梅原猛の授業 仏教 (朝日文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022615190

感想・レビュー・書評

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  • 小学生中学生で、もっとも重要なことが教えられていない。
    道徳。人の道。
    してはいけないこと、すべきこと、そういうことがちゃんと教えられていないのが、今の日本の教育の大きな欠陥です。………

    そんなところから、始まる授業の記録です。
    中学校3年生に向けて、半年間に渡って続けられたそうで、
    読みながら、本当にうらやましくなりました。

    …もうひとつ大事な徳があります。それは忍辱(にんにく)です。忍辱は忍耐とはちょっと違う。忍辱とは辱(はずかし)めを耐えろということ。皆さん、侮辱されたり、軽蔑されることがあるだろう。それに耐える。これは大変です。そういう忍辱が足りないために、電車のなかで席を詰めてと言われたのに腹を立てて人を殺したということが最近あった。これは忍辱がゼロなんだ。
    人生には、失敗して死にたいと思うことが必ずあるよ。そのときに暴発して犯罪を犯したり自殺をしたりするのは忍がたりない。じっと耐え忍ばなくちゃならない。そういうときが人生には何回かある。そのときには忍んで、辱めに耐える。これが大事です。

    こんな言葉を14歳でもらえたら、人生違ったものになるよね。

    授業は聴けずとも、本は読める。
    何歳からでも 人生は立て直せる。

    中学生向けの授業がベースなので、
    とても平易な言葉で、例えも豊富で分かりやすいです。
    なにより、子どもたちに伝えたいんだ!という愛情を感じる言葉がいっぱいです。

  • 梅原先生が2001年に中学生に行った全12回の「宗教」の授業。仏教を中心としてキリスト教やユダヤ教、イスラム教などの宗教。そして「宗教のない文明はない」ということでハンチントンの『文明の衝突』や直後に起こった9.11を引用しながら「世界は多を含むことによってすばらしい」と諭している。仏教のみならず人類の「いちばん大切なこと」かもしれない。

  • 中学生向けの講義の内容ということだけあって、易しく読みやすい。

    日本仏教の歴史や思想、それと関連して、様々な社会問題についての先生のお考えも述べられていて興味深い。

  • 仏教について、お釈迦様から日本における仏教の広がりについて、とても分かりやすくまとめられている。
    宗教が必要かは分からないが、道徳の観点から必要というよりは、現世を生きる人間の心の拠り所、あるいは軸となる思想は必要だと思う。その点、仏教の考え方はまっとうだし、本質をついている気がして、それなりに好きなのだが、本を読んでいると、やはりこれからの21世紀以降の社会には、もはやそぐわない点も多く、もっと別の考えが必要なのではないかと実感する。キリスト教も仏教も現存の宗教が機能するのは2000年までと聞いたことがあったが、その通りだと思いだされた。

  • 著者が東寺の中にある私立洛南中学校の3年生を相手に12回に渡って仏教(というか宗教と道徳)について行った講義録。平易な説明だが、大人が読んでも十分深い内容で読み応えがあった。丁度911テロ直後に最終講義が終了したが、その後の世界の動きを著者はどのように評価しているのだろうか。神道が祭り上げるのは怨霊であるなど、井沢元彦と共通する部分がある。そういえば逆説の日本史で梅原説を引用していたりしたっけ。

  • 哲学者の梅原猛が、中学生に向けておこなった授業をまとめた本。 単なる仏教概論ではなく、現代という時代に生きる知恵を仏教から取り出そうという意図で書かれています。

    第6回の授業では、「人生に宗教は必要か」というテーマで討論がおこなわれています。そのなかで、一人の中学生が、宗教によって戦争が引き起こされているという問題を提起しています。また第12回の授業の直前にアメリカで同時多発テロが起こったことを受けて、最後の授業でも異なる宗教どうしの共存の問題に触れられています。

    宗教的多元主義はいうまでもなく重要な問題ですが、著者はイスラム教とユダヤ教、キリスト教の対立が一神教どうしの対立だと主張し、正義よりも寛容の徳を尊重する仏教の慈悲の精神は、今後ますます重要になると論じています。仏教が「慈悲の宗教」だということはわかるのですが、キリスト教などの一神教を「怒りの宗教」と規定して仏教と対比させることには首をかしげたくなります。そもそも、そうした仏教の言上げが宗教的多元主義の精神とは相容れないのではないかという疑問を感じます。

