「自分の木」の下で

  • 朝日新聞社
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本棚登録 : 252
レビュー : 41
  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022576392

作品紹介・あらすじ

なぜ子供は学校に行かなくてはいけない?素朴な疑問に、ノーベル賞作家はやさしく、深く、思い出もこめて答える。子供から大人までにおくる16のメッセージ。心の底にとどまる感動のエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 大江健三郎氏の17個のエッセイが収められている。挿絵には、奥様の大江ゆかりさんの作品が使われており、表紙は、その大江ゆかりさんが描いた大江光くんのデッサンだ。

    挿絵はカラーで鮮やかであり、それぞれのエッセイの内容にあわせて描かれたものであると思う。とても優しさを感じる絵だ。

    この表紙の絵は、本書の一番最初のエッセイである「なぜ子供は学校に行かねばならないのか」の中で使われている挿絵。この章で、大江健三郎氏は、知的障害児として生まれてきた光くんのことを紹介しながら、このテーマについて語っている。

    子どもの頃の著者は、敗戦直後の日本の様相を子どもながらに察知しながら、一瞬学校に行く意味はないと感じる。また、障害をもって生まれてきた光くんには、学校に行かせるよりも、大好きな鳥の声を聞きながら森で過ごさせてやるほうが良いのではないかと感じる。

    しかし、結論として「学校というところを通して、人と人がつながることができる」ということをそのテーマの答えとした。

    本書のタイトルである「自分の木」とは何か?
    「自分の木」とは、自分の魂が宿る木であり、その木の下で、子どもの自分が年を取った自分に出会ったり、または逆に年を取った自分が、子どもの頃の自分に会うことができるという、そういう世界を表しているようだ。

    魂の連続とか、魂の継承とか、そういうことを著者はここで語りたかったのではと感じた。

    これらのエッセイの対象は子供たちのようだ。年を取ったという自覚のある著者が、「若い読者たちに、魂を受け継ぎたい」と、そういう心で書かれているように思う。

    どのエッセイにも著者のメッセージを感じるが、個人的には「取り返しのつかないことは(子供には)ない」と「ある時間、待ってみてください」の二つのエッセイにインパクトを感じた。

    特に、「ある時間・・・」には、数学の話が出て来るが、その数学の計算式を解く過程を人生に例えており、人生の難題を解く場合には、数式を解く手法を応用できるという。

    じっくり読むほど、著者のメッセージが強く伝わってくるように感じました。

  • 「なぜ子供は学校に行かねばならないのですか」という問いかけにどう答えますか?じつはこれ、社会制度に対する問いではなく自分自身への問いに帰結します。少年時代に太平洋戦争を経験した著者は、噂に流されることなく自分で深く考えることの大切さを静かに語ります。壁にぶつかったときに立ち返る場所を心に持っていれば、周囲が変化しても流されず、困難にも柔軟に対応できるでしょう。ちなみに最初の問いに対する著者の答えを要約すると、自分を理解し他の人とつながる「ことば」を学ぶため。あなたの答えはどうですか?
    「先生と先輩のすすめる本」
    (本学教員 推薦)

    ↓利用状況はこちらから↓
    http://mlib.nit.ac.jp/webopac/BB00009626

  • 子どもに向けて書かれたという本。
    一度読んだだけでは汲み取りきれない部分もあったが、優しい空気に包まれるような文面だった。
    大江先生のお母さまは凄い人だと思った。
    また読み直したいと思う作品でした

  • 「後世に何かを残そう」と子供たちに向けて書かれたエッセイ。
    洗練された優しく分かりやすい言葉で綴る大江さんの心の財産。自分の子どもが大きくなったら読ませよ。

  • 子供達に向けて書かれたもので、優しく語りかけるように文章が綴られている。大江少年の頃の話が多く登場して、優しいタッチの可愛い挿絵は奥様が描いていて、心が温かくなる。大江氏が大事に思っていること、後世を担う子供達へ伝えたいことを、知ることができ、大人にも十分読みごたえがある。

