地下鉄サリン事件はなぜ防げなかったのか 元警察庁刑事局長 30年後の証言
- 朝日新聞出版 (2025年2月7日発売)
本棚登録 : 260人
感想 : 24件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (328ページ) / ISBN・EAN: 9784022520319
作品紹介・あらすじ
死者14人、負傷者6千人以上を出した未曾有のテロ「地下鉄サリン事件」が起きてから2025年3月で30年が経つ。捜査の最終意思決定者が当時の資料やメモをもとに初めて証言。オウムとサリンの関係を掴みながらも、なぜ警察は事件を防げなかったのか。捜査の全内幕を語る。◆目次◆巻頭言はじめに── 聞き取りの枠組みと手法第1章 松本サリン事件第2章 対オウム作戦の立案第3章 事件の続発と態勢構築第4章 地下鉄サリン事件第5章 教団拠点の大捜索第6章 國松長官狙撃事件第7章 麻原逮捕およびその後第8章 オウム事件全体の評価①第9章 オウム事件全体の評価②垣見隆とオウム捜査──ある警察官僚の出処進退垣見証言の意義終わらない事件と本書の位置──後記にかえて
みんなの感想まとめ
未曾有のテロ、地下鉄サリン事件の背後にある警察の捜査の実態と、その責任を問う内容が描かれています。著者は、事件当時の警察庁刑事局長であった垣見氏へのインタビューを通じて、オウム真理教の暴走を防げなかっ...
感想・レビュー・書評
-
村上春樹「アンダーグラウンド」「約束された場所で」は刊行直後に読んで印象に残っている。「約束された場所で」はなぜオウム心理教を深く信じてしまった人たちがいたのかという疑問に信者の心の面から迫ったインタビューだったが、本書はオウム事件の捜査に当たった警察組織の責任者として、なぜオウムの暴走を防ぐことができなかったのかという視点でのインタビューだった。
たらればにしかならないが、全国各地で前兆となるような事件がいくつも起きていたのに、それだけでは事件化できないと各県警察が及び腰の対応であったことに歯痒さを感じた。もっと早くオウムに対して踏み込んだ対応をしてくれていれば多数の犠牲者が出ることはなかった。
それにしても最近は統一教会問題でよく目にする江川紹子さん、改めてすごいジャーナリストだったんだな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
オウム真理教とは何だったのか、彼らはなぜ暴走したのか、という謎に加えて、かほどに狼藉を尽くしていた教団による最悪の凶行=地下鉄サリン事件をなぜ防ぐことができなかったのか、という問いは残り続けている。本書は後者に光を当て、将来的に長官就任を嘱望されていた警察庁刑事局のトップであった垣見氏へのインタビューを記録・整理したものである。
この種の事件を回顧する場合、後知恵バイアスを免れるのは難しい。被害の範囲や程度が大きかったから尚更である。しかし、その汚染を恐れず、「警察捜査の分岐点」のようなものを強いて挙げるとすれば、やはり本書で挙げられていた点に収斂していくのだろう。つまり、宗教法人に対する慎重さや遠慮(前例踏襲は未知の対象との相性が悪い)、都道府県をまたがる広域の捜査を統括し指揮する組織や根拠の不在、オウムによる最初の凶悪犯罪である坂本弁護士一家殺害事件を神奈川県警が早期に解決できなかったこと、などである。
私はまた、立場上全体を不完全ながらも掌握する立場にあった、この垣見氏という人物のキャラクターも影響したのだろう、という感触を抱いた。つまり、熱血型というよりは慎重でディフェンシブな、いわゆる典型的とされる官僚のスタイルである。安定した平時であれば何の問題もなかったであろう。しかし有事においては、自らのキャリアより天下国家の救済を大とする激情型、国士型のほうが力を発揮してくれるものだ。その代表例だと私が考える佐々淳行氏が、かなり年次の離れていた同氏を(ある意味必要以上に)批判したのは、つまるところそういう意味だったのだろう。しかし佐々淳行のような人は常に少数派である。これを垣見氏の罪とするのは酷であろう。本書編集者たちの隠れたメッセージのひとつはここにあると読み取った。
-
佐賀大学附属図書館OPACはこちら↓
https://opac.lib.saga-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BD11328350 -
地下鉄サリン事件当時の警察庁刑事局長であった垣見隆氏を囲んだ聞き取りの記録。
