川のある街

  • 朝日新聞出版 (2024年2月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (232ページ) / ISBN・EAN: 9784022519610

作品紹介・あらすじ

はか なく移りゆく濃密な生の営み。人生の三つの〈時間〉を川の流れる三つの〈場所〉から描く、生きとし生けるものを温かく包みこむ慈愛の物語。  * * *ひとが暮らすところには、いつも川が流れている。両親の離婚によって母親の実家近くに暮らしはじめた望子。そのマンションの部屋からは郊外を流れる大きな川が見える。父親との面会、新しくできた友達。望子の目に映る景色と彼女の成長を活写した「川のある街」。河口近くの市街地を根城とするカラスたち、結婚相手の家族に会うため北陸の地方都市にやってきた麻美、出産を控える三人の妊婦……。閑散とした街に住まうひとびとの地縁と鳥たちの生態を同じ地平で描く「川のある街 Ⅱ」。四十年以上も前に運河の張りめぐらされたヨーロッパの街に移住した芙美子。認知症が進行するなか鮮やかに思い出されるのは、今は亡き愛する希子との生活だ。水の都を舞台に、薄れ、霞み、消えゆく記憶のありようをとらえた「川のある街 Ⅲ」。〈場所〉と〈時間〉と〈生〉を描いた三編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 淡々とした静かなお話

  • ゆっくりとした時間を感じるような…そんな気持ちになる短編3話。

    〈川のある街〉
    両親の離婚で母親の実家の近くに暮らし始めた望子の8歳の目に映るもの。
    望子ってこんなにもたくさんの人の言葉を感じているんだという驚き。

    〈川のある街 Ⅱ〉
    カラスが主人公か?と思って読み始めるも…
    結婚相手の家族に会うために地方都市にやってきた麻美だが、彼女が最初に友だちになった女の子の母親は入院していて、そこには…彼氏の姉も。
    ゆるゆると繋がっていく、これも縁。

    〈川のある街 Ⅲ〉
    ヨーロッパに移住した芙美子はパートナーを亡くしてから少し認知症気味で、様子を見にきた姪。
    どんなに記憶が曖昧になっても40年以上も住めば、今更何処へ…となるのだろう。


    人がその街で生きている。
    その街が好きだから…というよりも自然と馴染んできたような、だから息吹を感じ川の流れを感じている。
    慈愛を感じる物語。


  • 江國香織さんの文章は、なぜだか情景が自然と目に浮かぶ感じがします。今回は川のある街に住む三世代の人の物語でした。

    『川のある街』は、お相撲好きの小学生の女の子の目線から大人や友達のことなどを見た物語でした。離婚した両親のことが大好きで、大人が思うよりも色々なことを考えて過ごしている女の子の日々が、流れるような感じで書かれていました。なにかが起きるわけではないけれど、彼女の家のそばを流れる川のように、日常が紡がれる文章に心地よさを感じました。

    『川のある街Ⅱ』は、カラス目線からの始まりで驚きました。カラスの生態と同時に、田舎の街での人の縁の強さも書かれていました。同じ場所で違う生物がいろんなことを考えて生きているという、当たり前のことに気づかされました。

    『川のある街Ⅲ』は、異国の地で暮らす老いた女性目線の物語でした。同性婚をしたパートナーを亡くし、自らは認知症を患っているようでした。世の中の流れについていくことは諦めつつも、自分の周囲の人のことは理解しようとしていました。鮮明に思い出すのはパートナーのことや昔のこと。心配する知り合いや姪に気を遣いつつも、すぐに忘れてしまうことが多く、なのにあれやこれや考えて、気づくとまた忘れていることが増えていました。時の流れと共に何もかも流されていってしまう、そんなことが表現されていたように感じました。

  • カラスの気持ちを知るのは初めての体験でした。

    ミステリアスに包まれたストーリーで私には少し難しいおはなしでした。

  • 川のある街、3世代それぞれの3つの物語。

    読む年代で、この3つのお話は微妙にとらえ方が違うのだろうな、この歳になって感じれることをうれしく思う。
    読後にじっくりとカラスを見て、なんだか納得してしまう(笑)

    Ⅲのような余生をと思う。なかなかに人生はうまく運ばないとしても、自由でいたい。

  • 川を人生に例えることは多い。日本は国土の割に川が多い国だと思う。日本人の生活の身近に川があることは多いのだろうな、川に人生の何かを見いだしやすい気がする。本書は江國香織が「川のある街」というテーマで3篇の物語を描いたもの。

    川のある街 Ⅰ… 小学生の女の子の視点で語られる日々の営み。どうやら両親は離婚していて、母や母方の祖母や母の姉妹が近くにいる環境で暮らしている。時折父親と面会をする。本人は至って健やか。近くにはキラキラと水面が光る川が流れている。

