ベトナム戦記 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022606075

作品紹介・あらすじ

この本は1964年末から65年初頭にかけて、開高健がサイゴンから「週刊朝日」に毎週送稿したルポルタージュを、帰国した開高自身が大急ぎでまとめて緊急出版したものである。

感想・レビュー・書評

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  • 僧侶は尊敬されるが政権から嫌われたのは旧体制の象徴であるからか。「戦略村」だの「枯葉剤散布」だの馬鹿げた戦略をとったものだが、サイゴン政府の「公開処刑」に反発して(真の愛国政府を自認する)ベトコンも自爆テロをする。やがて衰退し滅亡したのは両方。帰日せずベトナムの(フランスからの)独立を目指して戦った「残留日本兵」のことも書いてある。南は北に征服されたがサイゴン陥落の直前まで勇敢に戦った。女性兵士はまだしも少年兵はすごく悲惨な感じがする。「新しき時代を作るのは青年の熱と(カリスマに踊らされて流す)血」ってか

  • 当時34歳の人がこれを書いたのか。ベトナムに来て100日で。大したもんだなあ。
    私がベトナムに来た当初の100日なんか右往左往していただけだな。SNSやブログに文章は書いたけど、洞察も何もないものしか書けなかったし。
    比較するほうが悪いって言われればそこまでだけど。

    この本の舞台は1964年末から1965年ぐらい。
    読んでいて呆れるのは、その10年ほど前を舞台にした「おとなしいアメリカ人」と書いて有ることがほとんど同じだからだ。そしてこの10年後の1975年サイゴン陥落時のルポでもほとんど変わらない。

    曰く:
    ベトナム人は神秘的で貧乏でよく分からない。
    これはそのまま、ホー・チ・ミンの評価でもある。

    ちなみにホー・チ・ミンで言うと、彼が1945年9月2日に独立宣言を読み上げたあたりでOSS(CIAの前身)と接触しているが、そこにあるアメリカ人の彼の人物評も上のとおり。
    いや君ら、1945年から1975年まで何してたのよ。

    この本の中で開高健はベン・カットの戦いを参観してベトコンに襲撃されている。基地でも戦闘でも死ぬときでも、開高健の筆を持ってしても、ベトナム兵は撃たれて呻きもせずに死んでいく。
    開高健が中学生の時に勤労奉仕中にグラマンの機銃掃射で襲われたそうだが、そのとき撃たれていて、その様子をグラマンのパイロットが書いていたら、同じように書いたと思う。
    また、このベン・カット戦で彼が撃たれていたら、なんで自分はこんなところで死ぬんだろうって思いながら、呻きもせずにぽかんと死んでいっただろう。

    昨年末にTwitterで夏休み子ども科学電話相談のやり取りがバズった。
    「アリを踏むと黒い汁が出るのはなぜ」→「君もつぶれたら汁が出る」
    というもの。

    1965年のことは分からないが、もし今戻れるのならば、戻ってみてみたい。
    本当に当時のベトナム人は貧しかったのか?

  • 開高健はベトナム戦争がなぜ起きたか語らない。どちらが悪いのかも語らない。ただヘルメットをかぶって、ベトコンの狙撃兵に怯えながら、兵隊と一緒に地べたを這いずる。その低い視点で見た戦争こそ、戦争を戦っている兵隊たちの目に映る戦争なんだろうと思う。それは悲しく、アホらしく、悲惨を通り越して滑稽ですらある。

  • これは「ジャーナリストによるルポルタージュ」ではなく、「小説家によるルポルタージュ」だと思う。本書で伝えている事が私的な感想レベルに留まっているのだ。これは本書が書かれた時期(1965年)にもよるものもあるだろうし、半世紀近くたった2012年現在からみての読後感なので、出版当時の反響・評価とは異なるだろう。
    だけど、ベトナムへ行っているのに、ベトナム語は喋れない&通訳もつけないで、その国のことを取材しようだなんて、それで本当に何がわかるというのだろう?

