貴婦人Aの蘇生

  • 朝日新聞社 (2002年1月11日発売)
3.45
  • (21)
  • (37)
  • (84)
  • (9)
  • (1)
本棚登録 : 282
感想 : 34
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (236ページ) / ISBN・EAN: 9784022577009

みんなの感想まとめ

亡命ロシア人の伯母と過ごす日々を描いたこの作品は、静けさの中にやさしさと愛が溢れています。伯母が亡き夫のコレクションである動物の剥製に、蔓バラで囲まれたアルファベットのAを刺繍する姿は、彼女の過去や個...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 亡命ロシア人であるユーリ伯母さんと一緒に暮らすことになった私。
    伯母さんは毎夜、亡き夫のコレクションである動物の剥製たちに、蔓バラに囲まれたアルファベットのAを刺繍する。
    叔母曰く、Aは彼女のイニシャルらしいのだが……?

    結局、ユーリ伯母さんが何者であったのか。
    真偽はたいして重要ではなく、彼女と過ごした私やニコ、オハラが彼女を愛したことがすべてではないだろうか。
    静けさに包まれながらも、やさしさと愛にあふれた作品。
    著者の小説は時折読んでいて不安になることもあるが、この作品は常にあたたかく、最後まで安心して読むことができた。

  • 変人、と呼ばれてしまいそうな人ばっかり出てくるけど全体に注がれる眼差しが優しくて好き。
    手品の最後のポーズをずっときめてる伯母さん可愛い

  • ちょっとづつおかしい・・・
    それでも極悪人はいない
    いいな~~

  • 死者と剥製、そして革命で命を散らしたといわれるロシア皇女、アナスタシア。
    複数の「死」のアイコンを用いた、日本が舞台であると明記しているにも関わらず、異国情緒が漂う奇妙で静かな奇譚です。

    小川洋子作品の骨頂である「淡泊」に「抑圧」された筆致で、どこまでも「純化」していく人々と世界観を堪能できます。

    今回も、思う存分、小川ワールドに没入させて頂きました。
    この至福感は、ちょっと推理小説では味わえませんね~。
    小川先生、ミステリー書いてくんないかな…←


    久しぶりに自分でまとめたレビューをば…(^^)φ
    亡き夫が残した剥製に、「A」の文字を刺繍し続ける伯母。
    一定のルールを順守し続ける強迫観念に囚われた恋人。
    私の日々の生活は、そんな二人の間に挟まれた奇妙だけど穏やかなものだった。
    ある日、屋敷に収集された剥製の取材に、オハラという男が訪れるまではーー。

  • この作家の作品には、しばしば何等かの障害を持った人が描かれる。
    この作品の場合は、語り手の恋人であるニコがそれだ。

    強迫神経症のために複雑な儀式を成功裏に終わらなければ扉を通り抜けることができない彼だが、それを見守る周囲の人々の彼に向ける眼差しは限りなく優しい。
    そして、この作品の中ではバイプレイヤーと思われる彼が、もっともいきいきと描かれているように私には見える。
    この優しさは、作者が宗教者であることに由来するのであろうか?
    この作家の持つ静謐で透明な世界観もこれと無関係ではあるまい。

    本作は彼女の作品の中では幻想的要素の非常に少ないものとなっているが、そのぶん毒が無く、読後に静かな余韻を残す作品となっている。

  • 剥製集めが趣味だったおじが亡くなり、病院にはいっていたおばと猛獣館で暮らすことになる。剥製を見に訪れた男がおばがロシアから亡命した皇女アナスタシアではないかと疑りはじめ、刺繍を続けるだけだったおばとの静かな暮らしが少しずつ変わっていく。ひと夏の物語、夏休み、というような「あの頃」を書いた物語で、ドラマというかどのように展開していくのか、追わせるストーリーはミステリーのようでもある。

  • 剥製に刺繍する老婦人、強迫性障害の彼氏、なんとも小川さんらしい素材。ロマノフ王家が絡む背景は大きいが、老婦人はわが道を行く、という感じでとてもいい。昔も今も変わらない青い瞳。語り手の姪が、シビアな観察眼で老いた伯母を見つめながらも、どうしようもなく惹かれているというのが伝わってくる。終盤、二人でレストランで食事をし、ソファで二人で語らう場面が好きだった。ラストも後味のいい締め方。

  • なんていうのだろう、なにひとつ説明できなくて、なにひとつ答えがでない話。輪郭がぼけて、ファンタジーだよと思う一方で妙になまなましくもあるような。オハラはずるいです、ちくせう。

  • 2012/12/30
    復路

  • おばさんを気遣って、みんなの優しさがおばさん中心に向っていた。
    小川さんの小説はいい意味でずっと温度が変わらないと思う。盛り上がるところがなければ、盛り下がるところもない。

  • 小川さんの作品は気品と静寂とミステリアスで構成されていると思う。結局の所、貴婦人Aと名乗るおばあさんの振る舞いや生活は貴婦人そのものであり、貴婦人Aが本物か偽者か、どちらであってもいいような気がする。今更、おばあさんにそんな真意を追求しなくても、いいのでは・・・。

  • 剥製だらけの館『猛獣館』で暮らす
    私とおばさんの物語。

    この本を読み終わって一番に思ったのは
    嫌な人は居たけれど悪い人は一人も居なかった。
    ってコトですね。

    最後は泣きそうになりながら読んでました。
    決して悲しい訳じゃナイけど、悲しくて
    とても優しさに溢れた結末でした。

    やっぱりこの方のお話し 大好きです!!

