ!待ちに待った伊坂先生の新作だ!
    そう思ってワクワクしながらページを捲ると、まず最初に飛び込んでくるのは登場人物表である。
    開いた瞬間登場人物表がある作品は警戒する。
    挫折した『罪と罰』のことを、思い出すのだ。
    でも、伊坂先生の作品なら大丈夫、怖くない、そう思いながら読み始めた。

    理不尽。
    これは、生きていれば誰もが経験するものだろう。そしてその中に、「理不尽な目に遭いやすい人」と「理不尽な目に遭いにくい人」というのがいて、たぶんわたしは、「理不尽な目に遭いやすい人」に該当すると思う。降りかかってくる理不尽に対して、いつもグチグチ文句を言ってばかりいる。だって理不尽を訴えても、結局なかったことにされるだけ。だから理不尽というのである。人生であと何回、わたしはこの理不尽を味わってゆくのだろう。
    そして中には、たった一度の、とてつもない大きさの理不尽が、大切なものを根こそぎ奪ってしまうことがある。
    ただ普通に生活していただけで、大切な人が、大きな事件に巻き込まれたら。そこで、大切な人の命が奪われてしまったとしたら。

    伊坂先生の作品といえば。
    伏線の回収/リズミカルな会話/アクション/作品の背景に潜む悲しい事件や出来事/勧善懲悪
    今回も健在だ。
    しかし今回は、勧善懲悪できるほど分かりやすい悪ではない。
    だから、読みながらとても複雑な気持ちを抱く。
    わかるよ、やれやれ!という気持ちと、いや、ダメダメ、という気持ちと。
    まるでシーソーのように、それらが、ぎったんばっこんを繰り返す。

    伊坂先生の、特に初期作品は、分かりやすい悪が中心になっていて、だから読んでいてかなりガツンときたし、スッキリさせられていた。
    けれど、最近の作風は、分かりやすい悪、からかなり複雑になってきていて、悪といえど完全な悪ではない、というものが多くて、でも考えてみれば世の中そんな事で溢れている。
    わかりやすく言えば、虐待する親は、そのまた親に虐待されていたりするから、安易に虐待する親だけを指導すればそれで解決ってことじゃない。
    だから、扱うテーマによっては後味が必ずしもスッキリするわけではないし、伏線が全て明記されて回収されるわけではないのかな、と、そんな印象も同時に持った。
    そう、最終的にもやっとした部分がいくつか残ったのだ。

    今回は、ある不思議な能力を持つ中学校の先生が、「あの時救えなかった子」のことを思い、それが今目の前にいるその子ではないとわかっていながらも、「あの時」の挽回をはかろうとする、というところから物語は始まる。
    先生の不思議な能力とは、あることをされると、ちょっとだけ先の未来が見えてしまう、というもの。先生の教え子への思いとその能力によって、先生は次第に大きな事件へと巻き込まれてゆく。
    果たして、「未来」がわかる先生は「現在」、「過去」に救えなかったあの子を救うことができるのか…?

    未来がわかる、つまりこの先何が起こるかわかるということ=小説(作品)
    読者がその作品を読み始めた瞬間から、読者は主人公の未来を掌握しているし、主人公は自分の未来を読者にゆだねる。
    「神は死んだ」し、
    「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている」のである。
    今回の作品は、随所にニーチェの言葉が散りばめられており、読了後はニーチェの作品が読みたくなること間違いなし!
    (かく言うわたしはまだ読んでない)

    ちなみに、この作品を映画化するなら、ロシアンブルは西島秀俊さん(歳上すぎ?)、壇先生は妻夫木くんかなぁ、と思うのですが、読了したみなさん、いかがでしょう?

