日ソ国交回復秘録 北方領土交渉の真実 (朝日選書)

  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022599926

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  • [粉骨砕身の賜物]日ソ国交正常化交渉の日本側全権の任に就いた著者が、交渉の様子や成り行きをまとめた作品。領土をめぐる行き詰まるやり取りや、日本国内における駆け引きなど、戦後の外交史において重要極まりない証言が収められています。著者は、当時の首相である鳩山一郎から直接にその大任の打診を受けた松本俊一。なお、本書は1966年の『モスクワにかける虹』を復刊したものです。


    多様な観点から高く評価できる作品だと思うのですが、交渉の開始から批准書交換までを描いた作品ということで、外交交渉の全体像を知る上で非常に参考になりました。特に民主主義国家でない国との交渉の行い方や、国内世論が交渉に与える様子に関する知識を得られたのは大変に有意義。固い文章には違いないのですが、ロシアとの関係の大枠を決定した交渉内容でもあるので、ぜひ興味のある方は一読することをオススメします。


    また、本書が有する「資料的」価値についても特筆すべきものがあると思います。世に言う「ダレスの恫喝」や領土問題をめぐるやり取りの記録は、本書の中でしか明らかにされていない情報もあるということで貴重そのものかと。また、各種の公文書や共同宣言案などの附属資料が非常に充実していることもあり、当時の交渉の様子を頭の中で構築していく上でも役に立ちました。

    〜私はひそかに外交とは忍耐の同義語だと感じた〜

    読みたかったので復刊はありがたい限りです☆5つ

  • 実際に交渉に当たった当事者である筆者が1955~56年、日ソ国交正常化交渉の最前線に立った当時の詳細なメモをもとに「発端」から「共同宣言成立」まで交渉の知られざる舞台裏を明かすというものです。

    本書は外務次官、駐英大使などを務めた元外交官で、衆議院議員(民主党、のち自民党)に転身して日ソ国交回復交渉の全権を務めた著者による同交渉の回想録です。いや、読んだことは読んだのですが、これがまた本当に難しい。こうしてこの文章をつづっている現在ですら、内容が整理されていないという体たらくでございますから。

    自身が交渉の中で残したメモを元に当時の舞台裏、しかもおぼろげながら内容を察するに相当機微に触れるような、ギリギリの交渉をしていたのだろうな、ということがしのばれます。当時の日ソ関係を象徴するものとして、北方領土、抑留者引き揚げ問題ほか、「保守合同」という国内政治の激動期であったことも複雑に絡み、交渉は相当に難航されたそうです。ここのあたりにも国家間で板ばさみになりながらも交渉を続けていくという外交官の苦悩が透けて見えるような気がいたしました。

    さらには、本書ではじめて明かされているそうですが、
    「二島返還で折り合うのならば、沖縄をアメリカの領土とし、日本に返還しない」
    と迫った米国務長官ダレスの恫喝というものがあったりと、本当に苦労を偲ばせるような話があって、その辺は面白かったです。

    そして、実際に交渉に当たった鳩山一郎、河野一郎、吉田茂、重光葵ら大物といえる政治家たちの思惑が浮き彫りにされており、外交上当時の事情は国民には今だからこそ明らかにできることがあって、それは現代でも同じであろうな、ということが察せられました。領土問題が旧ソ連、現在はロシアを始め、韓国、中国などとの間に根深く横たわっていることを再認識する昨今でございますが、心ある外交官の方々は、己の職業的良心と国益にのっとって、ぜひとも粘り強い交渉を重ねて言っていただくことを心から願ってやみません。

  • 引き続き日露関係の勉強。日ソ共同宣言とほぼ同時期にハンガリー事件、スエズ危機が起きたことを改めて認識。時代の変わり目には、幾つもの歴史的事件が重なるものか。

  • 日ソ国交回復交渉に全権として取り組んだ外交官・政治家が自ら著した書籍。帯にも書かれているとおり、「モスクワにかける虹」の待望の復刊。交渉開始前にやり取りされた通知書や、交渉時に日ソそれぞれが出し合った条約案といった資料も充実している。今という時代から見た佐藤優の解説も良い。必読でしょう。

  • 日ソ共同宣言に至る交渉の過程がつぶさに記録された一冊。
    大変読みやすくわかりやすいだけでなく、
    外交交渉の進み方や日ソ双方の主張がよく理解できる。
    また資料として共同宣言全文や、
    前段に検討された素案が掲載されておりこれも非常に参考になる。
    北方領土に関する基礎知識としてぜひオススメしたい。

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