  • (2015.04.24読了)(2003.02.15購入)
    『週刊朝日』に2000年8月4日号~2001年2月9日号まで掲載したものを一冊にまとめたものです。子供向けに子供時代の思い出をつづったものです。自分の経験が子どもたちの役に立ってくれれば、ということで書かれているようです。

    【目次】
    なぜ子供は学校に行かねばならないのか
    どうして生きてきたのですか?
    森でアザラシと暮らす子供
    どんな人になりたかったか?
    「言葉」を書き写す
    子供の戦い方
    シンガポールのゴムマリ
    ある中学校での授業
    私の勉強のやり方
    人の流れる日
    タンクローの頭の爆弾
    本を読む木の家
    「うわさ」への抵抗力
    百年の子供
    取り返しのつかないことは(子供には)ない
    「ある時間、待ってみてください」

    ●自分の木(21頁)
    谷間の人にはそれぞれ「自分の木」と決められている樹木が森の高みにある、
    人の魂は、その「自分の木」の根方―根もと、ということです―から谷間に降りてきて人間としての身体に入る。死ぬ時には、身体がなくなるだけで、魂はその木のところに戻ってゆくのだ……
    森のなかに入って、たまたま「自分の木」の下に立っていると、年をとってしまった自分に会うことがある。
    ●正確に覚える(63頁)
    子供の私が、自分が気に入った本から、古典もふくめて、その一節を書き写す習慣を作ったのは、どういうことだったのでしょう?
    不正確に覚えることは、覚えないよりずっと悪い、というのは父が私にいったことでした。
    ●生きる(122頁)
    生きるための―生き延びるための―選択は、結局ひとりでやるほかありません。
    ●難しい本(139頁)
    ほかにすることがなくて、30分がまんしていなくてはならない時間が、通学の際、毎日二度ずつあるとしたら、その時間を、日ごろは読みにくい本をカバンに入れておいて読むことをすすめます。
    ●自殺(174頁)
    この森で、自殺した人間の魂は、自分自身に対して暴力をふるった者らと呼ばれているのです。
    ●取り返しのつかない(179頁)
    子供が取り返しのつかないことをする、とはどういうことか?
    殺人と、自殺です。ほかの人間を殺すまで暴力をふるい、自分を殺すまで暴力をふるうことです。
    ●待ってみる(183頁)
    なんであれ、もう自分は取り返しがつかないことをするほかない、と思う時、とにかく「ある時間、待ってみる力」を持て、もうダメだ、とあきらめるな、といいたいのです。

    ☆関連図書(既読)
    「個人的な体験」大江健三郎著、新潮文庫、1981.02.25
    「新しい人よ眼ざめよ」大江健三郎著、講談社文庫、1986.06.15
    「静かな生活」大江健三郎著、講談社、1990.10.25
    「あいまいな日本の私」大江健三郎著、岩波新書、1995.01.31
    「恢復する家族」大江健三郎著・大江ゆかり画、講談社、1995.02.18
    「ゆるやかな絆」大江健三郎著・大江ゆかり画、講談社、1996.04.10
    (2015年4月28日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    なぜ子供は学校に行かなくてはいけない?素朴な疑問に、ノーベル賞作家はやさしく、深く、思い出もこめて答える。子供から大人までにおくる16のメッセージ。心の底にとどまる感動のエッセイ。

  • 【状態】
    展示中


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  • 名前だけ知っている、大江健三郎。
    挿し絵は奥さんが描いたようです。
    息子のお話をするところが印象に残っています。

  • 子どもから大人まで読める。
    けれど、筆者は子どもに向けて書いている。
    しかし、子供向けだからこそ読みにくい部分がある。

    分かりやすい話とそうでない話があった。

  • じっくりと何度も繰り返し読みたい本。

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著者プロフィール

大江 健三郎(おおえ けんざぶろう)
1935年、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)生まれ。東京大学文学部フランス文学科卒業。大学在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を、同じく在学中1958年当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞を受賞。1964年『個人的な体験』で新潮文学賞、1967年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、1973年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、1983年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、1984年「河馬に噛まれる」で川端賞、1990年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。そして1994年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。
2018年7月から『大江健三郎全小説』全15巻の刊行が始まる。

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