モンティニーの狼男爵

著者 : 佐藤亜紀
  • 朝日新聞社 (1995年7月発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022568786

モンティニーの狼男爵の感想・レビュー・書評

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  • 佐藤亜紀の小説を読むのは二冊目だが、以前読んだ時にも感じた緊張感を再び意識する。佐藤亜紀の書く文章には隙がない。きっちりと全てが企てられているという思いが読み始めた途端に沸き起こる。何一つ読み飛ばしてはいけない、どんな小さな出来事でも覚えておかなければならない、そういう類いの緊張感を強いられる。

    誰に言われた訳でもない使命感にも似た思い込みは、読み進めるに従って頭の片隅に徐々に宛先知らずの荷物を積み上げる。やがて片隅は埋まり脳の前の方にもその重さは圧し掛かってくる。両手一杯に抱えた荷物によって前方の視界は徐々にあやしくなる。

    ふらふらとしながら先に進むと、宛先知らずの荷物の一つ一つに届けられるべき先が見い出されてくる。ふと気が付くと抱え切れない程だと感じていた荷物の山はすっかりと片付く先を見い出し、手元には何一つ残っていない。

    比喩かと思っていた言葉たちは実態を得て物語の中で立ち上がる。その企みの巧みさに思わず肝が冷える。そして大団円。しかし果たして何が丸く収まったのか。視界を妨げていたモノたちは、何のことはない、ただ単に元の場所へ戻っただけであり、何一つ解決されたという確証は得られていないことに、手元の冷え冷えとした感覚と共に気付く。

    この一人語りの主は一体どのような姿形でこの物語を語っているのだろうか。その疑問は、実のところ、この物語を最後まで聞かされなければ意味を持ち得ない。それは読むのもが暗黙に設定してしまう与件によるのだけれど、もちろん、それを佐藤亜紀が気付かれないように忍び込ませているのでもあって、そのことに一つメタなレベルで気が付くと、この物語全体がまるで一本の細い糸によって吊り下げられていたことを発見する。そして自分がその危ういバランスの中をぐるぐるとしていたのだということに気付いて再び肝を冷やす。

    果たして、その糸が作家の手にする鋭い鋏によって、ぱちん、と断ち切られ、読む者が物語ともども奈落の底に向かって落ちつつあるのではなかったと言い切れるのか、という思いに背筋が寒くなる。物語に囚われるのは恐ろしい。

  • 第四作目の小説。こういう話は二度と書かないであろう、という点では、最も好きな本と言える。どなたでも安心して読めます。

  • モンティニー男爵夫妻の、友情の物語・・・とでも言ったらいいのでしょうか。やっと著者の世界に入っていけました。

  • 消極的かつ風変わりな主人公の設定と、語り手でもある未来の主人公の自信にあふれた話しぶりとの差がなかなか興味深いです。佐藤作品のなかでは読みやすい方かと。その時代の雰囲気が好みです。

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