足軽の誕生 室町時代の光と影 (朝日選書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022599940

作品紹介・あらすじ

15世紀後半、応仁の乱で焼失した花の御所の跡地周辺は、盗賊、博徒などのならず者がたむろし、毎夜強盗がおき、殺害された人や死人が道に捨てられ、集団で飲んでは喧嘩におよぶというありさまだった。室町幕府がひらかれ、都と地方の往来は頻繁になり、さまざまな物・人が流れ込み、京都は膨大なエネルギーを吸収して活況を呈していたが、恐怖政治、将軍暗殺と政治制度は疲弊し、御家騒動、土一揆の頻発で地方支配は機能不全に陥った。ならず者=足軽は、どんなきっかけで故郷を捨て、京にやってきたのか。だれを頼ってどこに住み、何をして生計を立てていたのか。足軽の発生を解き明かし、室町時代の光と影を描きだす。

感想・レビュー・書評

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  • 応仁の乱にて活躍した「足軽」について、その構成要素や歴史的背景を追う事で、室町時代における京都近郊社会の一側面を明らかにする内容。守護による幕府運営が機能不全に陥る過程や、牢人に注目した人的ネットワークの実態などが分かりやすい。

  • 牢人・足軽の存在を手掛かりに史料を読み解き、応仁の乱前夜の京都とその近郊の荘園の状況を生き生きと描く。貴族・寺社のものだった京都や荘園に武士たちが様々なネットワークを張り巡らし、その中で無数の連携や敵対を繰り広げていく。没落した守護などの家臣は牢人となって、京都南部に滞留し、戦乱や一揆が起こればそれに乗じて失地回復や再起をかけてそれらの争いに参入していく。朝廷や幕府上層部の動きを追うだけでは感じられない歴史のダイナミックな動きを味わうことができる。昔読んだ石母田正『中世的世界の形成』と雰囲気が似ていると思った。

  • タイトルがユニークと思って借りてみた。
    室町時代末期応仁の乱にかけて足軽の記述が増えてくる。彼らのバックグラウンドとは?当時の様々な日記などをもとに、生き生きと描写するその面白さは歴史の教科書にはない。

    京都の荘園領主の地方への支配力が弱まり、守護など武家に頼る局面が増えてくるその中で地方の有力農民や商人も武家に組み入れられる形で増加、武士化していった。一方室町後半では、義政及び当時の管領細川勝元も10代半ば、何とか政治を回りに支えられやっていく状況。財政も逼迫し、地方を守護に任せる一方京都の徴税を強化する政策を取る。ということでますます地方のグリップは弱くなり、一方有力守護やご家人の御家騒動も頻発し赤松家などは取りつぶされ、そこから下級武士も含めた牢人が生まれ各国や京都に居着くことになる、これら様々な階層から集められた人間たちが足軽のバックグラウンドになる。

  • 室町時代後期(特に応仁の乱以降)に出現した足軽がどこからやって来たのかについて、当時の一次資料(日記とか)を参考にしながら探究してゆくという内容。

    社会の変化は様々な要因が複合的に絡み合った結果起こるのが世の常であり、その意味でこの本の著者も幕府側の事情のみならず地方の荘園システムの変容、国人レベルの武士の活動等を追いながら分析している。

    室町時代ってカオスやなぁとしみじみ思う(笑)

    惣村や一味といった百姓サイドからの記述が少なく、もう少し多角的視点が欲しかったのが玉に瑕。

  • 筋道が雑、もし編集の咎なら朝日選書自体を忌避

  • 戦闘要員としての足軽の誕生、というよりも、発生してしまったならず者としての足軽。そういう人が生まれた社会的・政治的背景を語る本。室町時代の京都はきらびやかだったから、闇もまた深いのだと。思っていたのとは随分違った本ではあった。都に多量の牢人がたむろする。政治が疲弊して爛熟する、と。いや、あんまり現代にこじつけて読むまい。

  • (メモ)
    有力寺社が流通に携わり関所を設ける
    荘園の有力者が武家と結びついて領主に対抗
    商人の一族が足軽になる
    武家奉公人と地方の領地との係わり、朝廷とかかわり和歌を詠む

    史料をあげて推測を交えたエピソードが面白く、この時代の人々の生きざまが伝わってくる。

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著者プロフィール

関西学院大学文学部教授

「2019年 『中近世武家菩提寺の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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