戦争文学を読む (朝日文庫)

  • 朝日新聞出版
3.63
  • (4)
  • (0)
  • (2)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 34
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022615886

作品紹介・あらすじ

『ビルマの竪琴』『二十四の瞳』『麦と兵隊』『浮雲』『飼育』『グランド・ミステリー』『接近』…太平洋戦争当時の作品から現代作家作品までの主要な戦争文学を読み直し、戦争の描かれ方を検証する連続鼎談。詳細な注と戦争文学年表を付した「戦争文学論」の決定版。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  •  〈つくる会〉と歴史認識論争から20年間の「戦争の語り」をめぐる状況と土台の変化を確認するために再読。1999年刊行の原著に、古処誠二のインタビューと関連年表を追加。集英社の『コレクション 戦争×文学』につながる流れも見えてくる。

     いくつかの点で疑問があったり、その後の進展で古びてしまった記述があったりはするが、学術的なレベルでは、本書の議論がこの20年近くの「戦争の語り」論のベースとなっていることは疑えない。だから、むしろ問題は、この間の人文学・社会科学のアカデミックな達成が、どうして社会的な議論の土台作りに成功しなかったのか、ということではないか。そのことは、本書で成田龍一が描出した、1970年代の歴史学と、森村誠一『悪魔の飽食』・大岡昇平『レイテ戦記』が持ったインパクトとはまったく異なる状況だと考えるべきではないか。

     それを、アカデミズムの側の細分化・タコツボ化に帰責することは容易である。だが一方で、私が考えるべきと思うのは、歴史を語る語り(に限らないのだが)にかんして、アカデミックな議論、知的に誠実な議論を迂回し、棚上げし、それらを参照せずに問題を語る語りが、この社会にはかなり強固に制度化されているのではないか、ということ。このあたりは慎重に考えなくてはいけないが、人文学・社会科学の学術的な仕事が、これほど社会的・政治的に軽視されている時代はないのではないか。うがった見方をするなら、〈つくる会〉以後の右派勢力の〈勝利〉は、こうした反=知性主義の蔓延にこそ、求められるのかもしれない(「反省」が「自虐」に取って代わられていくプロセスは、その象徴的なあらわれとも見える)。

  • 文学へのアプローチって全く門外漢なので、とても新鮮だった。複数分野の専門家が対談してるので、わけわからん観念論に溺れなくて済むのが助かる。

  • 戦争文学年表が便利。
    「調べた上で書く」のと「調べたことを書く」のは違う、とは当たり前のことだが、最近はそれができていない人の多いこと。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

川村湊(Kawamura, Minato)
一九五一年二月、網走市に生まれる。文芸評論家。一九八一年「異様なるものをめぐって─徒然草論」で群像新人文学賞(評論部門)優秀作受賞。一九九三年から二〇〇九年まで、十七年間にわたり毎日新聞で文芸時評を担当。木山捷平文学賞はじめ多くの文学賞の選考委員を務める。二〇一七年まで法政大学教授。
著書に、『異様の領域』(国文社)、『批評という物語』(国文社)、『異郷の昭和文学』(岩波新書)、『言霊と他界』(講談社学術文庫)、『近世狂言綺語列伝』(福武書店)、『南洋・樺太の日本文学』(筑摩書房。平林たい子文学賞受賞)、『海を渡った日本語』(青土社)、『満洲崩壊』(文藝春秋)、『補陀落』(作品社。伊藤整文学賞受賞)、『牛頭天王と蘇民将来伝説 』(作品社。読売文学賞受賞)、『福島原発人災記』(現代書館)、『紙の砦』(インパクト出版会)、『戦争の谺』(白水社)、『川村湊自撰集』全五巻(作品社)他多数。


「2018年 『津島佑子 光と水は地を覆えり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川村湊の作品

ツイートする