梅原猛の授業仏教

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022577108

感想・レビュー・書評

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  •  仏教を中心に、キリスト教やイスラム教の基礎的な知識を学ぶことができる。まず「なぜ宗教が必要か?」という問いかけから本書は始まる。
    「宗教がなければ、文明も道徳もない」というのが、宗教の存在意義であり宗教をないがしろにした現代は、道徳が廃れていく時代だと言える。


     僕が面白いと思ったのは、以下の考え方だ。
    1.西洋では小麦栽培を基礎としている
    2.小麦農業は雨を必要としない
    3.雨を必要としなければ森も必要ない(森の神を殺す神話がある)
    4.自然は人間が支配するものという人間中心主義の発展
    5.キリスト教やイスラム教などの人間中心の一神教が発達

    1.東洋では稲崎を基礎としている
    2.稲作には雨が欠かせない
    3.雨を貯蓄する森を大切にする。
    4.雨は人智の及ぶものではないから、人間中心の宗教は発達しない
    5.仏教や儒教などの多神教が発達

     西洋と東洋の宗教の違いはざっと言うと上に書いたような事。
    筆者は仏教が専門であるから、仏教の歴史や信仰の中身についてより詳しく述べられている。特に聖徳太子、最澄、空海以来の日本仏教の歴史についてすごく勉強になる。僕がその中でも興味があるのは親鸞。誰よりも煩悩に悩まされたような気がするこの人物をもっと知りたいと思う。

     最後はこれからの世界において仏教や宗教が果たすべき役割、自己中心に陥らず、仏教の持つ「生きとし生けるもの」を大切にするべきという未来へのメッセージで締めくくっている。


     わかりやすい。

  •  自分を見直す一環として読んだ書である。宗教はなぜ必要か、道徳は何を背景として持たねばならないのか、そして道徳の必要性。その必要性からくる宗教の必要性と世界観。今の自分にとって何が足りないのかを考えたい。

     会社に行く。寝る。飯を食う。カヌーをやる。日々やりたいことがある。これらは全て欲求である。たくさん時間外で働いている。社内の人間関係、仕事の進め方の悩み、仕事を通して将来への不安、会社への不信感、自分のペースで働くことができないことへの焦燥感、どれをとっても最近の欲求からくる不平不満を抑えることができない。自分はどうするべきか。端的に答えが出てこない。

     自利利他の精神を実践することを説いている。洛南中学校の生徒たちへの授業を一冊の本にまとめた本書は非常にわかりやすい。宗教を通して自分を律し道徳を身につける。また、宗教の持つ世界観を自己のものとし全ての人と共有化する。グローバリズムの流れの中であらゆるものを包括する教えが必要になってくる。仏教の教えがとても重要になってくるのではないか。ユダヤ、キリスト、イスラムこれらの一神教は排他的である意味において攻撃的である。対するものを受け入れる器の大きさが必要な時代である。その器が仏教の教えの中にあるのではないか。

     世界の文明、文明の裏付けとなる宗教の存在、そして世界史観が大まかにわかった。その中でも仏教が重要と説くキーワードは何か。自利利他の実践という。仏教というと何か歴史上のものと受け止めがちであったが自分の生活に十分溶け込んでいる存在と言うことがよくわかった。ただし個人の問題をどのように「考え」「方針」をだせるところまで昇華できるかわからない。

     自らの生活を律し、自利利他を実践したとしても会社という存在は変わらない。個人の思惑など及ばないのが会社というものだ。「とらわれない心」という表現もあった。確かに仕事に囚われている。それを解き放すためにはどうすればいいのか。

     それを見つけることが結局は、自分の考えを持つということになるのであろう。あくまで一助にしかならないが、自分に投げかけてくれるものがある。

  • なぜ宗教が必要なのか。
    みんな一度は聞いたことがある僧や寺、小説家などの身近なワードを使って、仏教や他の宗教について教えてくれる本。
    それらを踏まえて、
    「今は、キリスト教社会が生んだ近代文明という一神教が世界を支配している。グローバリズムの支配、露骨な資本主義の支配。
    これからは、社会主義でも資本主義でもない、新しい社会のモデルを探していかなくてはならない時期ではないだろうか」
    という問題提起がされている。

    『カラマーゾフの兄弟』に挑戦してみたくなった。
    京都で宗派ごとのお寺めぐりもしてみたい。

    あと、これは勧められて読んだ本だけど、著者が国際日本文化研究センターの初代所長というのが分かって驚き。私が好きな河合隼雄もかつてそこの所長だったらしいから。

  • 2022/1/18
    吉村さんとのご縁で読む事に。

  • 仏教入門にはいい本だと思う。

  • 私には、過去と未来の全てが織り込まれている。歴史や科学といったもので、私は作り上げられてきたのではないか。
    宮沢賢治の自然に共感する目は偉大なものだ。仏教が、体に根付いた江戸までの日本人は、もしかしたら賢治のようであったのかもしれない。
    たゆまぬ努力、集中力、正言、恥を耐える、この4つがあれば、大失敗はしない。

  • 中学生向けの授業を書籍にしたものなので、非常に平易な文章で書かれている。自利利他の精神や多神論は自分自身しっくりくる。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:180||U
    資料ID:50300008

  • 10年ぶりに再読。またいろいろと勉強したくなってきた。

  • 20160107 本題は仏教だが、他の宗教との対比やまた仏教内での比較などが、梅原先生の言葉で分かりやすく表現されており面白い。最終講義は同時多発テロが起きた10年ほど前で、ちょうどわたしも当時の生徒と同年代であったことが一層しみじみと感じ入る点である。

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著者プロフィール

哲学者。『隠された十字架』『水底の歌』で、それぞれ毎日出版文化賞、大佛次郎賞を受賞。縄文時代から近代までを視野に収め、文学・歴史・宗教等を包括して日本文化の深層を解明する〈梅原日本学〉を確立の後、能を研究。

「2016年 『世阿弥を学び、世阿弥に学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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