サッカーと11の寓話

制作 : Camilo Jos´e Cela  野谷 文昭  星野 智幸 
  • 朝日新聞社
2.75
  • (1)
  • (0)
  • (4)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 17
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (126ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022570529

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 著者はデポルとセルタのファンなようですが、この本はサッカーのルポルタージュではありません。もっとも初版が1963年ですから、今よりずっと昔、ディ・ステファノやルイス・スアレス(スペイン人唯一のバロンドーラーでデポルのカンテラ出身)の時代。

    フットボールというジャンルに文学的(スペイン文学が如何なるものかわからないですが、比喩につぐ比喩と陰惨なユーモア)なアプローチをした、という点でなかなか見ないタイプの本です。寓話というか、ちょっとばかり凄惨な笑い話(パソ)ばかり。フットボールに血道をあげる、スペイン男たちを嗤った短編集。

    金儲けに暗躍する血も涙もない代理人たちや、“金の羊(今でいうならC・ロナウドやベイルでしょうか)”と珍重される、ただし決して人間扱いはされないスター選手を描いた第一章。「自由貿易理論の応用」には、「九十分間走り回ることのできる動きのすばやい奴隷」を売り買いする代理人が、ベニスの商人の子孫だったりと皮肉が効いてます。

    サポに乗せられ試合に命をかけてしまう町の守護者(ポルテーロ)の英雄的な死を描いた「街の守護者の間奏曲」や、片目片腕の孤児院出身のヒーローの栄光など選手たちにスポットをあてた第二章。地元では力を発揮できるのによそでは――という選手の生き方(「騎士の街、アビラの郷愁」)は、実は一番幸せなのかも。…と贔屓選手に移籍されたクラブのサポなら思うでしょう。

    第三章では、フットボールにまつわる数々の悲喜劇――PKを外したばかりに手足をしばられ“謝肉祭に捧げる犬のように”チームメイトに空に放り投げられるデランテロが出てくる「子馬」、ホームでPKの笛を吹いてしまったばかりに(“読者諸氏よ、人はときとしてマニアックになるものなのだ!”)民衆=サポによって縛り首にされる審判の「ホロコースト」、選手の動かし方を馬術に、鉄壁の守りを二人のGKに例えた「高等馬術」などが描かれます。

    第四章は、運について。トトカルチョの話と、試合中突然死したかと思ったけれど――という選手の話で、全11話。

    スペインの新聞の月曜版に掲載された短編集のようですが、著者のあとがきも現地サポの様子(ただしちょっと昔の)がうかがえてとても面白い。うんうん、わかるわ。休み明けに、新聞買って、もう結果はわかってる試合の記事を探しちゃったりとかさ。そしてがんばって一週間乗り越えるんだよねえ。

  • 「サッカー“の”11の寓話」ではないというところがポイント。つまり、サッカー好きが読んでもあまりピンとはきません。

全2件中 1 - 2件を表示

カミロ・ホセセラの作品

ツイートする