司馬遼太郎の幕末・明治 (朝日選書)

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  • 朝日新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022598288

感想・レビュー・書評

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  • 『龍馬がゆく』と『坂の上の雲』を読み解きながら、司馬遼太郎が近代日本をどのように見ていたのかを、批判的に検討している本です。

    『龍馬がゆく』で司馬は、藩の枠にとらわれず「日本人」としての自覚に基づいて新しい時代を切り開いていった人物として、坂本龍馬を描いています。また『坂の上の雲』では、秋山好古、秋山真秋、正岡子規の3人を中心に、「近代日本」の青年時代のドラマとして、日露戦争が描かれています。こうして著者は、司馬遼太郎の2つの物語によって「近代日本」がどのように構成されているのかを明らかにしていきます。

    幕末・明治における国民国家の創出と、それを批判的に検討する著者自身のスタンスについては明瞭になっているのですが、司馬によって2つの作品が物語られることになる1960-70年代の時代背景との関係、著者の言葉で言えば「第二の時間軸」との関係について、もっと詳しい検討をおこなってほしかったという思いが残ります。そうした課題にまで踏み込んでいかないことには、幕末・明治期の司馬の叙述にある偏りがあることの指摘に終始してしまい、「司馬史観」を思想史的に位置づけるというより大きな問題への展望が開かれてこないのではないかという気がします。

  • 司馬遼太郎が書いた対象である幕末・明治とそれを司馬が書いた1970年頃、そしてそれを読む現代の3つの時間軸を考えながら、著者は国民の叙事詩ともいうべき司馬の2大作品を克明に説明していきます。司馬が何を書き、そして書こうとしなかったのか。司馬の目線はどこにあったのか、今更ながら私たちの国のスタートと最大の危機克服にあたってのドラマが素晴らしいものに見えてきますし、それを書くことを通して司馬が訴えようとしたこと、それは70年頃の歴史学への批判、15年戦争へ駆り立てていった狂気、そして帝政ロシアに代表される独裁主義・官僚主義への批判である。戦前に英雄談として語られていた逸話に全く触れていないという事実が司馬の意図を語っているという。今、日本という国が再びかつてない危機にあると思う現代に生きる「私」としては、当時の明るい希望をもう一度味わいたく、改めてこの2冊を読み返してみたいと思いました。考えて見えば私が2つの作品に接したときも日本が上り坂にあった時代でした。

  • 分類=歴史研究・歴史文学・司馬遼太郎。03年5月。

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著者プロフィール

日本女子大学人間社会学部教授。1951年、大阪府生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。専門は歴史学、近現代日本史。
主な著書に、『「戦争経験」の戦後史―語られた体験/証言/記憶』(岩波書店、2010年)、『近現代日本史と歴史学―書き替えられてきた過去』(中央公論新社、2012年)、『「戦後」はいかに語られるか』(河出書房新社、2016年)などがある。

「2018年 『アジアの戦争と記憶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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