ぼくたちの洗脳社会 (朝日文庫 お 42-1)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.81
  • (28)
  • (30)
  • (44)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 319
感想 : 28
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022612441

作品紹介・あらすじ

経済万能社会は、もはや終わった。時代は今、多様な価値観により支配しあう"自由洗脳競争社会"への転換期を迎えているのだ!新たな文化論の旗手としての若者の支持を得る著者が、洗脳力がもたらす変化と幸福を説く異色の現代社会論。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • (著者のブログで無料公開していますよー)
    農業革命、産業革命、そして情報革命。1995年に書かれたこの本に情報革命の意味を教えられた。
    以前に読んだ、世界最古の神話の読後と同じ気持ちになった。共通するのは『パラダイムシフト』、自分の価値観や信念を一旦カッコに入れる思考しないと見えないものがそこにある。

  • 95年に出版された本だが、論そのものは十分現実の世界の17年間が立証しているように見える。

    農業革命、産業革命、そして今の情報革命がいろいろな価値観や生き方を変えていくだろうし、パラダイムシフトにいる自分たちはその変化に気づいたり、自分の枠にとらわれて未来を予想することはできないと考えられる。

    洗脳とは常に社会によって行われてきているが、その中でどのような社会が次は来るのかを考えることも重要だと思った。

    既に絶版されているが、できれば続きをだしてもらえると面白いと思う。

  • アルビン・トフラーの『第三の波』と堺屋太一『知価革命』からインスピレーションを得て現代を「自由洗脳社会」と定義付けた、95年に発行された「オタキング」こと岡田斗司夫初の著書。
    本書では、農業革命によって生まれた封建社会、産業革命によって生まれた自由経済社会に続く現代を高度情報化社会によって再びパラダイムが更新され、自由経済競争社会に続く「自由洗脳競争社会」とも呼ぶべき潮流がやって来ていると述べている。ここで言う「洗脳」とは、「多くの人々の価値観を、ある一定方向へ向かわせようとする行為すべて」として規定しており、ブランドやメディア、教育といったものも洗脳行為と見なした上で、現代は誰もが発信者となって洗脳の主体者として行動できる社会が到来していると論じている。
    このような主張に対して、ゼロ年代の当事者である自分としては、同意しつつも良くも悪くも90年代のパラダイムから述べられたものとしての感覚が拭えなかった。というのも、一つは過去のパラダイム上に構築された就職や結婚といったシステムが崩れつつある事に楽観的な態度である事への違和感。そして、もう一つが著者が「洗脳」という言葉を用いる通り、他者に影響を与える事に肯定的な態度に対する違和感。実際の所、格差や貧困、虐待が自明のものとなった今の視点からは楽観的な態度はとれないだろう。そして、大多数はむしろ他人の意見を否定する事を恐れ、自分の意見に共感してほしいだけなのだ。。そう、90年代に比べてゼロ年代って、本当に痛々しい十年だったんだよ。
    読んでいる中で、自分の頭の中を常によぎっていたのが2008年に起きた秋葉原無差別殺人事件。当時25歳だった容疑者は非正規雇用を転々として生計を立てており、携帯サイトの掲示板で度々書き込みを行うも誰からも共感を得られなかった彼は、著者の言葉を借りて言うならば「自由経済社会」の負け組であると同時に「自由洗脳社会」の負け組であったと言える。二重の意味で否定されてしまった時に、僕等はどこに行けばいいのだろうか。

  • 発刊当時読んだ本だが、改めて読み返してみた。20年以上前に書かれたものとは思えないほど現在を言い当てており、素晴らしいクオリティー。ただし、当然全てが書かれている通りの未来となっているわけでもないので、これから新たな読者が読むべき本かは疑問。ただし、前半の普遍的な内容の箇所は読むべき価値があると思う一冊。

  • 最も大事なもの、
    「今の自分の気持ち、この自分の気持ちを大切にする」
    と言うのは、重要なキーワードです。

    たとえばルネサンス以前、
    聖書といえばラテン語の筆写本でした。

    そのため、聖書は大変な貴重品で、
    読める人間も聖職者に限られていました。

    だから当時の人々は、
    教会や聖職者をすごく尊敬していました。

    荘厳な教会の大伽藍、
    反響する聖歌隊の歌声、そして
    分厚くて読むことのできない聖書。

    中世の人々が、いかに教会に
    畏怖を感じていたか、本当に
    実感はできませんが、何となく
    分かるような気はします。

    しかし、グーテンベルクが
    活版印刷を発明したおかげで、
    だれでも家庭で聖書が読めるように
    なってしまいました。

    あの無限の謎をたたえた書物を、
    買って読むことができるのです。

    すると、教会での説話と聖書の矛盾に
    気がつく人も出てきます。

    イエス=キリストは荘厳な教会を
    建てて自分の像に祈れ、
    なんて一言も言っていないじゃないか!
    その結果、人々が教会に対して
    感じる尊敬、権威は
    どうしようもなく衰退してしまいました。

