作品紹介・あらすじ
国生み、三種の神器、出雲・日向、神武東征…。日本神話に秘められた古代史の真相に実地踏査と考古学の成果から迫る。
感想・レビュー・書評
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考古学の成果と、古事記・日本書紀の記述を俯瞰的に照らし合わせている良作。出土品の傾向と書かれていることを大まかに捉えて考察し、記紀の記述に大きな嘘がないということを論じている。石棺の形式や土器の編年を専門家的な詳細で述べていないのがよい。こういう照合はついつい専門用語と誰も知らない古地名で述べられがちになるのだが、そこは老練の考古学者、神武東征のルートが本当であったかどうかというよりもなぜそのルートなのかという意味的な論点で、考古学的成果と照らし合わせて大きな嘘がないと論じている。考古学は文献学と発掘成果を常に照らし合わせなければならないと、つくづく思わせられる。
著者プロフィール
考古学者。1928年大阪市生まれ、2013年没。同志社大学大学院文学研究科修士課程修了、元同志社大学名誉教授。旧制中学時代から橿原考古学研究所に出入りし、考古学と古代史の接点である古代学を専門とする。「地方の時代」や「古代ブーム」の推進者的存在で、学界最後の重鎮として知られた。2012年第22回南方熊楠賞を受賞。『日本神話の考古学』(朝日文庫)、『倭人伝を読みなおす』(ちくま新書)など著書多数。
「2022年 『敗者の古代史 「反逆者」から読みなおす』 で使われていた紹介文から引用しています。」
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