人よ、花よ、下

  • 朝日新聞出版 (2025年4月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784022520463

作品紹介・あらすじ

楠木正行は、南朝に与する楠木党の強さを誇示することで北朝の厭戦気分を高めたところで、和議を進める策をとる。正行の指揮のもと、北朝に降ることを前提とした戦に勝ち続け、和議への道が目前に迫る中、事態は思わぬ方向に傾きはじめ……。

感想・レビュー・書評

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  • 楠木正成の息子楠木正行の物語も、いよいよ下巻。
    正成の息子という冠をつけるのもどうかと思うほどの正行の成長に、行く末を見守りながら、下巻を読み進めた。
    思えば、天皇が二人存在し、天皇同士の思惑以上に、それを利用する者、振り回される者、祭り上げられる者、大きなうねりの中で、まだ20代前半の若者が、似たような状況下にあった親の思いを理解しつつ、なんとか信念を達成しようとする行動力に胸を打たれた。正直、南北朝時代はあまり分かっていない中で読んだこともあり、当時の状況を知るだけでも十分堪能できる作品とも言えた。
    なお、これは物語外ではあるが、このあとの「直義」vs「高師直・師泰」、「直義」vs「尊氏」も、面白そう。いつか描いて欲しい・・。 ★4.0

  • ぬぉーーん!。゚(゚´Д`゚)゚。

    傑作やないか!
    またもや大傑作やないか!
    大の尻の作やないか!(けつが違う字!)

    時代に翻弄されつつも、己が信念を貫いた楠木正行の物語は、涙、涙のうちに幕を閉じたのです

    いやー、そもそもよ楠木正行ってばとんでもないヒーローなのよ
    南北朝時代ってのは鎌倉幕府を滅ぼした足利尊氏と後醍醐天皇がごちゃごちゃっとなって北と南にそれぞれに朝廷が出来上がった時代なんだけど、その後の歴史が示すようにそもそも北朝(足利陣営)が優勢なのよ
    楠木正行のいる南朝はだめだめ
    その大劣勢な南朝の中で一矢も二矢も三矢も報いた楠木正行です
    日本人は判官贔屓だからね基本、そりゃあもう楠木正行なんか大好きで様々な逸話や伝説が残ってるわけです

    それらをうま〜く取り込みながら、新たな楠木正行像を描きつつ、さらに結末が分かってる中でこの大感動の物語を仕立てる

    やだもう天才なの?そうなの?

    これからも今村翔吾さんを追い続けます!

    と、宣言するのはいいんだけど、今村翔吾さんにも欠点はある!
    それはね、わいよりだいぶ歳下ってことなんよ!
    普通に行ったらわいのが先死んじゃうな〜

    なんか悲しくなってきた。゚(゚´Д`゚)゚。

    • 1Q84O1さん
      確かに、髙田さんの『みをつくし料理帖』はいいですよね。゚(゚´Д`゚)゚。
      確かに、髙田さんの『みをつくし料理帖』はいいですよね。゚(゚´Д`゚)゚。
      2025/06/04
    • ひまわりめろんさん
      一Qさん

      さらっとはしごだかを出してくるあたり格上感出してきたな( ̄ー ̄)ニヤリ
      一Qさん

      さらっとはしごだかを出してくるあたり格上感出してきたな( ̄ー ̄)ニヤリ
      2025/06/05
    • 1Q84O1さん
      はい!
      弟弟子に差を見せつけておかないといけませんからね( ̄ー ̄)ニヤリ
      はい!
      弟弟子に差を見せつけておかないといけませんからね( ̄ー ̄)ニヤリ
      2025/06/05
  • 下巻も全く飛ばさず読んで良かった。
    飛ばさずに読めた。

    上巻レビューでは「楠木正成を主人公にして書いてくれたら良かったのに」
    「もう今村翔吾氏作品も私は卒業かな」と書いてしまったけれど、下巻を読み進めたあたりで前言撤回。

    後鳥羽天皇は私は元から嫌い。
    そして本当のところは誰にもわからないのだけれど、少なくとも本書での「後村上帝」と「坊門親忠」は良く、「北畠親房」は嫌い。
    「親忠」(善)と「親房」(悪)の字面が似ていて少し困った。

    後村上帝暗殺未遂事件のシーンと、後日御所へ正行が行った時の後村上帝や坊門親忠のシーンも、脳内映像が凄まじかった。
    文字を読んでいるだけで、映画のようなシーン、ここ泣けちゃうシーンみたいなものが脳内に展開されて没頭した。