    川のある街 Ⅱ… ある地方の田舎街。親戚付き合い、ご近所付き合いが濃い。地縁というものがあり、その土地を通じて、その街にいても今はいなくても、強いつながりで人々はつながり続けている。土地を離れようとしている人たちも、婚姻で新しくファミリーに迎え入れられようとする人たちも、等しく地縁に取り込まれている。そんな大地に根ざす人々の営みには我関せずと、その土地で暮らすカラスたちにも生活がある…。そう、この話では、カラス視点の展開がある。ユニーク。

    川のある街 Ⅲ… オランダの街に住む日本人の老女の話。叔母は、同性愛者だった。日本では生きづらいと、パートナーの女性とともに日本を発ち、以来何十年とそのオランダの街で暮らしてきた。もう旧友もパートナーも、皆亡くなってしまった…。認知症の気配がある叔母を、姪が訪ねる。叔母の矜持と人生を垣間見る。

    私は3つ目のお話が一番好き。高齢化により親しい人がいなくなってゆく孤独感と、認知症により自分を少しずつ失いゆく怖さと、それでも自分を失わなわず自分を傷つけずにシャンとしたいと思う矜持と。気持ちの揺れがリアルに思えた。年を取った先にもまだまだ試練があるのが人生なのでしょう。そのときの自分の保ち方に、これまでの生き方が全て投影されるような気がした。人生の答え合わせの結果がそこに。

    川は、懐が深い。何もかもを受け入れてくれるようなスケールがあるように思う。大河、という言葉があるように、人の一生よりもはるかに大きな時間の流れをまとっているような。川のある街に住んでいると安心する。川のあるところは常に、見上げた先の空も広いしね。人間ひとりの日々の生活や人生の小ささや大きさを、ズームインやズームアウトするように感じた3篇の話だった。

  • 川のある街での3つの日常
    1.別居した父と会う小学生。子供と大人で時間の流れが違う。
    2.入院中妊婦。大人の迷子。
    3.オランダ。席を譲ろうとして老人に酷い事言われたら腹立つが…。主役は認知症老人。

  • 川のある街には物語がある。いろいろな視点から描く三つの物語、II のカラスの視点はなかなか面白く読めました。人生の教訓が三つの物語に生かされている。あなた読んで共感して下さい。

  • 両親の離婚により母親の実家近くに住むようになった8才の少女の日常と大人達への視点。
    カラス達の生き方に重ねる様に地方都市でのしがらみを描いた第2章。
    フランスで1人暮らす認知気味の女性の不安さ際どさを描いた第3章。
    舞台の街は異なるが、いずれも川が象徴的な役割をしている。川の流れが人生の様で切ない。

  • ⅠとⅢ は良かった。特にⅢは 認知機能 衰えるとこうなんだろうなって まるで本人のような リアル感ある内容。面白かった
    Ⅱ は 読んでいても 中々 進まない印象。
    カラス達の描写は興味深かったけど 江國さんワールドなのかな

  • 人はなぜ川の流れに心惹かれるのだろうか。
    悲しい時、寂しい時、元気がない時、ぼーっと川の流れを眺めていると心の中にある灰色のもやもやがいつの間にか流されていくからだろうか。
    ままならない毎日の中で持て余す自分の心を、川に流れが優しく慰撫してくれる。少女の、これから新しい命を生み出す女性たちの、そして薄れていく過去の記憶の中で今を生きる女性の。あ、カラスもいたわ。
    水の流れに時間を重ねて、人は歴史を紡いできた。流れていった時間は戻らない。今、そこにある水が永遠にとどまることもない。だけど、いや、だから、人は川の流れを求めるのだろうか。
    刹那の愛しさを描いた三編が、とげとげした心を優しく包み込んでくれる。

  • *川のある街*
    小学生の望子目線で描かれているのが新鮮でした。江國香織さんの作品は大人の女性目線で語られていることが多い印象だったので。望子とおばちゃんとりっちゃんと母親との関係がなんだかよかったです。
    *川のある街II*
    まさかのカラスの視点から始まるとは思ってもみませんでした。これまた新鮮。カラスの生態とか感情とかわからないけれど、これを読んでいるとカラスって本当にこんなこと思ったりしながら生きてるのかもなぁと思いました。
    地縁って、良いのか悪いのか。この人とこの人がここで繋がっているのか、と物語として読むとおもしろいけど、現実ではちょっと引くかも。私が田舎生まれ田舎育ちだからかもしれないけど。
    *川のある街III*
    舞台はフランスだと勝手に想像。私の祖母は認知症だったので、読みながら祖母も内心ではこんな風に思っていたのかなと想像しながら読みました。
    周りの人たちも不安だし、何より忘れてたじゃなくて覚えていないという本人が一番不安なんだろうと思う。読みながら少しこわくなりました。

