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- / ISBN・EAN: 9784022596741
感想・レビュー・書評
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あとがきによれば、大学での一般教養の講義を基に構成した本で、古代から幕末までの日本の貨幣史について書かれている。
高木久志「撰銭とビタ一文の戦国史」が日本国内での貨幣の流通が話題の中心だったのに対して、本書では、中世における宋銭の流入や倭寇貿易、日本銀の世界経済に対する影響、幕藩体制下での金・銀・銅の海外流出といった、海外との貿易史の記述が多い。
古代史が専攻の先生なので、近世以降はおざなり(失礼)かと思いきや、幕藩体制下での貨幣政策についてもよく描かれている。特に田沼意次の貨幣政策に関しては一章丸ごとページを割いており、本書での田沼の評価は大変高い。萩原重秀の貨幣改鋳は結局のところは失敗に終わったが、南鐐二朱銀発行といった「銀貨の計数貨幣化」はその後の政権下でも引き継がれて、これは成功だったと結論付けている。
幕末の小判流出問題に関しては、幕藩体制に重大な打撃を与えたと記述されているが、最近の研究だとさほど小判は流出してないとの見方が優勢なので、ここは要検討であろう。
総評として、文章がうまい先生で、読んで楽しかった。本書の発行は22年前と相当古い本で学説は色々と変わっていると思うが、今でも通用する本だと思う。色んな本で引用されています。こちらもお薦め。
評点 8.5点 / 10点詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
貨幣を題材にした日本史でここまで様々な事に広がるとは思わなかった。
この本を読んで本史において紙幣がほとんど使われていない事に気がついた。しかもヨーロッパと異なるのは銅銭ばかりで金銀が余り使用されていない事に驚いた。小判のイメージがあるからだろうか。
また、時々の権力者が貨幣を流通させるために様々な政策を実施していたのは、それなりに貨幣を用いることによるメリットを理解していたと考えていいのだろうな。
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それにしても統治者が金欠になると貨幣の質を下げるのは江戸時代だけではなく、古代日本の銅銭でも同じとは思わなかった。そして江戸時代と同様に古代の小規模な経済に悪影響を与えている。いつの時代も統治者が考える事は同じということだな。
後、これを読んでいると日本は本当に金銀銅の取れる場所だったという事がよく分かる。やはり火山が多いことやプレート境界に存在することが関係しているのだろうか。 -
面白い
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貨幣から日本史を探ることができる。貨幣に詳しくなれるばかりではなく、貨幣との関わりで当時の日本の社会や経済の動向などもわかり、興味深かった。
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内容(「BOOK」データベースより)<br>
出土銭から紙幣まで。始まりはまじない用の銭から。貨幣から見えてくる歴史…銅銭を輸入し、紙幣を拒否した日本。中国銭「永楽通宝」の文字は日本僧の筆蹟。アダム・スミスも注目した豊富な日本銅。
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内容(「MARC」データベースより)<br>
貨幣は単に経済だけでなく、広く社会、文化に関する豊かな情報を秘めている。銅銭を輸入し紙幣を拒否した日本、中国銭・永楽通宝の文字は日本僧の筆蹟、世界史を動かした日本銀など、貨幣から日本史を見る。