本来ならば他の客観的な資料等とつき合わせるべきだが、生の記録を残すことを優先して、やってないと言う。それはそれで価値があるんだろうが、本にするのと資料を残すのは別じゃないかとは感じた。
質問があって、それに垣見氏が回答するという、乾いた感じで展開する。
証言を引き出すと言うより尋問してる感じなのは、生で残すと言う目的のためかもしれない。
あくまで垣見氏の個人的な記録であるし、ようわからんが、この人、干されたんか。
そう言うのも本文読んでる間は全くわからず、聞き取りした編者がまとめて後半にページを各々持っていてそこで初めてそうなんかとわかるのだが、まあ、読みづらい。
書いてる編者によって、論旨が違うから。
後からだったら何でも言えるよなあ、当事者じゃないしと感じた。
垣見氏中心にするか、編者さんの、意見を前面に出した編集にするか、どっちかで良かったんじゃないのかな。 -
最後は「わからない」で締めくくられているけど、麻原が考えていたことを理解できる人間はいないだろうから、神格化に結びつけるようなのはやめた方がいいのでは。
-
あとからなら何とでも……あの時こうしていれば防げたのではないか、組織のこの部分が予防の妨げとなったのではないか、と言える。警察組織の縦割りである部分は、平時において有効でも未曾有の事態に耐えきれなかったことがよく分かるが、さりとて、大きな組織が分業を欠いて回るわけもなく、なんとも難しい気持ちで読んだ。余談だが、まーた神奈川県警は……と思ってしまうフシもあった。
-
いつも利用している図書館の新着本リストで目についたので手に取った本です。
本書は、「地下鉄サリン事件」事件に係る様々なシーンごとに、事件発生当時の警察庁刑事局長だった垣見隆さんによる数々の証言を書き起こした著作です
注目する視点を変えると、さまざまな論点が掘り起こされる興味深い1冊ですね。 -
期待していた内容と違い、少し残念。地下鉄サリン事件、オウムのこと警察の動きが理解できた
-
未曽有のテロである地下鉄サリン事件から30年が経過した中にあって、オウム真理教関係事件の捜査の中心にいた当時の警察庁刑事局長であった垣見隆氏が、松本サリン事件、地下鉄サリン事件、警察庁長官狙撃事件などの一連の事件への警察の捜査の状況や課題について、当時の資料やメモも踏まえ、詳細に証言した一種のオーラルヒストリー。その中で、警察はオウム真理教とサリンの関係を事前につかんでいたにもかかわらず、なぜ地下鉄サリン事件を防ぐことができなかったのかという点についても迫っている。
本書は、社会に大きな影響を与えたオウム真理教関係事件の捜査の「当事者中の当事者」である当時の警察庁刑事局長が、警察はオウム真理教にいかに対峙したのか、どこに課題があったのかなどについて詳細に語った貴重な現代史の史料といえるものである。都道府県警察間の連携とそれへの警察庁の関与の在り方、刑事警察・公安警察といった部門間の連携の在り方、情報の保秘の在り方など、今後の教訓ともなる当時の課題もだいぶ浮き彫りになったように思う。
ただ、それでも奥歯に物が挟まったような言い方に感じる部分もあり、他の関係者の証言等とも突き合わせての更なる検証が期待されるところである。 -
東2法経図・6F開架:326.23A/Ka25c//K
-
オウム操作の最高責任者であった垣見隆のオーラルヒストリー。本文に名前は記載されていないが、4名が参加している。
本書のタイトルに明瞭な解答がされるわけではないが、不明瞭だからこそ本書のような内容になったともいえる。要因は、警察の機構、文化、メディア、信仰の自由への配慮、さまざまである。垣見は國松長官狙撃事件以後に更迭、失脚するのだが、これも事件対応だけでなく警察内での軋轢があったようである。
内部のごたごたはとにかく、対応に関しては非常に評価がむずかしいようである。少なくとも垣見個人の責任に帰せるようなものではないだろう。
警察機構は、トップダウンといえばトップダウンなのだが、指示系統の仕組みは一概にそうともいえないようである。(警察庁が都道府県警察に具体的な指示を出すことはない)縦割りでもあり横の連携も弱い。
そのような警察機構が、麻原を指示系統の絶対的な頂点とし、スムーズかつ縦横無尽に行動へ移せる組織形態との戦いは、始めから後手にまわることが定められていたように思う。 -
第7章までは当時の判断に至った経緯を話されていて面白かったが、それ以降の総括が「なぜこれができなかったのか」的なインタビューに終止し、ちょっと読みづらくて斜め読みしてしまった。極端なタラレバになってしまっているように感じた。
当時のオウムに手を入れる決め手がない状態での対応は本当に難しかったのだと思う。どんなことでも、前例がないことをするのは大変だ。
