アメリカ合州国 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.36
  • (2)
  • (10)
  • (20)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 101
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022608031

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • # 書評☆1: アメリカ合州国 (朝日文庫) | 同名単行本版への引用に悪意を感じた旅行記

    ## 概要
    - 書名: アメリカ合州国 (朝日文庫)
    - 副題:
    - 著者: 本多, 勝一
    - ISBN: 9784022608031
    - 出版: 1981-10-20
    - 読了: 2021-04-19 Mon
    - 評価: ☆1
    - URL: https://book.senooken.jp/post/2021/04/19/

    ## 評価
    本多勝一の書籍 (例: 日本語の作文技術) の凡例の中で,以下の記載があり,これが気になって本書を読んだ。

    >三 、 The United States of Americaは「ア メリカ合州国」と訳し、「合衆国」と は書きません。(ただし、「合衆国」が誤りだと主張するわけではありません。理由は拙書『アメリカ合州国』〈朝日文庫〉の <あとがき> 参照。)

    書籍の本体の内容は,著者のアメリカ旅行記となっている。戦争,人種差別,植民地など著者の根底にある問題意識・思想に基づいたやや結論ありきなインタビュー,旅行記となっている。

    個人的に,著者の細かい内容をくだくだ書いて,要点や結論・論点が見えにくい論調と相性が悪いため,軽く眺めて読み飛ばした。

    肝心の理由の説明部分は,説明が足りておらず,同名の単行本版の書籍にさらに引用が飛ばされており,怒りを感じた。悪意を感じた。

    ## 引用
    > ### p. 10: 凡例
    >三 、 The United States of Americaは「ア メリカ合州国」と訳し、「合衆国」と は書きません。(ただし、「合衆国」が誤りだと主張するわけではありません。理由は拙著単行本『アメリカ合州国』〈朝日新聞社〉の <付録3> 参照。)

    本書の後から出版された日本語の作文技術などの凡例と,参照文献が僅かに異なっていた。本書ではなく,本書の前に刊行された単行本版の同名著書に理由が書かれているらしい。

    だったら,後の本も最初から単行本を参照するようにしろと怒りを感じた。

    > ### p. 287: あとがき
    > この本のタイトルは「アメリカ合州国」となっていて、黒人を中心にしたルポであるにもかかわらず、タイトルの中に「黒人」に類する言葉が出て来ませんが、その理由はここまで述べてきた文章によって明らかと存じます。つぎに、合衆国でなく合州国とした理由。これはきわめて単純なことであって、The United States of America を全く、そのまま訳せばこうなるからです。改めて「合衆国」を考えてみますと、衆は people に通じ、あたかもさまざまな人民、さまざまな民族がひとつにとけあった理想社会であるかのような誤解を与えます。それが理想または将来の希望的現実であると好意的に解釈もできますが、現在は弱肉強食が "自由" にできる典型的社会であって、強食側にはいいけれど、弱肉側には実に恐ろしい国です。また州によっていかに法律や正確を大きく異にするかは、一度でも合州国国内を旅行した人は痛感したことでしょうから、「合州国」という名は正訳であるのみならず、その実情にもよく合っています。「合衆国」は中国語からの輸入らしく、これについては単行本『アメリカ合州国』(朝日新聞社) の付録に専門学者の検討結果を収録してあります。同書には芝生瑞和氏による解説資料「深南部 --黒人問題の背景」も収録されています。なお加藤秀俊氏も「合州国」の方が実情に合うことを主張されており (『アメリカの思想』NHKブックス)、また鶴見俊輔氏は「北米合州国」を提案されています (『北米体験再考』岩波新書)。

    気になっていた理由が書かれていた。「合衆国」という表記はさまざまな人種がとけあった理想社会の印象を受けるが,実際は異なり,直訳の「合州国」とするのが適切だと考えたかららしい。

    それよりも,「合衆国」が中国語からの輸入であり,これについての考察が同名の単行本版に収録されていると書かれており,怒りを感じた。わざわざ文献とたどって来たのに,そこに全て書かれていないというのが手間に感じた。大元になるものがあるのならば,最初にその文献を参照すべきだ。

    ## 結論
    著者の旅行記がまとめられていた本だった。

    最初に読んだ日本語の作文技術が良かったので,何か国語的に意味があるのかと思って読んだ。

    気になっていた箇所がさらに同名の単行本へ引用が飛ばされており,わざわざたどってきた自分にとっては怒りを感じることだった。

    最初から単行本に引用を飛ばしておいてくれれば何冊も経由しなくて済んだ。どうせ単行本版も文庫本版も内容はほぼ同じなのだから。

    書籍本体には全く興味がなく,あとがきの引用箇所を目当てに読んだのもあり,悪意を感じたので☆1の評価にした。

  • 朝日新聞記者の著者が、ヴェトナム反戦運動、ニューヨークのスラム街の様子、黒人差別の実態、そしてネイティヴ・アメリカンの人びとの言葉などを記す、いわばアメリカの「闇」についてのルポです。