  •  2006年11月15日読了。

     中学生向けの講義をもとにしているため、非常に分かりやすい。日本仏教史の入門書としても手ごろだと思う。

     最後の方で、梅原氏自身の若いころの心境の変化を書いた部分が印象的だった。若いころは「神仏を信じるのは心が弱いからだ」という無神論者だったが、それを克服し、信仰を持つようになったという思想の変化を書いた部分だ。

     梅原氏の本を、もっと読んでみたくなった。

  • 空海が建てた最古の私立学校「綜藝種智院」の流れをくむ京都・洛南中学校にて、2001年に行われた、梅原猛氏による宗教講義録。

    仏教の歴史的流れを知るのに最適。
    主だった宗派の教義の特徴も知ることができ、自分の考えていたことが、知らず知らずどの仏教の影響を受けて出来上がったものかがわかって、自分も歴史の流れの上にいるのだな〜と感じた。

    それぞれの宗派ごとに本山やお寺も紹介されていて、京都にいた頃あまり知識なく訪れていた寺院が急に鮮やかに思い出されたのが個人的に楽しかった。


    ただ、ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟を持ち出して、「道徳に宗教は欠かせない」というのは、中学生にわかりやすく端的に示すためだったとは思うけれど、飛躍しすぎかな、と。

    また、「寛容と慈悲、自利利他の精神をもつ多神教が、排他的一神教の争いが絶えない世界に今こそ必要。」というのは結局「どの宗教が優秀か」という問いから発せられてるという点で、梅原氏のいう「排他的一神教」と変わらないんじゃないかな、と思う。

  • 非常に読みやすかった。
    やはり中学生くらいのころに、きちんと宗教について教えないから、いたずらに宗教を危険なものだと思ったり、いきなり新興宗教にはまりこんだりしてしまうんではないだろうか。
    日本人として、仏教がどのようなものであるか知らないのは恥だと思うし、キリスト教やイスラム教についてもきちんと知るべきだ。

  • 実際の中学校で宗教の授業をしたものを文庫化したものなので、とても読みやすい。自分にはこういう中学生向けの話しがちょうどいいのかなと思ったりもする。授業が行われたのは、東寺境内内にある真言宗設立の洛南高校(中学校?)だ。

    われわれに宗教は必要か? そのQに沿って授業は進む。『カラマーゾフの兄弟』の事例紹介は分かりやすかった。無心論者のイワンは、父親ヒョードルの「神様はあるか。不死はあるか?」という問いに、「神もありません。不死もありません。だけどね、父さん。神様がなかったら文明というものもありません」と答える。梅原猛は、『カラマーゾフの兄弟』は、イワンの思想が中心になっていると読み解く。宗教がなかったら、神を信じなかったら、道徳もありえない。道徳がなかったら何をしてもいいことになる。だから、親を殺しても構わない。。。ドストエフスキーは親殺しも許されるというイワンの思想が近代の帰結と考えていると。梅原猛も、これに同意しつつ、「いま、近代の帰結は見えているけど、まだ救いの方向は明らかになっていない」という。

    宗教がない文明はない。だから、サミュエル・ハンチントンの『文明の衝突』は、宗教の衝突でもあるという。世界の歴史は文明の興亡であり、宗教の興亡の歴史であると見る。

    後半の日本の仏教の流れも分かりやすかった。華厳経の思想、法華経の思想、最澄・空海、法然・親鸞、日蓮・禅宗の思想。そして、明治以降の文学に生きる仏教思想。

    最後の遺伝子の視点に立った、個人のなかに全生物の歴史が入っているという自利利他の説明も何かなっとくする。

    おそらく、何回か読み直すであろう本だと思う。

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著者プロフィール

梅原 猛
哲学者。『隠された十字架』『水底の歌』で、それぞれ毎日出版文化賞、大佛次郎賞を受賞。縄文時代から近代までを視野に収め、文学・歴史・宗教等を包括して日本文化の深層を解明する〈梅原日本学〉を確立の後、能を研究。

「2016年 『世阿弥を学び、世阿弥に学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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