メディア・ナショナリズムのゆくえ 「日中摩擦」を検証する (朝日選書 807)

  • 朝日新聞社 (2006年10月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (280ページ) / ISBN・EAN: 9784022599070

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  • メディア論と社会学のドメインにある領域。
    メディアのナショナリズムに対する影響というと、その実証が困難ではあるが、殊中国に関していうと、それが顕著に現れる。内政不満は近年ではインターネットに表出がするが、そもそも大衆の潜在意識がどう凝集し、体制と相対していくかの構成が面白い。この著書は言論統制の流れや、その組織体制に関して細かくはないものの、導入部が整理されている点が参考になった。

  • ・先行研究との違い。①メディアを通じて日中のナショナリズム自体に迫る、②メディア→社会、社会→メディアに集約・強化という双方向、③日中のメディア環境の差、も分析する。
    ・反日デモ新聞報道で「過激さ」が強調されたことが反中意識を煽る、というのはある意味当然。あれを見て中国を嫌いにならない人は少数だろう。でもなぜ「過激さ」が強調されたのか、メディア側が社会の求めに応じたのか、という分析があればよかった。「紛争・対立」の文脈で報道するのはジャーナリズムの常道、と言ってはいるけれど。
    ・起:入常への中国政府の曖昧な態度。承:ネットの役割、日本の官製ソフトイメージとネットによる「(2ch等)等身大日本」接触のgap。転:政府の豹変、デモ黙認から抑制へ、ここで政府を代弁するエリートvs憤青の構図。結:ネット政策と対策、政府は抑制に走るが国内の内部亀裂発生。
    ・05年反日デモの総括。①入常反対だけでなくこれまでの持病と新たな問題の積み重ね。②対日姿勢において公式見解と書き込みの落差が政府に致命的な打撃、③ネット世論の矛先は日本全体ではなく一部日本右翼(と彼らは主張)、後半は日本から一貫性のない自国政府へ転換。
    ・愛国主義自体は反日ではないとの指摘があるが(毛利2006)、日中戦争の歴史が愛国主義教育の中で大きな位置を占めるのは当然。近年、平時の対日報道は「二分論」を放棄して「右傾化」論が突出。しかしデモ発生以降の非常事態下では、「日中友好と日本人民の友好性」強調。
    ・香港は対日ナショナリズムを大陸と共有するが、大陸の暴力・破壊行為には否定的で、中立紙はこう報道。中央政府は左派系紙を通じて大陸の暴力・破壊への不支持姿勢を示す。香港報道は参考消息で大陸に紹介。(結局本件については中立紙・左派紙に違いはないということか?)
    ・ナショナリズムと愛国主義を区分。前者は他者を拒絶し、後者は自国・自民族に対する愛着や忠誠で本来的には他者否定が含まれず。従って反日の源泉は90年代以降の愛国主義教育ではなくナショナリズム。(理論上は両者が区別できても、中国の愛国主義教育は抗日戦争と不可分だから、結局これが反日へとつながり、現実には愛国・対日ナショナリズム・反日の間に区別はないのでは?)
    ・米メディアは05年春のデモでは中国に批判的だが、同年秋以降は日本批判が強まる。近年の対日報道は日米中3カ国の枠組みの中のものが増加。英国メディアはデモに対しては米と同様、しかし夏以降は対中好意的なものも。対日は、英国にはPOW問題があるため5月以降歴史認識やナショナリズム顕在化批判報道。

  • [ 内容 ]
    今やメディアの存在と影響を無視しては語れないナショナリズム。
    2005年春、中国各地で大規模なデモが発生。
    「愛国無罪」を叫ぶ学生や市民の姿、日本製品不買の呼びかけ、日本の大使館や領事館への投石などが、「反日」として様々なメディアを通じて伝えられた。
    社会が共有した「認識」は、従来のマスコミや、インターネットなどの新たなメディアを通じてさらに活性化。
    「歴史教科書」「釣魚島」「東シナ海ガス田開発」…。
    両国のナショナリズムは急速に高まった。
    「日中摩擦」を題材に、新旧のメディアがナショナリズムの生成・変容にどんな影響を与え、役割を演じたかを詳細かつダイナミックに分析する。
    これまで紹介されたことのない、中国内のネットで飛び交った言説の具体例も収録。

    [ 目次 ]
    第1章 メディア・ナショナリズムを考える
    第2章 日本の新聞は「反日」デモをどう伝えたか
    第3章 中国のインターネット言論と「反日」デモ
    第4章 中国の報道統制
    第5章 香港の「反日」デモ報道
    第6章 中国における国民ナショナリズムの登場
    第7章 米英メディアが見た日中摩擦
    補章 日中摩擦と中国の民間ポータルサイト

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著者プロフィール

慶應義塾大学名誉教授、十文字学園女子大学特別招聘教授、東海大学文化社会学部特任教授。博士(法学)。
1956年東京に生まれる。1979年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1985年慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程(政治学専攻)修了。(財)電気通信政策総合研究所、関西大学、慶應義塾大学法学部政治学科教授を経て現職。

主要著作:『地域情報化――理論と政策』(世界思想社、1992年)、『政治コミュニケーション――理論と分析』(勁草書房、1998年)、『ジャーナリズムとメディア言説』(勁草書房、2005年)、『現代ニュース論』(共著:有斐閣、2000年)、『メディア・ナショナリズムのゆくえ――「日中摩擦」を検証する』(共編著:朝日新聞社、2006年)、『ジャーナリズムと権力』(編著:世界思想社、2006年)、『メディアの中の政治』(勁草書房、2014年)、『ジャーナリズムは甦るか』(共著:慶應義塾大学出版会、2015年)、『批判する/批判されるジャーナリズム』(慶應義塾大学出版会、2017年)、『国家・メディア・コミュニティ』(慶應義塾大学法学研究会、2022年)など。
訳書:M. マコームズほか『ニュースメディアと世論』(関西大学出版部、1994年)、G.E. ラング・K. ラング『政治とテレビ』(共訳:松籟社、1997年)、D. マクウェール『マス・コミュニケーション研究』(監訳:慶應義塾大学出版会、2010年)など。

「2022年 『コミュニケーション研究 第5版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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