ドーナッツをくれる郵便局と消えゆくダイナー (朝日文庫 ふ 19-1)

  • 朝日新聞出版
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (377ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022613615

感想・レビュー・書評

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  • 20年ほど前にタイトルに惹かれて「読みたい本リスト」にのっけてた本を、ようやく読みました。
    アメリカ人の著者はイギリスでジャーナリストになり、20年ぶりにアメリカに帰ってきます。
    そして愛する故郷を、懐かしく、または冷静に観察し、イギリスにコラムとしてその様子を書き送ります。

    基本的に話は盛ってありますし、毒も多分に含まれていますが、日本人が見るアメリカとは違うアメリカは大変興味深いものがありました。
    ずっと諸外国に比べて日本人は視野が狭く、択一的で、ヒステリックなところがあると思っていましたが、この本を読む限りでは20年前のアメリカもそんな感じでした。

    ”現代の旅行者が人生に不確かさを求めないのは明らかで、みなどこへ行っても同じ場所に宿泊し、同じものを食べ、同じテレビを見ようとする。”
    今の日本のことかと思ってしまいます。

    ”物があればあるだけ、人はもっと欲しいと思うもので、もっと欲しいと思うと、そう、もっともっと欲しくなってしまうからだ。”
    選択肢が多すぎるカフェでのやりとりのあとに書かれた文章ですが、これまた現代日本にも言える気がします。
    そして私も選択肢の多すぎるカフェで途方に暮れるタイプです。

    便利を目指して進んできた結果、古き良き文化を懐かしむ傾向というのも書かれていました。
    融通の利かないお役所仕事については、日本ばかりではないのか、という驚きとともに、イギリスの、利用者の都合を考慮した大人の対応に感心しました。
    まあそれも、人口の違いなのだと思いますが。

    移民についてのアメリカの対応についても、「先進国の中で一番移民の割合の少ないアメリカ」という評価なのですね。
    それより断トツに少ない日本という国は、まだ未開の国なのでしょうね。

    ”「大学へ行くために家を出たら、子供たちはもう本当の意味では戻ってこないのよ」と同じように二人の息子を旅立たせた隣人が先日物思いに沈みながら言っていた。(中略)今は私が完全に間違っていたことがわかる。息子はいていないようなものではなく、そう、いなくてもいたのだ。そして今、息子はもういない。”

    必要なことしか喋らなくて、ほとんど自室で勉強ばっかりしていた息子でも、一緒に暮らしているというのと家を出て暮らしているのは大違いだと私も思いました。
    こんなことなら家から通える大学に行けといえばよかった…と。

    少々文章がウザ…くど…過剰ですし、何しろ20年前ですから前世紀の話で、スマホなんてまだなかった頃の出来事ですから、話半分で聞くべきなのでしょうが、読んでよかった。
    面白かったです。

    あ、ドーナッツをくれる郵便局というのは、年に一回のお客様感謝デーの時の郵便局です。
    お役所がそんなサービスをするなんて!という驚きをもって書かれたエッセイですが、わたしは日常的にドーナッツをくれる郵便局があるのかと思って20年間この本のタイトルを眺めていたので、ちょっと肩透かしでした。

  • すこし奥田英朗のエッセイっぽいかもしれない。
    示唆に富んだ馬鹿馬鹿しく愉快で笑わずにはいられないものとなっている。しかし、馬鹿馬鹿しいと片付けるのはあまりにもったいない。
    著者の視点と考察が子供っぽさを感じてしまう性格と混ざって、思わず「そういえば」と、いままで気にもとめなかったことに気づいた。たとえば、アメリカでは毎日何千人もの人が枕で怪我をしているという。少し考えたがわけがわからない。胸にアイロンの火傷を負って「服を着たままだったら便利だと思った」という。なんてバカなと思うが、掘り下げるとぼくもその発想がなかっただけだ。その発想があればぼくもやったかもしれない。(そんなこともないか。)

    欠点は多いが憎めない陽気なアメリカに一度は住んでみたいな、と思うコラムだった。
    なにか人生で大事なものを教えてくれたような気がするのは気のせいではあるまいし、言い過ぎでもあるまい。

    なにより衝撃だったのは表紙の紳士がブライソン氏ではないということだ。この表紙の紳士が気に入って買ったのにもかかわらず。よくよく考えるとこの毛髪量では髪の毛はパーティは開けないか。

  • 何で郵便局がドーナツくれるんだよ?
    そしてダイナーって何だ?

    と思い、読み始めました。


    著者がアメリカに住むことで起こったトラブルなんかを、昔住んでいたイングランドと対比しながらチクチクとブラックジョークを交えて書き続けます。

    少し著者がスノッブな気さえしますが、イギリス紳士ですから。

  • 20年間のイギリス生活ののちアメリカに帰ってきた著者から見たアメリカの疑問点などを綴ったコラム集。アメリカ人の視点からアメリカという国を客観的に捕らえていて読んでてあきません。新聞だか雑誌だかに掲載されていたコラムなので1つ1つがすごく短いので寝る前に1つ取りあげて読んでいくのもいいかも。

著者プロフィール

[Bill Bryson]旅行記で有名になる。近年は革新的な本『人類が知っていることすべての短い歴史』(新潮社)によって一般読者に科学史を紹介。最新の本『The Life and Times of the Thunderbolt Kid』では、1950年代のアメリカで育った自叙伝を執筆している。

「2018年 『ニュートンとコーヒータイム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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