    その価値観の変化は人々を、
    中世の「疑問を持つな。ただ祈れ」
    という価値観から解放し、
    ルネサンスをさらに加速させ、
    産業革命の足がかりとなったのです。

    人々の価値観が変わると、
    社会のシステムもすべて、
    大きく変わってしまいます。

    技術の進歩は人々の価値観を変え、
    社会システムをも変化させたのです。

    技術や科学が変化すれば、
    それにつれて社会の価値観も変わる、
    と言ったのはこういう意味です。

    「いいもの」「安いもの」が
    たくさん売れる時代ではないことは、
    日本のサラリーマンも
    実感していたからなおさらで、
    『知価革命』はべストセラーになりました。

    堺屋は、その中で次のように
    トフラーを批判しました。

    「「第三の波』のすべてが変化する、
    という前提は社会構成員の価値観が
    変化する、ということである。
    その変化する価値観を
    具体的に述べない予測は不十分だ」

    では、堺屋が『知価革命』の中で
    述べている価値観の変化とは
    どんなものでしょうか?

    堺屋はいかなる時代、いかなる社会にも、
    社会の共通概念である基本価値観がある、としました。

    その価値観を次のように定義しています。

    豊かなものをたくさん使うことは
    格好よく、
    不足しているものを
    大切にすることは美しい
    と感じる、人間のやさしい情知」

    堺屋はこの “根源的な"法則を、
    『知価革命』の中で
    何度も主張しています。

    これを使って過去から
    現在における変革をとらえ直し、
    未来を予測しているのです。

    これは歴史をとらえ直す上でも、
    未来を予測する上でも
    とても参考になる法則です。

    つまりその時代のパラダイム
    (社会通念)は、「その時代は何が
    豊富で、何が貴重な資源であるのか」
    を見れば明らかになるということです
    ということは、それまで豊富だった
    ものが急に不足したり、 
    貴重だったものが急激に
    豊富になったり、
    といった変化があるとき、
    それに対応して価値観が変化し、
    その価値観の変化によって社会は
    変化する、ともいえるわけです。


    真面目な話、実際に未来を
    予測しようとする際に、最も
    大事なのは「今の時代と未来では
    どんな価値観の違いがあるか」 という
    ことをはっきりと見極めることです。 

    こういった「社会を構成している
    基本的価値観」を「パラダイム」
    と呼びます(「パラダイム」という概念
    の提唱者T・S・クーン自身はその著書
    『科学革命の構造」 で「パラダイム
    シフトが存在するのは自然科学の
    分野のみに限られる」と言っています。
    しかし現在では社会学の用語として
    使われることが多いようです)

    たとえば、私たちは「自然現象には
    すべて合理的理由がある」
    と知っています。

    でも昔の人にとっては電鳴とは
    「雷様の怒り」だったのです。

    また織田信長の快進撃の原因は、
    鉄砲の使用や楽市楽座という
    経済政策によるものだ、
    と知っています。

    でも、昔の人は「あれだけ強いのは
    天の義を得ているからだ」
    と考えていたでしょう。

    これは彼らが無知だからではなく、
    パラダイムの違いによるものです。

    何かに理由を求めるときに
    「神がそう決めたからだ」とするパラダイムと
    「自然法則でそう決まっているからだ」とする
    パラダイムの違いが、両者の違いなのです。