    著者は、「自由と民主主義の国」としてのアメリカ像を否定しているわけではありません。アメリカには、「光」と「闇」の両面があり、「両者をプラスして二で割った」ものが真実だというのでもないと言います。これはおそらく、アメリカという国が、きわめて大きな矛盾を内包した国だということを意味しています。とはいえ、「自由と民主主義の国」としてのアメリカとは異なる、別の側面にスポット・ライトを当てたということを、はっきりと述べた方がよかったのではないかという気がします。。

    こんにちでも、本書に描かれたような、アメリカの「闇」はなくなったわけではないでしょうし、解決へと向かっているかどうかも定かではありません。黒人のバラク・オバマを大統領に選出した国であり、そのオバマが医療保険制度改革や銃規制の問題に手をつけかねている国でもあります。しかし、アメリカは、そのうちに抱え込んでいる大きな矛盾を動力にするような、きわめてエネルギッシュな国だという印象を持ちます。本書を読んで、そういった考えに誘い出されました。

  • 表面には出てこないアメリカ合衆国の裏側が見えてくる

  • 徹底的に非白人の視点に立ったルポ。これが発表された当時、相当反響があり、偏った見方だと非難されたみたいだけど、最近は専らアンチ白人な考え方の僕には、寧ろ自然に思える。そうでなくても、黒人や先住民はしゃべりたくてしょうがないという感じで、そこにいってその話を聞いてくるという行為は、ジャーナリストとして当然のことをしたと思う。でも確かに、白人ばっかりを悪者にしている感は少しあるかな。この本で一番印象に残った言葉は、「日本人はベトナム戦争で始めてアメリカの正体を見抜いたようだね。・・・だけど変だなあ。なぜヒロシマやナガサキのとき、それを見抜けなかったんだろう。・・・」という黒人の言葉。この人のルポはクセがあると聞いていたけど、たしかに。普通とは違う呼び方の言葉が多くて、それぞれ理に適っているのだけど、英語を「イギリス語」というのだけは違和感があった。なぜこう呼ぶのかは書いていなかったので分からないけど、別にどっちで読んでも変わらないと思うから、短い「英語」の方で良いんじゃないかな。読んでいて『何でも見てやろう』を思い出していたのだけど、よく見たら解説が小田実だった。付録:ジョゼフ酋長の最後の戦い「酋長」の読み方を調べるたびに忘れている気がするので(たしか『ファインマンさん最後の冒険』のときも調べた)、ここに備忘のために書いておくと、「しうちやう」。『アメリカとは何か』という本を読んだことがあるけど、あれは読んだ意味なかったなあ。(9/22 追記)あとがきに映画「イージー・ライダー」のことが書かれているのですが、ちょうどいい具合にNHKがBSで放送してくれたので観ました。この映画はパブリックドメインになっているらしくて、Wikiquoteにせりふがいっぱい載っているので、印象に残ったものを引用しちゃいます。George: Oh, they're not scared of you. They're scared of what you represent to 'em.Billy: Hey man. All we represent to them, man, is somebody needs a haircut.George: Oh no. What you represent to them is freedom.Billy: What the hell's wrong with freedom, man? That's what it's all about.George: Oh yeah, that's right, that's what it's all about, all right. But talkin' about it and bein' it - that's two different things. I mean, it's real hard to be free when you are bought and sold in the marketplace. 'Course, don't ever tell anybody that they're not free 'cause then they're gonna get real busy killin' and maimin' to prove to you that they are. Oh yeah, they're gonna talk to you, and talk to you, and talk to you about individual freedom, but they see a free individual, it's gonna scare 'em.

  • 飛躍が、多い。

    そして白人の社会構造に関しても、従来の著者なら白人側からの綿密なフィールドワークを行っていたはずだ。


    違和感を感じるは、現代日本人が戦争責任を問われる感覚に近い、4次元の感覚。

    それにしてもハーレムやネイティブ・アメリカン居住区のフィールドワーク等、未だ卓越したものを持っている。


    個人的には、ウィットを忘れた文章が悲しい。

  • 侵略者である白人よりも、黒人やインディアンに共感をよせる本多勝一。
    これが偏っていると結論付けてしまうことが、いかに浅はかで偏っているのかということを
    アメリカにおけるさまざまな事象を取り上げて証明していく。
    著者の取材の仕方は独特で、中学生の頃から文章の書き方を意識していたというだけあって、
    記録のとり方がうまい!
    地図を書かせてもうまい!

    敢えて批判をさせてもらうなら、
    ・当時は「ホモ」が苦手だったようだ。
    男性の同性愛者に対する差別的感想が何箇所か見られたが、これには時代的制約もあったのだろう。
    ・もう一つはアメリカを単体として捉えているのではないか、という点。
    もちろんアメリカ合州国なのだから、ひとつの国なのだけれど、
    コロンブスの新大陸発見から話を始めるのであれば、
    AmericaだけでなくAmerica「s」についても言及すべきだったのではないだろうか。

  • 合衆国ではありません。合州国なんです。

  • 現場にこだわり、言葉にこだわる。本多氏の原点(頂点?)がここにある!! 噂の真相誌上で最後はすごく格好悪かったのは、とても哀しかった。でも著作に傷がつくわけではありません。心ある若人よ、これを嫁。

全10件中 1 - 10件を表示

本多勝一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×