クビライの挑戦 モンゴル海上帝国への道 (朝日選書 525)

  • 朝日新聞社 (1995年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784022596253

みんなの感想まとめ

歴史的な視点からクビライ・カーンの業績を深く掘り下げた一冊で、彼がどのようにしてモンゴル帝国を築き上げたのかを詳細に描いています。特に、南宋攻略における襄陽包囲作戦では、戦略的な思考と持久戦の技術が光...

感想・レビュー・書評

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  • クビライ・カーンを中心とした大元ウルスを叙述する一冊。

    皇帝モンケの死後、どのようにクビライが登りつめていくか、そして元を中心としたモンゴル世界帝国を築いていくか。

    特筆すべきは以下。
    ①襄陽包囲作戦
     モンゴルが過去二度征服に失敗した南宋攻略を、クビライがついに成功に導いた作戦。荒野と河により補給が確保できない立地のため、過去失敗した正面からのゴリ押しはやめ、南宋側の樊城・襄陽を総延長100kmの土塁と空堀で囲み持久戦に持ち込んだ。包囲戦に張りつく人員を最小限の交代制で負担を軽減しつつ恩賞も与え、相手を着実に孤立させていく。戦争を土木工事に置き換え、不確定要素を減らして管理可能なものにしていく。そして最後はキャノン砲を撃ち込み繊維喪失、瓦解に追い込む。
     また、一番ものすごいのが戦後処理。相手の武勇を讃え、指揮官や兵士を高待遇で麾下に加えた。南宋政府に見捨てられた恨みもあり、彼らは積極的に尖兵となった。
     孫子でいう「勝兵はまず勝ちて、のちに戦いを求む」「百戦百勝は善の善なる者に非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」の戦略性、すごすぎる。

    ②大元ウルスのグランドデザイン
     草原(モンゴル)の軍事力、中華(南宋)の富(豊かな農業生産力、膨大な人口、伝統的な国家行政機構)、ムスリム商人の通商力の掛け合わせ。分立志向の強い遊牧国家を統合するためのデザインであり、武力統治からの脱却の青写真。発想がすごすぎるし、ユーラシア大陸規模でやりきる力がすごい。

    ③貨幣政策
     銀を基軸通過に据え、一部紙幣(塩引を含む)もとり混ぜて帝国経済を一体化させる。理屈はシンプルだが、経済的混乱がないよう順次移行させるプロセスや、納税や皇帝からの下賜によって浸透させる点の行政スキルはすごい。経済学がそんなに確立されてない時代に、なぜこれを理解してできるのかが謎。すごすぎ。

    本書を通じて、モンゴル帝国のイメージが相当変わった。
    そしてグローバル化の進展のすえ、異常気象とパンデミック(黒死病)で崩壊していく様はまるで現代の様で、恐ろしさすら感じる。

    常識を覆された最高の一冊。

  • 1

  • 著者のモンゴルものを集中して何冊か読んだが、個人的な興味関心が重なり、手もとにおいておくなら、一に「クビライの挑戦」、二に「モンゴル帝国の興亡」かな、と思った。/クビライ幕府のブレイン:バアトルらジャライル国王家、コンギラトのオチン、ナチン、イキレスのデレゲイなどの五投下、クル・ブカ、タガチャルなどのモンゴル将官。個人の参謀としては、ウイグル人廉希憲、エルチン、女真族の趙炳、趙良弼、粘合南合、漢族の劉秉忠、姚枢など。/何人かさらに調べてみたい。/若きティベト仏僧パクパは、クビライのもとで、華北・ティベト両地域にたいする宗教権威の道をたどりだす。儒者、旧西夏国人高智耀は、モンゴル、ティベト、中華いずれにも通じ、カメレオンのような複雑怪奇な独特の政治・文化活動をくりひろげた。/どうしてクビライとそのブレインたちが営々としてつくりあげた国家と経済のシステムは、こうまでもろくもくずれさったのか。たとえ、あまりにも人知を超越した異常な「大天災」がつづいたにしても。それをひとことでいえば、早すぎたのである。(略)それらの構想のほとんどは、時代をはるかに先どりしていた。その多くは、ずっとのちの西欧でないと、現実化しなかったものであった。

  • ■モンゴルの時代って、なんだか風通しがよくて涼しげ。人類が見た「世界」という夢。

    モンゴル帝国の創設者チンギスではなく、帝国を完成したクビライに焦点を絞って解説。南宋をほぼ無傷で手に入れ、空前の規模の水軍を持つまでに至る様子、「恐ろしくて野蛮なモンゴル人」というのは諜報による戦意喪失を狙ったデマか、後世の官僚の捏造で、実際にはほとんど戦わない軍隊であったこと、ある段階から明確に世界帝国を目指しており、軍隊を動かすと同時に世界を治めるシステムを多民族からなるブレインに検討させていたことなどが力説されている。

    帝国の範囲を示す地図が楽しい。他の先生の論文からコピペしたものらしく、文中に出てくる地名がなかったりするのが惜しいところ。しかしながら選書ですから、これでいいです。というかよくこれだけみっちり読める内容を盛り込めたなというくらいの手応えは有る本。

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著者プロフィール

京都大学大学院文学研究科教授
1952年 静岡県生まれ。
1979年 京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学、
    京都大学人文科学研究所助手。
1992年 京都女子大学専任講師を経て同助教授。
1996年 京都大学文学部助教授・同教授を経て現職。
主な著訳書
『大モンゴルの世界――陸と海の巨大帝国』(角川書店、1992年)
『クビライの挑戦――モンゴル海上帝国への道』(朝日新聞社、1995年)
『モンゴル帝国の興亡』上・下(講談社、1996年)
『遊牧民から見た世界史――民族も国境もこえて』(日本経済新聞社、1997年、日経ビジネス人文庫、2003年)など。

「2004年 『モンゴル帝国と大元ウルス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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