ル・コルビュジエ 近代建築を広報した男 (朝日選書)

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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022599568

作品紹介・あらすじ

20世紀最大の建築家と呼ばれる、ル・コルビュジエ。2009年6月現在、フランス政府は各国と連携をはかり、その建築作品の一括世界遺産登録に向け、全精力を注ぐ。その中には日本で唯一の作品、国立西洋美術館も含まれる。フランス建築界でスターダムに上り詰めたル・コルビュジエは、早くも大正期には日本に紹介され、前川國男、丹下健三ら日本を代表する近代建築家に多大な影響力を及ぼした。「ドミノ・システム」「近代建築の5原則」「住宅は住むための機械」を標榜、建築同様、熱心に取り組んだメディア戦略で自らを近代化のシンボルとした巨匠。「近代建築を広報した男」ル・コルビュジエの、建築、アート、デザインの創造の軌跡を追う。

感想・レビュー・書評

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  •  世界的建築家ル・コルビュジェについて、様々な面から分析した一冊。

     まず彼の建築について考える上で大前提となるのが、「近代建築の5原則」である。
    ・ピロディ(太く頑健な柱により建物を空中に浮遊させ、地面と直に接する1階部分を開放しようというもの)
    ・屋上庭園
    ・自由な平面(壁を建物の基本単位から取り除いた「ドミノシステム」を発展させたもの)
    ・水平連続窓
    ・自由なファサード
     そしてこの5原則が全て実現した「サヴォア邸」の写真を観ると、屋内と屋外の区切りが厳密でなく、まるで屋内と屋外が連続しているような、そのような印象を受ける。それは、「壁」というものが重要視されていないこと、1階部分が解放されていること、水平連続窓などによるものであるだろう。
     また、ル・コルビュジェは幾何学的かつ機能主義であり、作品の写真を観ると、確かに装飾よりも機能性を重視した実用性に優れた建造物となっているように思える。ビルドイン式の家具や可動壁を用意した、「クラルテ・アパート」などはその象徴であろう。
     その一方、ル・コルビュジェはメディア戦略にも優れており、建築を「観せる」という部分の功績も大きい。
     ル・コルビュジェの作品は、現代の建物に通じる部分も数多く、近代建築の源流である人物といえるのではないか。

  • 現代における名声とは難しい。芸術家の場合、それは自らの分野に関する才能だけでなく、セルフプロデュース能力やブランディングも含めて判断されるものだからだ。本書はル・コルビュジエの建築だけでなく画家や雑誌出版としての側面、彼自身の性格やその影響力について述べていくことで、「20世紀最大の建築家」と呼ばれるに至るその全体像を明らかにしていく。巻末の相関図は興味深く、初期は美術界からの影響を受けていたル・コルビュジエがやがてデザイン・建築界に影響を与える側になっていくのがわかりやすく整理されている。

  • 「時代に選ばれた建築家」

    20世紀モダニズムを代表する建築家ル・コルビュジエ。その生涯、メディアを巧みに利用することによって世界にその名を広めていった戦略を、パブリシティや絵画・音楽・自動車や飛行機など彼が関わったテーマごとに検証、日本との関わりや世界の中での位置づけなど、様々な角度からその軌跡をたどる。

    20世紀前半、画期的な作品で世界を席巻したル・コルビュジエ。その名はあまりにも有名ですが、本名はシャルル・エドワール・ジャンヌレ。もともとはフランス系スイス人で、後にペンネームとして使うことになった「ル・コルビュジエ」は「からす」という意味だそうです。

    お膝元フランスの「サヴォワ邸」はじめ日本ではお馴染み上野の「国立西洋美術館」など、その建築は世界各地に残りますが、同時代に活躍しその作品がほとんどアメリカ国内に限られた建築家フランク・ロイド・ライトとは対照的に、意外にもアメリカとは非常に縁が薄かったというのも興味深い話でした。

    今に残る建築を見るとき、20世紀以降のものとそれまでのものとは大きな気分の違いがあることに気づきます。それまでの伝統的な建築といえば石やレンガを積み上げて重厚に作られ、それらの多くには何らかの装飾があり、非常に情緒的女性的であるように見えます。

    それに対して20世紀初頭に始まるモダニズムの建築というのは、イメージとしてとにかく四角い。そしておおよそ装飾というものが無いです。機能的で合理的、無駄がないという面から言えばそれは、必然的な進化であったのかもしれません。けれども本書を読んでいくと、その大転換に大きく舵をきる役割を果たしたのが、ル・コルビュジエという建築家であったことがわかります。

    昔ながらの伝統的な建築を重んじる守旧派にその活動を阻まれながらも、彼は建築にとどまらない巧みなメディア戦略によってその活動の舞台を世界へ広げてゆきます。「ピロティー」「屋上庭園」「自由な平面」「水平連続窓」「自由なファサード」を「近代建築の5原則」として発案し「住宅は住むための機械である」と言って憚らぬ機能主義のうちに、次世代の世界の建築家に大きな示唆や影響を与えることになる多くの作品を世に残しました。

    日本でも前川國男・坂倉準三・吉阪隆正といった建築家がコルビュジエのアトリエに入所して「国立西洋美術館」設立の際に尽力しています。また直接の弟子ではなかったもののそのエスプリを最も受け継いだといわれる丹下健三の作品が、国立代々木競技場や東京都庁舎、広島平和記念資料館として見られることなど、その系譜を思うとき非常に感慨深いものがあります。

    いかに美しく人の心を捉えたのだとしても、結果的に今世界の大都市にあふれているのは、ネオ・ルネサンスでもアール・デコ様式の建築でもありません。装飾が排除され、スタイリィッシュで機能性の高いオフィスビルやマンションの谷間を歩きながら「ル・コルビュジエ」は時代に選ばれた建築家だったのだと思いました。

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著者プロフィール

東京工科大学デザイン学部教授。専攻は20世紀美術、デザイン研究。著書に『美術館の政治学』(青弓社)、『自伝でわかる現代アート』(平凡社)、『世界のデザインミュージアム』(大和書房)、『オリンピックと万博』(筑摩書房)、共著に『大阪万博が演出した未来』(青弓社)など。

「2018年 『幻の万博』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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