1995年(底本1990年)刊。著者は日本貿易振興会アムステルダム事務所長。
戦後の数多の米国映画を素材に、米国の戦後社会を切り取り、解釈しようと試みる書である。
① 良くも悪くも、米国社会の変容が戦後世界の前衛的な役割を果たし、また、一部の映画がその社会変容の予見・羅針盤の役割を果たしてきたことが読み取れる。
具体的には、ベトナム戦、公民権運動、マイノリティの主流が黒人からヒスパニック系に、フェミニズム、家族観の変化、黒人の中産階級化、若年層の体制対抗の減弱と高齢化社会、アジアへの蔑視とその裏腹の憧憬がテーマ。
② ベトナム戦争からの超克が「プラトーン」に如実に反映(そうなのかと驚く視座)。
③ オーストラリアに米国のフロンティア、あるいはフロンティア精神の残像を見ることができる。
④ フィリピン・アキノ革命(=マルコス政権崩壊)が、ベトナム等で忌み嫌われた米国流民主主義の再生という自己認識。そこまで米国は高く評価しているのか?と。