- Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022612816
作品紹介・あらすじ
埋め立てられ、汚水を流され続けてきた「ヘドロの海」東京湾は、ハゼ、アナゴ、アオヤギなど、いまも我々の胃袋を満たし続ける宝の海「江戸前」そのものだった…。もぐり続けて十余年。東京湾に暮らす生物と、それを生活の糧にしてきた人たちの営みを綴る等身大のルポ。
感想・レビュー・書評
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中村征夫さんの海と生命への愛が感じられます。
かっこいい男の本だと思ってます!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本広しといえど、京都から東京湾だけを見に行った酔狂な人間は、おそらく私以外にいないのではないでしょうか?
この本を読んで、東京湾の美しさも危機的状況も、もしかしたら今しか見られないんじゃないかしら、と思ったらもうダメ、じっとしていられなくて、高3の夏休みに、十八歳、海へ(中上健次の小説のタイトルですね)とかなんとか言って、東京行きを決行。
前年も(『みんなのバイト』の時に書きましたっけ)日雇い労働者として山谷へ行ったのに、2年続けて行くことになってしまいました、まとめて行けばよかった。
ええっと、本書の前に、あの「サブウ」こと森田三郎が、狂人扱いされてもたった一人でゴミ拾いを始めたことから広がった、異臭がして廃棄物だらけだった谷津干潟に、鳥が訪れるようになるまでになったことを描いた、敬愛する今は亡き松下竜一の『どろんこサブウ』(1990年講談社)が頭にありました。
あるいは成田空港の問題もそうですが、極集中都市・東京の隣接都市である千葉は、周辺都市として何か底知れぬ黒々とした薄汚いものを東京から押しつけられたり、二流都市におとしめられているが故の退廃がきっと充満しているのに違いないと思わせるものがありました。
息をのむ美しい写真と、耳元で親しく語りかけられるような感じの文章とが、海の底の生き物の大パノラマを鮮やかに切り取りとってみせてくれる本書は、いつもは貝殻や刺身や焼き魚にすぎない彼らが、ちゃんとしっかり私たちと同じように、いやむしろ私たち以上に鮮明に生きているのだという、真の姿をみせてくれます。
そして、中村征夫は単なる趣味的・職業的に魚や海の写真を撮るだけの写真家なのではなく、巻き網漁やアサリ漁やタコツボ漁なんかの漁船に同乗して東京湾中を駆け回り、魚と共に生きる人たち、つまり言ってみれば、私たちに魚を届けてくれる人たちをも活写するのです。
彼は熱く、そして冷静に語ります。限りなく豊かな東京湾は、しかし常に危険にさらされている危機的状況にあるのだということを、しかも、そのことは単に湾とか海とかの問題じゃなく、私たち人間にも関わる重大な問題なのだということを。
あっ、でも、やっぱり中村征夫って、本当は海やお魚が好きで好きでしかたがない人なのではないかと思います。だからこそ、それを汚すもの・亡き者にしようとする奴らが許せないから奮起したのに違いありません。
私の東京湾見聞録はどうなった、ですって? 三番瀬も行ったし、準備段階でスキューバーダイビングの免許も取って、実際に海に潜って中村征夫の世界をはっきりこの目で見ることができてご満悦、じゃなくて明確に彼の認識を共有して来ました。 -
東京湾にこんな生き物がいるんだなぁ