街道をゆく〈22〉南蛮のみち 1 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞社
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レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022605191

感想・レビュー・書評

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  • 司馬遼太郎さん、久しぶりに読んだ。
    やっぱりすごい、ベストセラー作家は。
    余談ですが、私、高校時代『竜馬がゆく』を読んで竜馬に恋をしたのに、大河ドラマの『龍馬伝』は一月中に挫折しました…。

    この本は司馬さんがスタッフや奥様(←最後のほうで知った!)と一緒にバスク地方を旅した記録ですが、フランシスコザビエル、ロヨラ(イエズス会の創始者)、カンドウ神父(昭和の時代の宣教師)等のゆかりの地をたずね、また、バスク以外にも、キリスト教、鉄砲伝来などなど、いろいろ面白い話を聞かせてくださいます。

  • スペイン・ポルトガルということで観光的興味を持って読み始めましたが、やはり司馬遼というか文字通り南蛮でした。
    バスクでこれほどまで語るとは想像もせず、でも読み終わればそうだよなぁと。まぁ小者の発想が如何に陳腐か思い知らされました、改めて。

  • つい最近いただきものではじめて、京都の笹屋伊織の栗蒸し羊羹というのを食べたんですが、甘すぎくなく深い美味しさで、大好きでした。で、そんなような、大人な味わいの一冊。

    毎度そうなのですが、「街道をゆく」の海外版、個人的にははずれがありません。今回は「南蛮のみち」。

    「街道をゆく」の海外旅行編が面白いのは、司馬さんによる「世界史講義」が聴ける、という1点に実は尽きます。
    個人的に世界史の全貌を把握しないまま大人になってしまった、という気がかり?があり、ただそれは「大人になってからじわじわと世界史を学ぶ愉しみがある」という快楽に変わってきています。
    歴史に限らずなんでも(学校で教えているようなものは)そうなんですが、
    こちらの興味の持ち具合と、あちらの語り口との出会い方によっては、殺意を覚えるくらい無味乾燥で索漠たるものになりますが、逆もあります。

    #

    今回、司馬さんが目指すのは、スペインのバスク地方です。スペインとフランスの国境沿いのピレネー山脈に抱かれた地域。

    「バスク地方」と「カタルーニャ地方」というのは、敢えて例えれば日本における「アイヌ」「琉球」みたいなもので、
    つまりは独自のそして古い文化や言語を持っている地域。

    スペインは、1930年代から1970年代まで、戦後の日本の常識では信じられないファシズムな独裁政権が続きました。
    それ以前は、バスクもカタルーニャも、いろいろあっても「近代国家」というシステムとは程よい距離で過ごしていたのですが、独裁政権の時代にどちらも「自分たちの言語」を権力と法律で圧殺されました。当然反発が起こり、どちらの地域もその後、テロ事件が時折起こります。
    (独裁政権終焉後は、それなりに自治が認められていますが、未だに「完全に独立したい」という地熱がなくなってはいません)

    と、まあこのくらいのことは、実は僕は海外サッカーが好きなので、そこから知っていました。

    (カタルーニャを代表するサッカークラブがバルセロナ。独裁圧政の頃は、政権を代表したのがレアル・マドリードというクラブ。
    なので、バルセロナvs.レアル・マドリーというのは、日本の感覚で言うと、東京vs関西というベタな対立に止まらず、
    もっと深刻で血の匂いのする「中央政権迫害者」vs.「地方の被害者」みたいな殺気を(一部の人にとっては)帯びる訳です。
    一方、バスク地方のサッカークラブと言えばアスレチック・ビルバオというクラブがあります。詳しくは無いのですが、なんとこのクラブは延々と、「バスク地方の出身者・血縁者」しかクラブに入れないのです。そんなアナログなアイデンティティを維持しながら、バルセロナやレアル・マドリーに伍して、スペイン1部リーグに位置し続けています。現代サッカー界の七不思議と言っても過言ではないのでは。Jリーグで「東北地方出身の選手しか在籍しない」というクラブが、J1を毎年戦えるだろうか?…)