  • 未亡人のロシア人であるユーリ伯母さんと、姪である私の、亡くなった伯父さんが残した剥製たちに囲まれて暮らす生活。

    残された貴重な剥製に、一つずつAという刺繍を施していく伯母さん。

    Aの持つ本当の意味、ロシア帝国を長く支配した末に崩壊した、ロマノフ家の生き残り、
    剥製に導かれてやってきたブローカーのオハラ、恋人のニコの深いやさしさ、伯母さんの、決して衰えることのない澄んだブルーの瞳。

    すべてがやさしさに包まれているわけではなく、にじみ出る欲求と苦労、困惑に、誰も知ることのない真実が入り乱れて
    切なく、いつまでもそれは大切な記憶として、伯母さんと関わったすべての人に残る。

    やっぱり小川洋子いいよね。
    文も内容もいい。何にも流されることもなく世界観が完璧に作られている!
    伯母さんの運命はなんとなくわかっていたけど、やっぱり引き込まれて最後の余韻までもが心地いい)^o^(

  • 2012 5/24

  • 小川洋子の文体は、どこかひんやりとした空気を持っている。
    それは「ミーナの行進」のようなほのぼのした物語であってもだ。
    彼女には中村航のような文体ではないことは一読すればすぐに分かるように。
    登場人物たちから少し離れたところから紡いでいるような―そんな感覚に陥る。

    今回の小説は短編集「海」よりも、とびきりクールで素敵だったと思う。
    伯母さんはロマノフ王朝の最後の皇女・アナスタシアであるかどうかは、結局のところ分からないにしても、流れている空気がとても愛おしい。

  • 請求記号 : 913.6||O
    資料ID : 10106436
    配架場所 : 工大一般図書

  • 私と70歳のユーリ伯母さんそして心の病である脅迫神経症の二コの3人は伯父さんが残した動物の毛皮や剥製などで埋め尽くされている屋敷で生活していたその生活が剥製コレクターのオハラ氏が現れたことでユーリ伯母さんがロシア帝国ロマノフ朝最後の皇女、アナスタシアではないかと言われ始め
    いろんな騒動が巻き起こる。おとぎ話のような浮世離れした話だが、ほのぼのとしたホンワカとした読後感があった。

  • 剥製集めが趣味の伯父が死に、その妻であるロシア人の伯母さんが大量の剥製とともに残された。主人公は大学の学費を援助してもらう代わりに伯母さんの世話をしながら、剥製だらけの館に住むことになる。みたいなストーリー。

    思ってもみなかったストーリーに発展していきます。おもしろい。はっきりいわないタイプの文学すき。ただちょっとはっきり言わなすぎなのかなあ。

  • 《古縞》
    剥製集めが趣味の伯父が死に、その妻であるロシア人の伯母さんが大量の剥製とともに残された。主人公は大学の学費を援助してもらう代わりに伯母さんの世話をしながら、剥製だらけの館に住むことになる。みたいなストーリー。

    思ってもみなかったストーリーに発展していきます。おもしろい。はっきりいわないタイプの文学すき。ただちょっとはっきり言わなすぎなのかなあ。

  • 小川洋子特有のノワール度、が薄めで、でもひそかにドラマチックで、「博士の愛した数式」寄りの作品。楽しんで読めました。
    穏やかな読後感が心地よい一冊です。

    剥製集めが趣味で変わり者の叔父が亡くなり、亡命ロシア人でもあるユーリ叔母さんが残された。
    大学生の私は剥製だらけの館で叔母と暮らし始める。
    ユーリ叔母さんは身の周りの物すべてに「A」の飾り文字を刺繍するという趣味をもつ。
    それは彼女の本当の名前、「アナスタシア」のイニシャルだった。
    そう、彼女はロマノフ王朝の最後の生き残り、アナスタシア皇女なのだと言う。
    はたしてそれは本当なのか――というお話。

    強迫性障害のボーイフレンド、ニコの優しさ。
    ユーリ叔母さんの青い瞳。
    館の中にひしめく剥製の動物たち。
    印象的(小川洋子的)なモチーフが配され、時々ぐっとひきつけるシーンを散りばめながら淡々と進んでいく物語。

    叔母さんは本当にあのアナスタシアなのか!?というテーマはあくまで仮のテーマであって、そんなことはどうでもいいじゃないか、というところが真のテーマなのでありました。

全33件中 1 - 20件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川洋子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×