1990(底本1986)年刊。著者は元野村総合研究所所員。
大和型戦艦(それは戦後のタンカー等の造船技術へ)、零式艦上戦闘機等の航空機(戦後は自動車へ)、新幹線。これらは戦前から戦後にかけて日本の技術・開発の粋を集めた逸品であるが、それ以外にも(電子顕微鏡・トリニトロンテレビ・電子卓上計算機・普通紙複写機・自動焦点カメラなど)世界に冠たる製品が多数存した。
本書は、その具体的な数々を叙述し、日本の創造性如何と、日本企業が手を出せなかった分野とを検討していく。
そもそも既存品を手早くまとめていく、そのマネージメント力。全く新たな切り口で技術を見る目線。当該技術がどういう具体的製品に落とし込めるかという観点。基礎研究に対する金銭的支援の過少さ。
今も昔も変わらずに存在する、こういう問題点は十分感得できそう。
勿論、日本人にも創造性は当然あるのだ。
ただ、生物・生物化学面の弱さ、米国の落ち葉拾いと隙間戦略の面に止まる点は問題点として挙げざるを得ないか。
なお「創造性がない…というのは勉強不足、努力不足」「猛烈に努力してとことん突き詰めたらアイデアは自ずと出てくる」「そういう場を作ってやると、日本の若者は創造性を発揮」(→勿論、場を作ってやらないとできないのかという疑念は残るが。)の渕一博氏の言は、一面的ではあるが、至宝の言とも言えるのだ。