    そのパラダイムに変化があれば、
    当然、社会システムや政治、経済、
    家庭、生活様式といったあらゆる
    部分に大きな変化が起こります。

    そういう大きな、社会を変えるほどの
    パラダイムの変化のことを
    「パラダイムシフト」と呼びます

    仕事に関しても、
    安定した会社とか出世できそうとかを
    中心には考えません。

    「こんな仕事に就いてみたい」
    「自分の可能性を伸ばしたい」
    といった、自分の気持ちを
    大切にしたいと考えます。

    価値観の中心が「今の自分の
    気持ちを大切に」なのです。

    こういった考えが主流になると、
    今まで考えられなかったような
    社会変化が起きます。

    また社会が変化すれば、構成員の変化
    にもますます加速度がつくでしょう。

    そして、私たち自身の心の中でも、
    このような感性、価値観は
    変化しつつあるのです。


    では、良き人生を。

  • 序盤は現状の整理で、時代的な話題ということもあってか、
    特に他人の未来予測の批評部分は生産性があまりなく感じる

    だが実際に洗脳社会の説明に移ると未来への予測がことごとくこの本の原則に従っていることが分かる。この想像を持ってすれば他人の未来予測の批判も納得できる。
    そして今の社会を見返すとその予測の過渡期であることを実感させられる。今からでもこの考えに従って行きていくことが自分の人生の一助になることは間違いない。

  • 1995年時点でここまで未来予測ができているのが凄い。

    時代ごとに現代の価値観が変わる、全時代とのズレが疑問として社会に投げられることが多い

    言葉は行動の強制である。

    今の時代は、もはや純粋は資本主義ではなく、知価的資本主義であるともいえる?
    「科学」による幸福も会議的になり、マスコミに対する目も信じられないものになった。
    その中で今の時代はその人々のが大事にする価値観にそった人の中で成功している人を尊敬したがる(オンラインサロン等がいい例)

    中世、奈良平安時代、のような思想的な幸福が原点回帰してきている。

  • 情報革命によってどんなパラダイムシフトが起こるかを説明したもの
    1995年の時点で単行本が発売されて、文庫は1998年発売
    30年後の価値観はどう変わっているかという予想はほぼ当たっている

    岡田斗司夫という人物自体はオタクの偏ったイメージを世間に植え付けた人として認識しているのであまり好きにはなれないんだけど、この本で語っている事については大筋で納得だし同意するかな
    言い回しや例えで反論したい所もあるにはあるけど、本筋の主張に影響はない


    ・農業革命
    ・産業革命
    ・情報革命

    技術による進歩により、世間のあたりまえの常識(パラダイム)が変化する

    狩猟時代は狩りのリーダーに従っていれば食べ物にありつけた
    農耕をするようになってからは農業を取り仕切る人や地主の言うことを聞いていれば最低限の生活はできた
    中世の暗黒時代と言われるが、宗教を信じる事があたりまえで、死んで天国に行ける幸せで十分だった
    科学の発達により宗教の権威が落ち、農業に必要な大家族は田舎にだけ残り、都市型の核家族を前提にした社会が成立
    新しい物を持っている事がステータス、経済優先主義 政府主導の価値観の想像
    テレビを中心にしたマスメディアの存在は人々に同一の目指す価値観を植え付けた

    今や科学の発達が人々の幸せにつながるという幻想は廃れ、経済優先ではなくなった
    インターネットの登場により個人が発信力を持つようになり、お互いに価値観を影響し合う社会が成立
    一人の人間の中に複数の価値観が同居し、シチューションごとに使い分けるのがあたりまえになる


    95年に書かれたとは思えないくらいに今の世の中を言い当てているよなぁ

    青島幸男と横山ノックが知事になったことから、有名人の政治家が増える予想もそう
    ただ有名なだけでいいわけではなく、政治と合致したイメージが必要というのもそうかな
    芸能人も企業もブランドイメージがより重要になっている

    個人に関しては、一個人の持つ影響力と発信力が増して価値観が多様化するというのもSNSのインフルエンサーの事だよね

    1995年、パソコン通信やフォーラムくらいしかない状況で、よくここまで影響力が増すことを予測できたと感心するな

  • 岡田斗司夫初の著書(単行本1995/11、文庫版1998/10)。

    メディアの影響力について。

    本書の改訂版(続編?)が「評価経済社会」(2011/02/25)とタイトルを変えて出版されている。

  • OT5a

全28件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1958年大阪府生まれ。通称、オタキング。1984年にアニメ制作会社ガイナックス創業、社長をつとめた後、東京大学非常勤講師に就任、作家・評論家活動をはじめる。立教大学やマサチューセッツ工科大学講師、大阪芸術大学客員教授などを歴任。レコーディング・ダイエットを提唱した『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)が50万部を超えるベストセラーに。その他、多岐にわたる著作の累計売り上げは250万部を超える。現在はYouTuberとして活動し、チャンネル登録者数は90万人を超える。

「2023年 『誰も知らないジブリアニメの世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岡田斗司夫の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
唐沢 俊一
岡田 斗司夫
フランツ・カフカ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×