    坊門親忠の風体は、私の脳内では何故か万城目学氏の『パーマネント神喜劇』の表紙絵だった。

    モノクロだが、モノクロだからこそ、本書の章ごとの扉絵が上下巻全てにおいて、とても良かった。

    学習まんがを読んだことは、本書理解の助けにだいぶなった。
    学習まんがにおいては人物名は無かったが、楠木正成に対して、後醍醐天皇の座位をそう何度も移せるわけないからと言って正成の策を却下し、結果的に正成を死に追いやった公家が居た。
    その息子が本書での坊門親忠。

    本作品では高師直はかなりの好色ジジイ。
    学習まんがでは、もちろんそんなシーンは微塵も無かったが、そりゃそうだろう。
    学習まんがには書けないよね。

    今村翔吾氏作品、まだ卒業はしないかもだけれど、いかにせん長いのが辛い点は変わらない。

  • こういう結末になるとはわかっていても、何処かチーム楠木に期待してしまいました。まさかの天皇との友情?など、惹き込まれる要素が随所にあり、一気に読み終えてしまいました。
    素晴らしい作品です。

  • 少しずつ、歴史小説が好きになったのは、今村翔吾さんのおかげ。新聞連載は、登場人物が混乱するのに、この人の手にかかると常に人間関係が整理されて小説に没頭できる。
    歴史小説は登場人物の行く末がもうわかっているから心乱れてしまう。だから苦手だ。
    今村翔吾の小説は、行く末を知っていても、なおその人が存在した意味が深く心に刺さるから、読んでいて虚しさが無い。
    大した作家だと思う。

  • もっと歴史を勉強しておけばよかったと、今村作品を読むたびに思う。いつもながら、まっすぐで熱い想いが伝わってきた。日本史がそんなに得意ではない私でもその後どうなるのかくらいは予想がく。それでも違う結末が待っているような気がして、そう願いながら読み進めた。上下巻、あっという間の読書時間だった気がする。

  • あまり詳しくない南北朝時代の魅力が、よく描かれている。まだまだ深堀りの余地がありそうだ。
    最後の章が少し唐突に感じられたものの、怒涛の展開はさすがだった。

  • 下巻も表紙が美しい水彩画、そしてタイトルの筆文字が本当にマッチしてる…。
    図書館でお借りしたけど、持ってたいなと思ってしまった(笑)

    終章『人よ、花よ、』のワンシーンにある後村上帝の言葉が印象深いです。
    日ノ本に住んでる誰もが希望や光を持って暮らせる社会。
    混沌とした南北朝時代の中で、血を流しながらも戦い続けなければいけないのは誰も望んでいなくて。なのに戦わなければいけないもどかしい気持ち。
    さまざまな武士・武将が思いながら、もがき苦しみ生きていく。
    それを引き継ぎ、あるべき未来は今の私たちが望む世界につながっている気がする。

    正行が父・正成の戦術を攻略・カスタマイズし、いくつもの戦術をこなし、細川家などを潰す勢いの強さは、まさに鬼才。
    そして高師直が策士であり戦術家なのか、『女好き』とのギャップに驚かされましたが、最期の最期、楠木正行の花は朽ちてしまう儚さはなんとも形容しがたかった。

    こうして読み終え、改めて感じたこと。
    南北朝時代は江戸時代や近代、平安時代などと比べて、濃密でかつ混沌とした時代だったのだと。この時代は畿内という幅の狭い中での諍いでしか捉えなかったけど、本質となる部分を、今村さんが描いたことでより世界観が鮮明に見えた。彼らの思いに感情移入・その世界に浸れて良かったと思う物語でした。

  • 新聞連載にて読了(出版時に加筆修正される可能性あり)
    やっと書籍化されますね
    「楠木正行」を主人公に、またまた、その武将か!という作品

    序盤は母と、父である「正成」について語り合う展開
    展開が遅くやや読みにくいですが、当人が動き出してからは物語が加速していきます
    「極楽征夷大将軍」と読み比べると、裏表のようで面白いですね

  • 英傑と謳われる楠木正成の、嫡男・楠木多聞丸正行。
    時は南北朝時代。彼の波乱の生き様を綴る、長編歴史小説。
    第八章 妖退治 第九章 吉野騒乱  第十章 牢の血
    第十一章 蕾  第十二章 東条の風 終章 人よ、花よ