  • 「開高健」のノンフィクション作品『ベトナム戦記』を読みました。

    「横木安良夫」の『ロバート・キャパ最期の日』に続きノンフィクション作品です。

    -----story-------------
    この本は1964年末から65年初頭にかけて、「開高健」がサイゴンから『週刊朝日』に毎週送稿したルポルタージュを、帰国した「開高」自身が大急ぎでまとめて緊急出版したものである。

    最前線はどこですか、どこですかと聞いて、そのたびにたしなめられた。
    全土が最前線だというのがこの国の戦争の特徴である。
    ベン・キャットも最前線ならサイゴンのマジェスティック・ホテルだって最前線である。
    いつフッとばされるかわからないのである。(本文より)
    -----------------------

    「開高健」が、1964年から1965年にかけて約100日間をベトナムで過ごし、サイゴンの街や戦場の模様をルポルタージュした作品です。

     ■日ノ丸をいつもポケットに…
      ・ベトナムの匂いはすべて"ニョク・マム"
      ・どこへ行っても必ず従軍僧と"憂国筆談"
      ・十七度線国境附近と、そこに住む人びと
     ■ベトナムのカギ握る?仏教徒
      ・統一力を持つのは仏教徒とベトコンだけ
      ・記者を東奔西走させる怪情報
      ・烈日の下、八日間のクーデター
     ■ベトナム人の“7つの顔”
      ・ベトナム人はユーモアが好きである
      ・ベトナム人は寛容であり、短気である
      ・ベトナム人の十七歳には、すぐ火がつく
      ・ベトナム人は命を粗末にする
      ・ベトナム人には三つの性格がある
      ・ベトナム人の心は複雑で、ベトナム人自身にもよくわからない
      ・ベトナム人には、こんなことが起る
     ■“日本ベトナム人”と高原人
      ・「アメリカも、ベトコンもベトナムから出て行け」
      ・「……日本人は殺さない、……尊敬している」
     ■ベトコン少年、暁に死す
     ■“ベン・キャット砦”の苦悩
      ・ジャングルの海に漂う砦と兵と人
      ・砦の床下にまでおよぶ、ベトコンのトンネル
      ・すべてがつかれきっている、すべてが……
     ■姿なき狙撃者!ジャングル戦
     ■ベトナムは日本に期待する
      ・爆撃、砲撃が農民をベトコンに走らせる?
      ・戦争は階段を一つ上がった、どこへ行くかアメリカ
     ■あとがき
     ■解説 限りなく"事実"を求めて(日野啓三)

      写真レイアウト/三村淳


    最前線での戦場のリアルな状況(帯同したベトナム軍の第一大隊は、200人のうち、たった16人になってしまったとのこと… 過酷な戦場で良く生き残れたなぁ… )だけでなく、ベトナム人の気質や慣習が、食から排泄、性に至るまで… そして、北部、中部、南部での違い等を含め、豊富な語彙を活かし、わかりやすい文体でレポートしてあり、50年前の作品にも関わらず読みやすく仕上がっていましたね、、、

    しかも、軍人(ベトナム軍&アメリカ軍)から、僧侶、元日本兵(終戦後もベトナムに残りベトミンとして独立戦争に従軍)、大学教授、遺跡で出会った青年(実はベトコン?)、山岳民族、ダム工事(日本工営)の日本人 等々… 様々な人々と接触し、ベトナムという国や、そこに住む人々、文化や歴史に至るまで、多面的に情報を収集してあり、信頼性の高い内容に仕上がっている印象を受けました。


    特筆すべきは、ベトナム戦争の初期の段階において、南ベトナムの敗北… アメリカも撤退せざるを得なくなると洞察したところかな、、、

    アメリカの介入により、南ベトナムの内戦が北ベトナムの介入を招き、結果的にはアメリカ対共産勢力というカタチに変質… 農民は村を焼かれてベトコンに走る。

    やがて、親米主義者も反米主義者に変貌して行き… 次第にベトナム人は「外国嫌い」になってしまう、、、

    これは、日本が大東亜戦争戦争で中国大陸でやったことの繰り返し… と予想しています。

    数年後、それが現実になったもんなぁ… 鋭い洞察力ですね、、、

    「開高健」… 他の作品も読んでみたくなりました。

  • ベトナム戦争のリアルな体験、暗闇の中、いつ攻撃されるか分からないという極限状態の中、肉体的にも精神的にも追い込まれていく戦場の方の姿がまざまざと眼前に現れた感じだった。