    • まことさん
      naonaonao16gさん。こんばんは!

      naonaonao16gさんと、伊坂さんのお話をしたことが、一度もなかったですよね。
      私も、伊...
      naonaonao16gさん。こんばんは!

      naonaonao16gさんと、伊坂さんのお話をしたことが、一度もなかったですよね。
      私も、伊坂さんが、オーデュボンの祈りで、みせてくださった、正義感にやられて以来のファンです。
      確かに初期作品は分かりやすい悪が中心でしたね。
      だから、私は、最近の伊坂さんより、いまだに初期作品を愛してやまないのだとわかりました。
      なんといっても、一番好きをマリアビートルにしているくらいだし。(王子の悪は最悪キャラでしたよね)
      映画の配役は、最近読書ばかりで、映画どころかテレビすら、観られなくなり、はっきり言ってわからない
      2021/10/31
    • まことさん
      途中で、切れてしまったので、続きです。
      のですが、妻夫木くんが、もう先生役の歳になっているのですね。よくわからないのですが、妻夫木くんに、一...
      途中で、切れてしまったので、続きです。
      のですが、妻夫木くんが、もう先生役の歳になっているのですね。よくわからないのですが、妻夫木くんに、一票です。
      あまり、お話になっていませんが、また、伊坂さんのお話ができれば嬉しいです。♪
      2021/10/31
    • naonaonao16gさん
      まことさん

      こんばんは!
      コメントありがとうございます^^

      わたしも思ってました、まことさん、伊坂さんお好きですよね!
      オーデュボンの祈...
      まことさん

      こんばんは!
      コメントありがとうございます^^

      わたしも思ってました、まことさん、伊坂さんお好きですよね!
      オーデュボンの祈り、あれは衝撃でした。桜(⤴︎︎︎イントネーション注意 笑)との出会い、運命だと思います(笑)
      王子は最悪ですが、深い存在ですよね。

      気になって調べてみたのですが、妻夫木くん、40歳でした…もう檀先生より全然歳上!(笑)びっくりです!

      また是非話しましょう!
      過去作品読み返してみたくなりました…!
      2021/10/31
  • 他人の飛沫感染からその他人の未来を見る「先行上映」という能力者と小説から出てきた猫をいじめるものを対峙する二人組とでテロを止めるという奇想天外なストーリーに驚かせれました。

  • まだ「逆ソクラテス」が図書館の順番が来なくて、こんなに出遅れている時点で伊坂さんのファン失格だ。
    というか「ファンなら買え」か…
    そういえば、伊坂さんの本は、なぜか単行本を一冊も持っていない…。いつでも出迎えてくれるような安心感があるのよね、だからがつがつ新刊で読まなくても大丈夫!…とよくわからない言い訳してみる。

    しかし、この本はどういうわけか、オーディブルの新刊で見て、「すぐ聴きたい!」と思った。

    まことさんやnaonaonao16gさんのレビュー読んだからか?
    乗り遅れてはいけない気がしてぽちっとする。

    しかし、いきなり「登場人物表」を読み上げられる。そういえばnaonaonao16gさんのレビューに書いてあったな…。
    にわかに不安になる。「登場人物表作らねばならないほど登場人物が多いのか?ただでさえ人の名前を覚えられない僕が耳だけでストーリーについていけるのか?」と。

    しかし、それは無用な心配だった。登場人物の名前を覚えやすくなる仕掛けがあるし、上手な文章は聴くだけですいすい頭に入っていく。

    伊坂さんの文章のわかりやすさ、素晴らしさを朗読を聴くことで改めて思い知りました。

    さて、この作品において、ニーチェの「永遠回帰」という思想が1つのテーマとなっている。
    経験が一回限り繰り返されるという世界観ではなく、超人的な意思によってある瞬間とまったく同じ瞬間を次々に、永劫的に繰り返すことを確立するという思想。

    人生、どうあがいても、同じことの繰り返し…ってうんざりする考え方ですよね。
    でも、この作品ではそこに伊坂風解釈を加え、自分らしく生きていくことの重要性を説いていると僕は解釈しました。生きていく力をもらいました。

    伊坂作品の一貫したテーマである、「何が善で何が悪か」は相変わらずひねりが効いていて、だからこそ考えさせられるのだけど、最後は落ち着くところに落ち着いた。

    そして、作中に登場するThe Beatles の「A Day In The Life」は僕が人生で出会った中で最も好きな曲だ。初めて聴いた時、間奏とラストのオーケストラの不協和音に「この不穏で調和のなさこそ人生だ!」と、当時中二の僕は悟った(つもりになった)のを思い出した。