    で、このバスク地方というのが、つまり国で言うと、スペインなんです(一部はフランス)。

    そして実は日本にカトリックを伝えたフランシスコ・ザビエルさんというのが、ポルトガル人のように見えて実はスペイン人で、更に言うと実はバスク人だったんですね。

    つまり日本に初めて伝わった西洋、「南蛮」という手触りは、多分に「バスク地方」だった。



    まずはこの巻は、「ザビエルの生地までの道のり」です。

    司馬さん一行は、とりあえずパリに上陸。
    かつて名作「アイルランド紀行」が、実は半分くらいイギリス・ロンドンの話だったのと同じで、まずはパリです。

    どうしてかというと、16世紀の人・ザビエルさんは、パリで神学を学んでいたんですね。
    ザビエルがいたパリのかつての街並みを、想像しながら巡る。
    そして時折、不意に温泉が湧き出すように、フランスについて、ローマ帝国について、キリスト教について、ヨーロッパ史について、
    司馬さんが鋭い考察を呟く訳です。油断なりません。

    ザビエルが属した熱狂的な純粋カトリック集団、「イエズス会」。その頭目?のロヨラさんも実はバスク人。

    そんな随想を挟みながら一行はようやくピレネー山脈へ。そして「バスクのフランス側」を経て、とうとうようやく、「バスクのスペイン側」。
    そして、ロヨラやザビエルの生地へと辿りつきます。

    司馬さんの、特段の意味の無い(意味のなさそうな)細部の観察に満ちた海外旅行記に付き合っているうちに、徐々にヨーロッパの歴史が、スペインの歩みが、バスクの悲劇が、カラダに沁みてくる。
    この感触がたまりません。
    そして司馬さんの言葉を聞いているうちに、1980年代のバスクの風景から、恐ろしい速度で意識がワープして、16世紀に日本が南蛮と出会うという事件、それが「いったいどういう意味を持っていたのか?」という重さの解釈も含めて、日本とヨーロッパが邂逅する、ドラマチックな瞬間をBGM付きで目撃している気分にさせられます。
    このエンターテイメント感っていうのは、実に奥深い。笹屋伊織の栗蒸し羊羹。



    すごいなあ、と思ったのは、1980年代にして司馬さんは、

    「やがて、少数民族がより独立を求めてテロルに走る、混乱の時代が来る」

    と預言しています。

    これぁ、すごい。
    その通り、90年前後のソ連圏崩壊から始まって、言語・民族による「少数派の主張」が近代国家という秩序感を破壊するような時代がやってきて、その解決の方向は今も、見いだせないままです。

    慧眼。すごすぎる。



    旅は、どうやらポルトガルまでいたるようです。

    そのⅡを読むのを楽しみに。

  • バスクを学ぶ。

  • 新書文庫

  • 2012.9.29 読了

  •  種子島、鉄砲伝来で有名なフランシスコ・デ・ザビエルと近現代に日本に在住したカトリック神父の中では、一般の日本人にもっともよく知られた存在だったカンドウ神父はともにバスク人だった。いつものように、司馬遼太郎ご一行様がバスク地方で思案に耽る。

  • イベリア半島への旅は、日本の歴史を大きく変えることになった「南蛮」とは何かを感じること。前半パリからバスク地方へと渡り、この地方出身で日本に多大な影響を残したフランシスコ・ザヴィエルの生い立ちを探りつつ、広域国家の中の少数派としてのバスク人について考えている。
    「今後の世界というのは、各国家における多様な少数者たちの不満が活性する時代になるのではないか。」と著者は予言するが、現状をみるとおそろしく当たっている。

  • レビューは下巻にて。

  • 14/8/15読了

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著者プロフィール

司馬遼太郎は、1923年、大阪市生まれの日本の歴史小説家・エッセイストである。故人。
本名、福田 定一(ふくだ ていいち)。大阪府大阪市生まれ。筆名の由来は「司馬遷に遼(はるか)に及ばざる日本の者(故に太郎)」から来ている。
特に歴史小説の大家として知られ、代表作は「竜馬がゆく」「坂の上の雲」「翔ぶが如く」「燃えよ剣」「新撰組血風録」「菜の花の沖」「花神」「世に棲む日日」「梟の城」「関が原」「功名が辻」「国盗り物語」「街道をゆく」「十一番目の志士」「城をとる話」「風神の門」「二十一世紀に生きる君たちへ」他多数。その多くが大河ドラマ化、テレビドラマ化、映画化、コミック化などの形でマルチメディア展開されている。

司馬遼太郎は産経新聞社記者として在職中の1960年に、『梟の城』で直木賞を受賞。
1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞を受賞したのを始め、数々の賞を受賞。
戦国・幕末・明治を扱った作品が多い。
1996年2月に72歳で逝去。
2001年には、東大阪市の自宅隣に司馬遼太郎記念館が開館。

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