    南朝御所での騒動。
    “妖退治”で御所内に入った正行が知るのは、南朝の事情。
    そして出会った、坊門親忠と北畠親房、後村上帝。
    弁内侍を含めて、彼らとの語らいで知る、それぞれの事情。
    南朝への想い。それは前時代とは違う、親族でも違う。
    民を安じるための北朝との和議を求める者がいるのだ。
    一方で北朝側では、足利直義と高師直のしのぎ合いが。
    北朝を討ちます。それは戦を止めて和議を結ぶための戦。
    それは世に不可思議事也と轟かせた、戦。
    だが、人の一生とは判らぬもの。儘ならぬもの。親房!
    それでも、民を守るため、皆を生かすための戦に悔いは無い。
    そしてついに高師直の軍との決戦に。
    鈍器本並の長編な上下巻、一気読みでした。
    上巻での、正行周辺の個性豊かな人物たちが、
    戦では武将としてもキャラが立った姿。
    それぞれの個性で、それぞれの役割を全うする姿。
    殺し合う凄惨な場面なのに、潔く散る桜の花の如く。
    時が来れば咲き誇り、時が来れば散りにゆく、
    この場限りの生の疾走感の凛々しいこと!
    ラストは、大河ドラマ「真田丸」のクライマックスが
    脳内を過りました。
    物流と兵糧、兵法など、先々の事を見据えての正行の道程。
    大量に製造した槍を使う場面はありませんでしたが、
    のちに弟の楠木正儀が神南の戦いで槍を使用したという話が
    あるから、これも先々を見据えての布石なのかな?

  • 下巻に入り、物語は一気に加速。夢中でページをめくっていました。
    終盤、正成の志を継ぎ希望を捨てずに戦う正行と、彼を支え散っていく家臣たちの姿には深く胸を打たれました。
    上下巻共にボリュームはありますが、歴史小説好きにはたまらない1冊になるのではないでしょうか。

  • 上下巻あわせての感想

    主役に楠木正成ではなく、
    その息子・正行を持ってくるところが、相変わらず渋い

    今回も今村節全開の歴史ファンタジーで、
    「俺的には」大満足でした

    ここであえて「俺的には」と強調したのは、
    何よりこの作品、分厚い。何ページよ?

    しかも冒頭は語りから始まるため、
    それなりに歴史好きでないと、ちょっと厳しそう

    俺は最近、
    直木賞を受賞した『極楽征夷大将軍』を
    読んでいたこともあり、
    南北朝時代の雰囲気にすっと入れたから良かったけれど、
    歴史を知らない人にはハードルが高いかも。

    高師直と聞いてワクワクするくらいじゃないとね〜。

    『逃げ上手の若君』など、
    最近は南北朝がちょっとしたブーム?

    さて、物語に戻って感想。

    少年ジャンプ的な熱さもあり、
    後半に進むほどめちゃくちゃ面白くなってきます。

    特にラストの戦いは、
    作者も大好きな真田幸村を思わせるような展開で、
    胸熱です。

    歴史好き、今村翔吾ファン、大河ドラマ好きであるならば、
    超・超オススメの一冊です。

  • 読み終わった後、涙が止まらず。
    放心状態でした。

    深呼吸して落ち着くも、
    物語を思うとまた涙が出てきて。苦笑
    そしてまだレビューの書き出しなのに、
    すでに涙が。苦笑

    下巻では、
    父を死地に送った公家の息子である坊門親忠、
    朝廷を操る北畠親房、
    そして後村上天皇、
    南朝のなかで生きる人々に出会います。

    だんだん戦に引き摺り込まれていく展開に、
    胸が痛くて苦しくて。

    河内のことを大切に思う、
    大切な仲間や家族たちの平穏を守りたいと思う上巻の良いところが対比になって余計に。

    北村さゆりさんの挿画集、買ってよかったです。

    白雪が舞う中の姿や、
    お互いを知り大切な想いを交わした茅乃、
    朝廷内で身を挺して正行を助けようとした親忠、
    一人の人間として相対した後村上天皇。
    北畠親房と高師直の嫌な感じもさすがです。
    そして香黒が素敵すぎます。

    挿画集のあとがきで、
    戦争中に生まれてしまった第二世代を描きたかったと今村先生は仰られていて。

    自分たちより上の世代がすでに戦争していて、
    その最中に生まれた子どもたちは、
    理不尽でも否が応でも
    戦の中を生きねばならない。

    そんな中でも、彼らの日々にも若者ゆえのキラキラした日々もあっただろうと。
    正行のまわりに集まる人々は、
    みんな優しくて個性豊かであったかくて。

    父と同様に死地に向かう正行。
    愛する地に住まう人々、家族、みんなを守るために。
    そして最後まで一緒に行くと決めた仲間たち。

    この物語はどこで終えるんだろうと思っていましたが、そっか…そう終えるのか…、と。
    最後の挿画も見ると涙止まらず。

    いつか楠木正成、正行のゆかりの地を訪ねてみたいと思います。


    そして今、本書に刺激されて、
    以前今村先生がお勧めしていた「破軍の星(北方謙三)」を読んでいるのですが、本書の印象が強すぎて北畠親房に対して複雑な気持ちになってます。苦笑