    やはりどんな形でも良いから、戦争や過去の歴史について、日本だけでなく、世界のことも知っておくべきだと思う。

  • ベトナム戦争のルポ、地域内の小競り合いがイデオロギーの大量消費になり時計の針を巻き戻した戦い
    昔のそして今の日本はどうなのか

  • アメリカ映画でよくベトナム物を見てきたのだけど、この本を読んでベトナム戦争の本当の姿が分かった。前線などないのだ。ベトナムの国全部が戦いの場であったのだ。

  • ベトナム戦争の最中、著者自らが現地入りして部隊に合流し、時には地獄の最前線にその身を置いて何とか生き延びた上で作成されたリアルな戦場レポート。ちなみに本書は現地の状況を刻々と綴っているのみで、ベトナム戦争の原因、意義、主張等は一切記述されていない。

    いずれにせよ許容せざるを得ない戦争なんて絶対的に存在しないし、その例外もない!!!
    そして銃器ってゆうものは、戦争然り、最近の乱射事件然り、凶悪犯罪しかり、人間を破壊し、生み出すのは憎悪のみでホントろくなもんじゃないなって最近つくづく思う。

  • 釣り好きの好々爺。歳若い知人の、開高健に対する印象は
    これに尽きた。その好々爺も、はるか昔、戦場を目の当たり
    にした作家だった。

    「ベトナム人でもなくアメリカ人でもない私がこんなところで
    死ぬのはまったくばかげているという感想だけが赤裸で強烈で
    あった」

    ベトナム戦争である。ある世代には強烈な印象を植え付け、
    ある世代には「間に合わなかった」と思わせ、ある世代に
    は既に歴史の教科書に載るような戦争である。

    私は「間に合わなかった世代」である。だから、ベトナム戦争
    に惹かれるのかもしれない。事実、私の祖棚にはどの戦争より
    もベトナム戦争関連の作品が多く鎮座している。

    本書は高校から専門学校時代にかけて、何度も読み返し、その
    後も折に触れて再読して来た。あまりにも手に取り過ぎてボロ
    ボロになっているので、この際、処分しようかと思って読み
    始めた。

    やっぱり捨てられない。既に古典的名著と言ってもいいだろう。

    1964年末から1965年にかけての約100日、南ベトナムに滞在
    し、現地の人々と話し、路地裏を歩き、テロの現場を見、仏教徒
    による抗議の焼身自殺を目撃する。

    圧巻は南ベトナム政府軍の大隊がベトコン制圧を目的とした作戦
    に従軍した際の顛末だ。この作戦での体験が、著者に強烈な印象
    を受け付けただろうことが伝わって来る。

    そして、ベトナム戦争での体験が後の小説『輝ける闇』『夏の闇』
    に繋がって行く。

    デイヴィット・ハルバースタム『ベトナムの泥沼から』、ニール・
    シーハン『輝ける嘘』と並ぶ良書だと思う、ただ、このふたりは
    ジャーナリストだが、開高健は作家だけに事実そのままではなく
    脚色もあるのでは…と感じる部分もある。

    余談だが、私は普段「ヴェトナム」と表記するのだが、本書の表記
    に準じて「ベトナム」と書いて来た。でも、「ヴェトナム」の方が
    落ち着くんだわ。

  • 骨太で、語彙が簡潔で読み易く、レポートとしては
    文句なしに素晴らしい文章。

    オーパーもこの流れだったよなー。
    オーパーでも出ていた、ベトナム戦争で生き残ったときの
    話はこれだったのかと、とひっそり思い出す。

    しかししかししかし、いかんせんネタとしては古すぎた。
    50年前に読みたかった。

  • ウィキペディアによると従軍して最前線に出た時200名のうち生き残ったのは17名だったと言う。まさに命懸けの取材だ。

  • 1

  • 本書は開高健氏が1964年末から65年初頭にかけてサイゴンに滞在した体験を纏めたルポである。当時はベトナム戦争の泥沼化も始まる前であり、そもそもベトナムに関する情報も少なく、「週間朝日」に草稿した開高氏のレポートは大変貴重なものであったといえよう。

