きのね(柝の音)〈上〉

著者 : 宮尾登美子
  • 朝日新聞社 (1990年5月発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (377ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022561497

作品紹介

せつない嫉妬のほむらに身を灼く光乃。辛抱していればいつか花咲く日もくるかもしれない。女中として仕えながら、端麗この上ない歌舞伎役者、のちの十一代目松川玄十郎に寄せる献身と苦悶。

きのね(柝の音)〈上〉の感想・レビュー・書評

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  • きのね聞くとわくわくする、ね。
    女の執念て、怖い。

  • まずハードカバーの表紙が美しくて好き。
    時代云々もあるだろうけど、光乃さんのようなひたすら尽くす生き方はとても真似できない。

  • 歌舞伎役者の家に女中として奉公に上がり、雪雄付きの女中として働く光乃の生涯。

    上巻では光乃の幼少から、女中となって働き、戦争を乗り越えようとするくだりまで。

    歌舞伎というものに疎いので、最初は劇や裏方の描写が出てきてもぴんと来ず、登場人物のやりとりにもいまひとつ入り込めませんでしたが、宮尾さんはなんせ文がうまいので、つまらないということはありません。

    下巻でどう展開していくか気になるところで終わっているので、これから下巻に取り掛かります。

  • 決して豊かではない、いろいろな事情を抱えた家の女性が、偶然に導かれ、時に自らその道を選び、歌舞伎役者の妻となり亡くなるまでの物語。
    モデルは十代目市川団十郎夫人だそうだ。物語の中の名前はお光(団十郎は雪雄)。

    雪雄付きの女中であるお光は、雪雄の性分や病、戦争、疎開生活、自分の立場や身分に翻弄されて果てない苦労を重ねるのだが、雪雄への強い思いがそれを乗り越えさせる。
    やがて表には出られない身ながら、雪雄の子を身ごもり「一人で」長男を出産する。
    このあたりのいきさつや迫力は是非作品を読んでいただきたいと思う。必ず引き込まれてしまうことと思う。涙があふれて止まらない場面があるかもしれない。

    尽くす、献身、などという言葉はひらひらと空中に舞ってしまいそうなほど軽く、その命懸けなさまに引き込まれる。
    思うことを口にすることを常に逡巡しているお光だが、時に、一瞬にして大きく事を起こしてしまう場面がある。料亭の一人娘の正妻(後に離婚)をそそのかし家出させるくだりがそれだ。強かだとも言い切れず、その後も罪の意識に苛まれながら、雪雄に、純粋に、強い思いを抱き続けるお光に圧倒されてしまう。

    そして正妻の地位を得る。
    横暴な雪雄はあいかわらずなのだが、雪雄との間に静かな幸せを感じさせる場面も出てくる。そして何かの折りには、口を利かないというささやかな抵抗を見せるまでになったお光を微笑ましくも思う。ようやくに愛とその「形」を得た自信なのだろうか。
    (モデルとなった団十郎夫妻は、実際にも仲むつまじかったと聞く。)

    交わす言葉の少ない「空間」での心のやりとり…それも双方向同等ではない、女から男への一途過ぎる「やりとり」、ひたすら「お坊ちゃま」のよろしいようにと考え尽くし、思い巡らすことに終始するお光の姿は、一時の感情で、言ってはならない言葉など吐きつつ、言葉の喧嘩をしてしまう方々にもおすすめの本かもしれない。

    また、作者の甘美で、優雅な日本画を思わせる美しい形容の連続が楽しい。
    中でも雪雄とお光の身分違いを「雪と墨」と形容しているくだりは秀逸で、さすが宮尾登美子と思った。
    また、あまた登場する歌舞伎役者やお付きの者たちが話す江戸弁も魅力的だ。
    読後はしばらく余韻に浸っていたい気分になる本である。

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