小説論 読まれなくなった小説のために (朝日文庫 か 30-3)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.68
  • (10)
  • (9)
  • (16)
  • (0)
  • (2)
本棚登録 : 118
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022615671

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • とても魅力的な講演録ばかり。小説と映画をとても愛しておられるのだなあと読み手にもひしひしと伝わってくる。まぁとにかく毒舌なのだけれども、彼女の思う「頭の悪い人々」を、彼女はあまりにけなしすぎていて、なんだか気の毒に思えてきた。
    恥ずかしながら彼女の創作のほうはひとつも読んだことがない。ここはひとつ、それを読んでみてから判断しよう。

  • まるで答えそのものであるかのような、答えの塊であるかのような一冊。金井美恵子の小説が、自分にとって、何故これほどまでに魅力的で面白いのか。その答え、自分にとって、この上なく楽しく、唯一無二のものである事の。その当然さがわかると言うか、これを読んで更に納得する、更に確信する、と言った感。どう読んだか、読むこと、如何にして小説を読んで来たのかを語る金井美恵子の言葉を読む事によって。
    読者としては、〈小説のなかで、それを読むことによってある一定の時間なり空間なりを生きるように読む〉ことを考えるし、或いは作者として、〈そういう時間を読者と共有できる言葉を持ちたいという願望で小説なりエッセイを書いています。〉と。ゆえに好きだし自分は金井美恵子を読むのです、と逐一言いたくなるし、実際言いながら読んでいたように思う。
    〈とかくそうした重大な細部が読みすごされます。〉〈まして、小説を読む時、自分の性などを常にアイディンティファイする必要があるでしょうか。〉〈私は、自分が良い作者かどうかはとても判断しかねますが、多少は良い読者だと考えてもいいのじゃないかと思ってます。〉ああ、引用したい。ぜんぶ引用したい。どこもかしかも好きな理由すぎて困る。読み飛ばしていい箇所なんてない。何もかもが自分にとっての答えであり過ぎる。二つのインタビューも最高であり過ぎる。
    読み間違えること、或いは作者という存在についてなど、「小説の方法」を〈私はそれをごく簡単に小説を読むという自覚だと考えています。〉と表現する辺りや、批評についての言葉は特に素晴らしくて、感動さえしてしまうし、金井美恵子が批評を書くことの当然さをも思い知る。〈読んだから書く〉という言葉の意味というかその必然性というか免れ難さみたいなものをも思い知る。そのように読んで来たのであれば、然もありなん、それは極めて自然な事であったのだ。
    読むことを語り、けれど小説を語るより、やっぱり実作の小説を書きたいし、そっちの方がずっと自由で楽しいと言う金井美恵子の言葉を読んで、自分はまた読む方へと、金井美恵子を読む事の喜びへと向かわされる。〈細部の隅々まで味わう読書によって小説を読む。〉とかく細部、何よりも細部であるように思う。贅沢な読書、快楽的な読書。繊細に、事細かに読んで、楽しみたい。自分もそのようにして読んで行きたい。〈生真面目にほとんど快楽を締め出してしまうようなタイプの読者が読み落としてしまうものに小説は充ちているのではないでしょうか。〉自分も出来る事ならば、僅かでも注意深い読者と言うか、良き読者になりたいと思う。それこそ生きるようにして読んで。この上なく快楽的に。
    〈その幾つものイメージというか、幾つもの記憶を、すべて読者にわかれと思っているわけじゃないんだけれども、ただ、無数の独見的な自分の記憶とか、持っているイメージというふうなものを組み合わせてというか、織りまざってしまうものなんですけれども、それを言葉に書くことが、すごく単純な言葉でいうと、何しろ好きで、それを書きたいから小説を書いているんだということに尽きちゃう感じなんです。〉…やはり自分にとって金井美恵子を語る事は、読む事の喜びそのものを語る事なのだ。

  • エッセイではなく1987年に開催されたセミナーを文字起こししたものということで、語り口調そのままなのにいつもの金井美恵子調の文体なのが興味深い。私は大学も文学部も出たわけではないし、難しい文学論は全くわからないアホの読者だけど、それでもちょっとした雑学(というと語弊があるかもだけど)として面白かったし、金井美恵子の口から語られる他の作家のエピソードなんかが意外と貴重だと思う。

    ちょうど前後して「お勝手太平記」と「彼女たちについて~」を読んでいたので、こちらで金井美恵子の語っていることがそのまま小説の中にも出てきていたりして、結局作者が日頃考えていることが作品にも反映されているだけなのだなとわかる。長めのインタビューも2本収録されていて、作中人物たち同様、辛口で手厳しい金井美恵子節ともいうべき物言いがこれまたやはり面白かった。

  • 文庫化、対談2本つき。毒舌。
    フットボール対談、金井さん、楽しそうだなあw

  • 講演録と対談2本。
    今読んでもさほど違和感はないが、講演自体は1980年代に行われたもの(単行本も80年代に刊行)。

  • おおよそ愚痴と他者の言葉の引用。

    12.02.20

  • 世の中に、日本の文学界に、こういうオバサンがいてくれる!と思うと、心強い限り。

  • 読みたい

  • こんな文章書けるのは、金井美恵子だけ。

  • 岩波の講義をまとめたものと、インタビューが2本載っている。講義は20年までのものだけれど、読んでじゅうぶんおもしろい。嫌味ないいまわしも楽しい。つくづく、私には文学的教養が足りないとも否応なしに思わされる。

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

金井美恵子
小説家。一九四七年、群馬県高崎市生まれ。六七年、「愛の生活」でデビュー、同作品で現代詩手帖賞受賞。著書に『岸辺のない海』、『プラトン的恋愛』(泉鏡花賞)、『文章教室』、『タマや』(女流文学賞)、『カストロの尻』(芸術選奨文部大臣賞)、『映画、柔らかい肌』、『愉しみはTVの彼方に』、『鼎談集 金井姉妹のマッド・ティーパーティーへようこそ』(共著)など多数。

「2023年 『迷い猫あずかってます』 で使われていた紹介文から引用しています。」

金井美恵子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×