  • たまらん。泣ける泣ける。偉大な父を持つがゆえに、その遺志を継ぐことを当然視された若者二人、楠木正行と後村上天皇。両者の魂の交流。二人が「生きたい」と心情を吐露するシーンで号泣。南朝の将として戦った正行が上巻で北朝に降ろうという考えを持っていることに「?」と思っていたが、下巻で「そういうことか!」と分かってまた号泣。結局歴史を動かした傑物とか歴史と抗った英雄を描くのではなく、歴史の中で己に押し付けられた重圧に耐えて、己の望む生き方を選んだ若者の姿を描いているんやな。上巻の自分の読みの浅はかさを反省。そしてまた本来正行にとっては憎い仇の子である坊門親忠の人物設定、泣ける。この人物もまた父親のなしたことを真摯に受けとめ自分の生き方を模索した人物。その分北畠親房の脂っこさが憎らしく感じるのだが、この人は逆に息子顕家に縛られて生きている、ある意味寂しくて哀しい人物なんやな。高師直の描き方も味があってよかった。やはり今村祥吾凄い!

  • 尽忠報国の鏡と言われている楠木正成の嫡男、楠木正行の物語。南北朝時代、偉大な父の遺志を継いで南朝の後村上帝のために戦うと誰もが思う中、「己の思うままに生きれば良い」と正成の残した言葉に支えられて正行は北朝との和議を模索する。親が子を想う愛情にも心打たれましたが、正行が「民衆の平和な生活を守るために最善であるように」と考えて、北朝との和議へと動く心に感動しました。正成の兵法をさらに深めて少数精鋭でも強い戦法を生み出していくのも興味深く、最後まで夢中で読みました。素晴らしい本です。

  • ゆっくりと読むはずが一気読みしてしまいました。
    面白い!
    上下巻900頁、一切中弛みすることなく引き込まれ続ける物語でした。
    今村翔吾さんの作品はほぼ読んでいますが最高傑作といっていい面白さでした。

  • 一気読みしてしまうわ。今村さんの描く正行はムチャクチャ魅力的。そして、私の頭の中では近藤正臣さんの北畠親房、くせ者やったねえ。とても面白かった。しかし、南北朝はこれで終わる訳でなく、まだ40年以上続くのが面白い

  • 図書館にて借りる、第752弾。
    (京都市図書館にて借りる、第218弾。)

    多聞丸との旅が終わった。
    南北朝時代を舞台した小説は、何冊か読んだが、やはり今村翔吾の描く時代小説は面白い。

    楠木党、吉野衆、南朝の公家と個性的で魅力的な人物達が読んでいる間中、死なないでくれ!と思いながら読んだのだから、楽しんだという、他ない。

    ラスト、高師直との対決でどうなるか分かっていても、多聞丸を応援してしまう。

    上下巻で分厚いが、読んで損なし。
    星は4つ。4.3くらいはある。

  • 楠木正成の子の正行を描く歴史小説。

    やはり室町時代は面白い。
    これまでの正行像をみごとにひっくり返しています。
    最後は史実通りになってしまうのですが、その遺志は弟の正儀に引き継がれていたとは、うまく結びました。
    本作の正行同様、親のしがらみから抜け出ようとした後村上天皇、坊門親忠がいい感じです。
    逆に子のしがらみから抜け出ることができない北畠親房とご存知の高師直が敵役としていい塩梅です。
    もちろん小楠公二十六将(全部ではないが)のキャラも立っていました。
    足利尊氏、直義兄弟があまり描かれていないのがちょっと残念かな。

  • 南北朝時代を楠木正行の視点で描かれた作品
    周辺を固める楠木党と吉野党の全員が最後を迎える際に輝きを放つ
    静かに熱い涙物の物語

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著者プロフィール

1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。’18年『童の神』が第160回直木賞候補に。’20年『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。同年『じんかん』が第163回直木賞候補に。’21年「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第六回吉川英治文庫賞を受賞。22年『塞王の楯』で第166回直木賞を受賞。他の著書に、「イクサガミ」シリーズ、「くらまし屋稼業」シリーズ、『ひゃっか! 全国高校生花いけバトル』『てらこや青義堂 師匠、走る』『幸村を討て』『蹴れ、彦五郎』『湖上の空』『茜唄』(上・下)などがある。

「2023年 『イクサガミ 地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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