ハリウッド100年のアラブ―魔法のランプからテロリストまで (朝日選書)

著者 :
  • 朝日新聞社
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022599155

作品紹介・あらすじ

9・11以後、アラブ世界は大きな注目を集めてきた。私たちが漠然とイメージするアラブ世界には、ハリウッド映画の影響が少なからずある。ハリウッドが発信するアラブ像はいつしか「グローバル・スタンダード」と化し、世界各地で受け入れられてきた。古くは『シーク』から、『アラビアのロレンス』、ディズニーのアニメ『アラジン』、そして最近の『ミュンヘン』『ユナイテッド93』に至るまで。そのイメージの連なりからは、アメリカのアラブに対する誤解、偏見、侮蔑、願望、さらには中東戦略や国家プロパガンダも見えてくる。ハリウッド100年を振り返り、「アメリカ映画からは見えないアラブ」「ハリウッドが描かなかったアラブ」を読み解く試み。

感想・レビュー・書評

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  • ハリウッド草創期から現代まで膨大な量の映画を検証し、そこで描かれるアラブ人、あるいはアラブ像がいかに歪んだものかを実証した画期的な本。 Jack G. Shaheenの「Reel Bad Arabs」をかなりパクッた本のようだけれど、それでも日本語でこのような本が読めることが嬉しい。ハリウッド映画を信じるな!!!

  • ハリウッド映画におけるアラブ世界の表現について考察した本です。小さい頃には見えてこなかった「アラジン」の製作者の思惑が透けて見えてくる様で恐ろしかったです。”刷りこみ”ってこええなあ。

    九州大学
    ニックネーム:稲生平八郎

  •  ハリウッドで映画撮影が始まったのは1907年。ちょうど今から100年前のこと。本書では、この1世紀の間、ハリウッドによって「アラブ」はどう描かれてきたかを、無声映画やテレビ映画も含め検討を加えている。

     まずはクエスチョン。ディズニーアニメでおなじみのアラジンは、果たして何人か? アラビア人、エジプト人。と思ったら、大間違い。実はオリジナルではアラブ人ではなく、中国人の少年なのだという。しかもアラジンの物語は「千夜一夜物語」の定本には入っていないというから二重の驚きだ。

     著者は、こうした誤解が生じてきた背景を、19世紀ヨーロッパが帝国主義的野心から「オリエント」=東方世界に目を向けた歴史的経緯を交えて解き明かしていく。その誤解を世界規模で広めたのはディズニーなどのハリウッド映画によって描かれた「アラジン」だったというわけだ。

     多くの日本人が抱いているであろう「野蛮」で「好色」な「アラブ人」というイメージも、私は確かに映画やテレビで培ってきた。いや自分でも恥じ入るばかり。
     それにしてもなぜ、アラブ世界はこうしたハリウッドの振る舞いを放置してきたのか。著者はイスラムの偶像崇拝禁止という教義が、「見えるもの」へのイスラムの取り組みの弱さを招いたとする。

     「聖書世界とアラブ/イスラム」ではハリウッドの聖書をモチーフにした映画の中でのアラブやイスラムの描かれ方を通して、キリスト教を輝かせるため、いかに聖書そのものの内容がゆがめられ、アラブ世界やイスラム教が貶められてきたのかが説明される。ブッシュ(息子)大統領の演説を引き合いに説き起こす「十字軍の幻想」では、十字軍がもたらしたアラブ世界への災厄が、アラブ世界の目と西洋の目を交錯させながら語られる。ここでもハリウッドは当然史実を捻じ曲げた映画しか作っていない。

     そして「アラビアのロレンス」の実情と、中東問題をもたらしたイギリスの「三枚舌外交」を説明する「アラブの目覚めと『ロレンス』伝説」。映画の中で描かれる悪役のステレオタイプとしてのアラブ人像を分析した「征伐されるアラブ人」など。

     各章とも、目からうろこが落ちる経験をたっぷり味合わせてもらった。
     自分がいかに物事を知らないかを、知る。これぞ読書の醍醐味。

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著者プロフィール

著述家、慶應義塾大学非常勤講師。主な著書に『イエロー・フェイス――ハリウッド映画にみるアジア人の肖像』(朝日選書)、『アジア系アメリカ人』(中公新書)など、訳書に『マンハッタン、9月11日』(D・E・マーフィー著、中央公論新社)、『ショック・ドクトリン』(共訳、ナオミ・クライン著、岩波書店)などがある。

「2015年 『横浜ヤンキー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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