極北 コルィマ物語

  • 朝日新聞社
4.40
  • (3)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 16
感想 : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022573513

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • シャラーモフ(1907~82)を初めて読みました。
    ソビエト連邦時代の小説家です。
    辺見庸さんの「水の透視画法」に出てきて、さっそくアマゾンで検索。
    代表作「極北 コルィマ物語」が中古品でありました。
    値段を見ると、1万2800円(!)。
    とても貧乏人のサラリーマンには手が出ません。
    というわけで、図書館で借りて来ました。
    熟読玩味しました。
    自身が収容所で体験した事実を元にした短編が、6つのシリーズに分かれて150編以上収められています。
    過酷な出来事がつづられていますが、ただちに悲惨という印象はほとんど受けません。
    むしろ誌的でどこかのんびりとしており、それが逆に収容所という特異な場所、その残酷さを浮き彫りにするから不思議です。
    辺見も引いていましたが、たとえば、こんな描写に思わず引き込まれます。
    「ひとは無から生まれてきた。ひとり、またひとりと。夜、見知らぬ男が板寝床の隣に横たわり、骨ばったわたしの肩にもたれかかる。体温を、ひとにぎりの温かみをわたしに与え、わたしからも奪っていく。」(「センテンツィア」)
    思わず息を呑む描写。
    「文学とは何か、1文だけ例示せよ」と言われたら、ぼくはこの1文を提示します。
    収容所という極限の環境下で、人はどうなるのか。
    作家の観察眼は実に鋭いです。
    「収容所では誰もが自分を実際より年かさに、弱々しく見せかけようとする(成功しないわけでもない)。それは必ずしも計算ずくではなく、本能的なふるまいだ。ここでの人生の皮肉は、非力な年寄りに見せかけようとするものの半数以上が、見せかけようとしているよりもずっとひどい状態に達している。」(「使徒パウロ」)
    人間性をとことん蹂躙する収容所の中でも、シャラーモフは「詩の力」を信じています。
    こんな文章が印象に残りました。
    「わたしにとっての最後の救いは詩であった。自分以外の詩人の、お気に入りの詩のいくつか。ほかのものは遠い昔に忘れ去られ、うち捨てられ、記憶から抹殺されたにもかかわらず、詩は驚くほどに思い出された。詩だけは、披露にも、厳寒にも、飢えにも、際限のない圧力にも屈しなかった。」
    収容所での体験を元に作品を書いた作家と言えば、私の大好きな石原吉郎がいますが、石原よりも作風がいくらか明るい感じがしました。
    最後に「センテンツィア」から。
    「愛が蘇るのは、ほかの人間らしい気持ちがすべて戻ってからのことだ。愛は最後にやってくる。愛は最後に蘇る。」
    1万2800円か……買おうかな。

  • ソ連の収容所体験をもとにした短編小説集。もう一人のソルジェニーツィンだ。あまりにも悲しく、儚いロシア人の「幸せ」が語られている。

全2件中 1 - 2件を表示
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×