アジア食文化の旅 (朝日文庫 お 7-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022605658

感想・レビュー・書評

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  • 30年以上前に文庫本として刊行されたもの。東南アジアを中心に、日常生活での豊かな食文化(日本では見られなくなったものも含む)を豊富な写真と文章から構成されています。巻末で著者の後書きもあるのですが、私が注目したのは解説を「料理の起源」の著者中尾佐助さんが書いているところです。今まで読んだ「食文化」に関する本で参考文献に出てくる「料理の起源」の著者が解説とは。また、参考文献も豊富で40年以上前に出版されていた「朝日百科 世界の食べ物」(全部揃えると140冊以上)があったのを見て、当時高校生だった私が、少ない小遣いで買ったことを思い出しました。

  • 食は文化なり。食べることは命の源であると再認識させる本である。

    少々古い本である(1989年)。
    購入はしたが積ん読状態だった本。『世界の市場めぐり』につられて思い出し、読んでみた。

    トルコ以東のアジア諸国を探訪し、人々が何を食べてきたか、何を食べているかをルポする。観光客向けではない、庶民の「食」を巡るディープな旅である。
    日本と共通する点から、日本の食のルーツも垣間見え、一方で、日本と異なる点から、日本人の食が失ってしまったものがあぶり出されてくる。

    数ページからなる短い章に各テーマに関するコラムと写真が収められている。
    前半は、小麦・米・香辛料・酒といった一般的なキーワードから、各国の食事情をスケッチする。
    インドの路上では、牛乳売りが客の注文に応じて牛から乳を搾って売る。牛=ミルクタンクだ(「乳」)。
    アジア各地では水は往々にして貴重である。革袋に入れて、あるいは甕に入れて、水は運ばれる。水道はまれ。濁っているか、生で飲めるかを論じるのは、アジアや中東の人々には通じない感覚だという(「水」)。
    香港の屋台は活気に溢れ、前の客が食べ残した皿の上に皿が積み重ねられていく(「屋台」)。
    『雨天炎天』(村上春樹)にも出てきたチャイハナ(チャイハネ)は、男たちの娯楽と情報交換の場である(「喫茶」)。

    後半は、納豆や塩辛、豆腐など、日本にもなじみ深い食材のルーツを探る。
    韓国の一般家庭で、毎年行われている味噌玉作り。詳しくは書いていないが、麹は使わず、カビで発酵させるようだ(「味噌玉」)。
    塩辛は魚醤油・なれずしと密接な関係があるのだそうで、魚醤油のあるところには塩辛もあるのだそうだ。フィリピンでは小エビの塩辛が作られるという(「塩辛」)


    余所者にはなかなか見せてくれない台所に入れてもらったり、キムチ作りをするから、と見学させてもらったり。著者はおそらく、人好きのする、魅力のある人なんだろうなと思う。さればこそ、「庶民の食」に迫って行けたのだろう。

    照葉樹林文化論を唱えた中尾佐助氏が巻末に一筆、寄せている。ちょっと辛口で骨太なこの解説も興味深い。


    *韓国の味噌作りは大変興味深いが、この本が上梓されたころには大半の家がやっていたのだとしても、今はどうなのだろう・・・?

    *うちも小規模ながら去年から味噌を作ってみている。1年分には到底ならず、1ヶ月くらいでなくなってしまったが、結構おいしく食べられた(これがほんとの手前味噌)。今年は去年より豆の量を倍にしてみた。秋頃食べられる予定。うまくできているかな・・・?

    *蓮池薫さんによる『半島へ、ふたたび』に、北朝鮮で暮らしていた頃、厳冬を前に、家族総出でキムチ作りをする話があった。大切な冬の食料だから、仕込みにも非常に緊張感があるという、印象深い話だった。

  • 今年は食文化の本をしっかり読もうと思い、手始めにこれを。
    37の食に関するトピックを2ページの文章と多彩な写真でまとめた本です。
    米、餅、納豆などの食品のほか、火や竃神といった、アジアならではのトピックもあり、総括的にアジアの食文化をつかむことができます。牛糞の火を使った煮込み料理がおいしいというインドの老婆の話が興味深かった。日本の炭みたいなものなんだろうか。
    旬の香り、というトピックを読み、日本のハタハタやアンコウ、サンマといった旬の魚や、ハルビンにいたころの凍柿子(柿を凍らせて、半解凍させて食べるもの)、石焼きイモなどを思い出して、食物から季節を思い出すというのもアジアならではということもあるのかな、他はどうなんだろう、なんて思ったりもしました。

  • あーアジア行きたくなった!!

    気になったのは、
    ・韓国では醤油は家で、味噌玉からつくるらしい。
    ・菓子はインドを境にして、西に行くにしたがって甘さが強くなっていく。(ex. ジャレビー)
    ・インドでは「油で揚げる」ことで浄めの意味が付加される。
    ・バナナの葉は包として万能。(綺麗で冷たくて土に還る)
    ・納豆はアジア各地で見た目こそ違えど共通の味。

    生活に密着した食文化を知るのは面白い。

  • 東南アジア、インド、ネパール、パキスタン、トルコ、韓国などの 小麦や米、香辛料台所や火、看板など食に関するもののフォトルポタージュ。 納豆やなれずし、塩辛、おこわ、餅など日本にあるものも起源はアジアで 作っているところ、売っているところなどの写真が興味深い。 1つ1つのテーマについての文章は短いが、写真が多いので分かりやすい。 アジアの食文化を知る入門編。

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著者プロフィール

大村次郷 1941年、中国長春市に生まれる。写真を濱谷浩氏に師事する。主に、オリエント、インド亜大陸、中国大陸を中心に、フォト・ルポルタージュを手がける。主な著書に『アジア食文化の旅』(朝日新聞社)、『遺跡が語るアジア』(中央公論新社)、『シルクロード 歴史と今がわかる事典』(岩波書店)、「月刊たくさんのふしぎ」に、『地下につくられた町カッパドキア』(19907月号)、『龍を追う旅』(1992年2月号)、『アジアの台所たんけん』(2002年12月号)、『ふしぎな動物たち』(2010年9月号)などがある。東京在住。

「2012年 『パンがいっぱい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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