    表紙の写真から察して硬骨な社会派ルポかと思いきや冒頭の開高氏には余裕があり(良い意味で)悪ふざけも散見される。「自分に酔った」写真も多い。しかし旧南北ベトナムの政治や人々といった内情を知るにつれ、特に後半のジャングルへの潜入を持って激しい感情を著者自身に焼き付けたことがわかる。氏の体験が小説という形態を持ってその後の「輝ける闇」に描かれている。

    ベトナム戦争というとアメリカと旧ソ連との代理戦争のイメージが強いが、その背景には複雑で狡猾なベトナム人気質があったことが伺える。ベトナム戦争初期の滞在記であり認識の変遷を味わえる貴重なルポである。

  • 1964年、開高健は朝日新聞社臨時特派員として米軍が本格的に介入するベトナムへ飛んだ。どちらからどちらに頼んだのかはわからない。野次馬根性の強さを思えば開高から頼んだ可能性も高い。東京オリンピックよりはベトナムの方がお似合いだ。
    https://sessendo.blogspot.com/2018/11/blog-post_15.html

  • ベトナム戦争初期の100日間に及ぶルポ。当時まだこの戦争?の現状が正確に世界に伝わっていなかった状況で現地(南ベトナム)で見聞したことをリアルに伝えている。

    自ら見聞きしたことを元にここで何が起こっているのか、また未来はどのようになるのか真摯に考え抜いて
    いるのが伝わってくる。

    ジャングルへの従軍同行のリアルさは言わずもがな。現在から振り返っても分かり難いベトナム戦争は、いったい何のための戦争だったのか、改めて考えさせられる。

  • 何年前に買ったかはわからないけれど、少なくとも7年以上は、いつか読むから、と手元に置いておいた一冊。再び手に取るきっかけは、角幡唯介「旅人の表現術」。最終章の200人の部隊が17人しか生きのこらなかった激戦の描写は、思ったより淡々としているように感じた。もっとも秋元キャパと取り合ったという、もう死ぬかもしれない、という一枚が雄弁に語っているのかもしれないが。ベトナムの人に関する所感では、現政府や外国勢力など、石にかじりついてでも粘り強く戦って倒すという意志は見られるが、打ち倒した後にどうしたい、という意識は驚くほど希薄、といったところか。50年後の現在でもそうかはわからないが。また、アメリカ軍と南ベトナム政府が農村を破壊するから、皆、北ベトナムの方へ行ってしまう、というのは何をかいわんや。

  • ベトナムに旅行したので、読んでおかなければと思い、近代史を勉強するつもりで読みました。

    戦争中なのに昼寝 という事実が戦後世代には驚きでした。

    戦争ダメ絶対 といった上っ面だけを撫でた本ではないです。
    体験記です。力強い本です。

  • 1990年(初出1964~65年の週刊朝日)刊行。著者は菊池寛賞受賞作家。米国の在り様を一変させたベトナム戦争も遠くなりにけりだが、本書は米国介入・北爆前の同戦争下の現地に分け入った著者の取材記。解説者の言うようにルポらしからぬ文学的表現に彩られ(個人的には解説者ほど好意的には見ていない)、好みが分かれるかも。が、現地の生々しさ、特に、反米・反政府・反共・非暴力抵抗主義の仏教僧の諦観、ベトコンに武器使用法・戦術を伝授した元日本陸軍兵士の現地生活、南ベトナム軍兵士に蔓延していた厭戦気分は強い印象を残す。
    また、著者の小説家としての原点と言えるかもしれない体験記でもあろうか。

  • ベトナム

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著者プロフィール

1930年大阪市生まれ。大阪市立大卒。58年に「裸の王様」で芥川賞受賞。60年代からしばしばヴェトナムの戦地に赴く。「輝ける闇」「夏の闇」など発表。78年「玉、砕ける」で川端康成賞受賞など、受賞多数。

「2022年 『魚心あれば 釣りエッセイ傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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