  • 250324*読了
    江國さんのうつくしいことばたちにひたる幸福を噛み締める。
    この小説からなにを受け取ったか。
    それはすべらかな小石のような、とっておき。
    小学生も、大人も、鳥も、老人も。
    だれものなんてことのない日々、本人にとってはそれぞれが重要でかけがえのない時間でありながら、本人にとっても特別ではないとき。
    そのすばらしさ、愛おしさを思う。
    わたしにとってもそうで、当たり前のように思える毎日がどれだけ慈しみ深いものか、いつも江國さんの小説に教えていただく。
    人生のその年齢ならではの思考を江國さんはなめらかに、健やかに描かれる。なんとも見事だと思う。

    川はどこにでもある。生まれ育った街にも、今住んでる街にも。馴染み深い川。
    当然のようにそこにある景色から離れたとき、わたしは思い出す。何度でも。その川を、渡る自分を。

  • 穏やかな文の運びでとてもいい感じです。
    3篇がそれぞれによかったです。
    カラスって頭がいいんだからと子供の時から思っていたけれど、ここに登場するカラスはきっとほんとにそう思っているかも。
    最後の川のある街は、身につまされる‥‥思いかな・・‥

    そういえば子供のころに近所の川で、魚を捕まえたり、水遊びをしてたこと思いだしました。その川は今はなくなってしまった、潟(湖)につながっていました。

  • カラスの心情がリアルで面白かった
    面白可笑しいストーリーではなく、心の内側を丁寧に優しく描いてくれる江國さん

  • 川をキーワードにした3篇を収録した短篇集。タイトル以外はまったく別の作品で、登場人物や場所も異なる。
    1篇目は親が離婚した小学3年生の少女を主人公にした作品で、川のある街に住む少女の目から見た世界が綴られていく。2篇目はカラスが主人公(?)の話で、川はあまり存在感がなかったような……? 3篇目はパートナーと海外に移住した女性の話。パートナーが早世した後もその地で暮らし続けているが、現在は認知症を患っている彼女の世界が描かれる。
    うーん、よく言えば味わい深い、悪く言えばなんなんこれ? な本だった。まったく合わなかった。

  • 川のある街を舞台にした3つの物語。
    江國さんの透明感あふれる文章がやっぱり大好きで、心地よくて。

    小学生の子供、カラス、老年の女性
    全ての心の動きや思いがリアルで、心にぐっと響きます。

    特に子供の心、ことばを表現するのが秀逸。
    読みながら、私も子供の頃こんなことにドキドキワクワクしたな、こんなことで不思議に思ったりしたな、こんなふうに遊んだりこんなふうにお友達とおしゃべりしたなと思い出し共感します。
    そして、認知症の進行する女性の気持ちにもせつなくなります。

    「望子はおばちゃんに、『どんどん寄り道をしておいで』と言われている。
    『宿題は夜にだってできるけど、外で遊ぶことは夜にはできないんだから』と。」
    小学生の頃の寄り道、知らない道、そのドキドキ感、お稽古の時間忘れて遠くまで遊びに行っちゃったこと、今もその景色が目の前に浮かぶくらい。
    そんなことが大切なことだったと大人になって気づきます。

  • NHKのチコちゃんに出てくる江戸川のカラスも、カラスのイメージを良くしたけど、この本に登場するカラスも、それぞれが個性的ですね。

    日本の川には確かにカラスのイメージがあるけど、ヨーロッパの川にはいないのかな

  • 川のある街で暮らす望子は時々お父さんとお出かけするけれど、決してお父さんは望子のお家には入らない。ニ話目は、川沿いに住むカラス達も加わる。俯瞰で見るカラスの世界と、地面でしか生きられない人間の生活。最後の話は外国に住む年老いた叔母の所へ姪が日本から訪ねてくる。時々不鮮明になる自分を受け入れていくフミおばさん。どの話もすっと受け入れられた。

  • とりとめもない中編が3話。
    読みやすいけど、
    ここで終わるの?!
    って感じ。
    ふわふわした感じで
    3篇目は読むのをやめました。

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著者プロフィール

江國 香織(えくに・かおり):1964年東京生まれ。1992年『きらきらひかる』で紫式部文学賞、2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、04年『号泣する準備はできていた』で直木賞、07年『がらくた』で島清恋愛文学賞、10年『真昼なのに昏い部屋』で中央公論文学賞、12年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、15年『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』で谷崎潤一郎賞など数々の文学賞を受賞。他の小説作品に『つめたいよるに』『神様のボート』『東京タワー』『抱擁、あるいはライスには塩を』『彼女たちの場合は』『去年の雪』『ひとりでカラカサさしてゆく』『シェニール織とか黄肉のメロンとか』『川のある街』など多数。『絵本を抱えて部屋のすみへ』『いくつもの週末』『雨はコーラをのめない』『旅ドロップ』などのエッセイ集や詩集・童話・翻訳など多彩なジャンルで活躍。 

「2024年 『読んでばっか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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