  • 伊坂さんの本を読むと、いつもニヤニヤしてしまう。
    今回もとても楽しかった。
    途中で二つの話が繋がって、きたきたこの感じ!と喜んだけど、はたと気づいた。あれ、片方は現実の話じゃなかったよな、小説だったよな?と。
    頭の中が混乱するのもまた面白かった。

    緑デミオが一瞬登場!
    ロシアンブルとアメショーにも、またどこか他の作品で会えるかな?

  • 他人の視点による未来をわずかかばかり体験する”先行上映”の特殊能力を持つ壇先生が巻き込まれたテロ被害者達の暴走計画とネコジゴハンター(なんだそれ?)の物語。

    最近現実世界でもよく感じる割とマジな「その計画って自分達だけでやって欲しい」のやるせなさの中に、そんなものはどこ吹く風で、唯一的な目的を備えた復讐劇を遂行していくちょっととぼけたネコジゴハンター達を混ぜ込む伊坂節。
    こんなにも辛い人生の意味とは、復讐の無意味さ、人生に光をもたらすたった一つの幸福とはについてモヤモヤといろいろ考えてしまう。

    ライトなタッチで考えさせるシリアスな問題という”らしさ”は健在なのだが、布藤さんはどうなったとか、部長にオチはないのかとか、どこか締めがゆるーく感じてしまった。
    ”辞書を盗みに行く話”とか”2階から春が落ちてくる話"とか"演説するギャングの話"とかがどうにも懐かしくなってしまう今日この頃。

  • 中学教師の壇は、生徒から自作の小説を渡される。
    小説の中では〈ネコジゴハンター〉のふたり組がえがかれていて……。

    ある信念をもって、暴力的に職務を遂行する。
    アメショーとロシアンブルが、いかにも筆者らしいキャラクターで、魅力的。
    ふたりの掛け合いが、たのしかった。

    メタ視点あり、ニーチェ論あり。

    アメショーとロシアンブルが強烈で、壇と〈サークル〉の話の方は、やや影が薄かった。

  • 飛沫感染で他人の未来が少しだけ判る「先行上映」という能力を持つ中学国語教師の壇。この能力で教え子の危機を救った事がきっかけとなり、ある事件に巻き込まれていく。間に挟まる別の生徒が書いた猫虐待扇動者を懲らしめていくネコジゴハンターの二人の小説が伊坂節全開で楽しい。この小説と現実が混ざりあっていくのでファンタジーか?時々登場人物が読者の存在をちらつかせてくるし、と思っていたらきちんと折り合いがついたのは流石。ニーチェの「永劫回帰」を咀嚼した上での壇先生の未来への踏み出し方が暗い方向じゃなくて良かった。ニーチェ先生、昔ツァラトゥストラ挑戦して挫折したけど再読したら少しは理解出来るかなぁ。シアンとアメショー、別の作品でも登場するかな?

  • 伊坂ワールド全開。

    中学教師・檀先生の特殊能力に生徒が書いた小説がリンクしながら物語が進行していく。

    小説の中の二人組のキャラが絶妙すぎて面白い。
    …で、現実なのかなんなのか。

    未来を覗き、現在を調整しながら人の気持ちを前向きにさせていく。

    長編なのにネゴジゴハンダーの活躍をもっと、と所望してしまった。

  • 面白楽しく読み終わりました♪
    まさに「伊坂幸太郎氏はかく語りき」でございます。残念ながらこれを機会にニーチェを勉強するまでには至りませんでしたけど笑
    肩凝りもほぐれるようなユーモアと冗談がいつも通りにふんだんで、コビット19の最中だから拝借した感染方法もちゃんと塗してありますし!
    猫虐待への必殺仕置き人のコンビ ロシアンブルー氏とアメリカンショートヘア氏の行方が気にはなりますけど...

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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