老いる準備 介護することされること (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 77
レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022615992

作品紹介・あらすじ

『おひとりさまの老後』の背景となった、著者の老いに向かう姿勢や介護保険以降の研究成果が、話しことばでわかりやすく語られる。向老学、介護、市民事業体、ニューシルバーの登場など、なるほどとうなずくデータと分析が満載。ベストセラーを生んだ理由が納得できるおとくな一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 古本屋で見つけたので買って読みました。ほとんど「ケアの社会学」で読んだ内容だったような気がしますが、「ケア…」の方は単行本で、高くて、図書館に買ってもらったので、今手元にありません。上野先生には申し訳ないですが、古本を手元に置いて満足させていただきます。我が家の家事労働についても、職場での清掃活動についても、これは自分の仕事であると思ってやるようにしています。日々つけているチェック表にも、それができたかどうかをチェックするようにしています。○が付くとうれしい。「なんで俺ばっかりやっているんだ」なんて思うと腹が立つし、腹を立てても何の得にもならないので。わり食う山羊座だなあ。ある行動隊の三原則がなかなか良い。一.やりたい人がやる。やりたくない人はやらない。二.やりたい人はやりたくない人を強制しない。三.やりたくない人はやりたい人の足を引っ張らない。上野先生は地域通貨には期待されないようだけれど、何かうまい方法があるような気がする。やりたい人がやればよい。足を引っ張る人がいなければよい。ところで、本書でおもしろかったのは樋口恵子語録。ところが、いま探しても、ぱっと出てきません。線を引いておけばよかった。

  • いろいろな示唆に富む本だった。
    まず、介護と育児の性格が非常に似ていて、その扱いの時代的な変化が興味深かった。今は高齢者が若作りする時代だが、昔は若者が白髪のかつらをかぶったり、元服するとちょんまげを結って大人のふりをする時代があった。近代化に伴って、役にたつものの価値が高くなり、責任能力のない子供と老人の価値が低くなったこと。近代に入って苦しい時代には、姥捨て山と同様に子供も悲惨な目にあっていた。近代家族の成立の中で、育児と介護は女性の役割になり、大家族から核家族への変化の仲で育児も介護も嫁一人の責任になってきたこと。介護保険の登場により、それが解放されたこと。同時に育児もサービス化していること。
    介護保険がそれまで私事だった介護を社会的にオープンにすることで、可哀想な人に対する措置から契約へ、恩恵でなく保険金をはらった代償として当然受けられる権利として意識の変化を促している。
    「介護はもはや家族だけの問題では無い」という国民的合意。
    逆に、介護をした身内も代償を求める動きもある。
    長男の嫁による意地の介護は老老介護や夫婦間介護に変化しており、嫁よりも娘の介護を望むケースが多い。単身になると子供のところに呼び寄せられるか、元いた場所にひとりで残るケースが多い。一人暮らしが増えているのはほとんど高齢者。
    官民協の中で、協が一番地域に根付いる介護サービスを提供できる可能性が高いという。官は効率が悪く、民は利益先行ですぐに撤退するという。
    協の担い手である40-50代の女性が自立できる300万程度の収入と社会保険の整備が重要であるとの意見。大規模な老人施設でなく、ぽつぽつ空家になったところを利用して、10人程度のデイケアサービスができるのが良いのではないかというのはこれまでの生活の延長線上にサービスを利用できるという意味で賛同できる。

    社会的に老人がやっかいものになる条件、というのが面白かった。
    ・近代化と反比例
    ・人口比率と反比例
    ・社会変動の速さに反比例
    ・定住では高いが移動では低い
    ・文字を持たない社会では地位高い
    ・大家族では地位高い
    ・個人主義化で低くなる
    ・財産の所有権高ければ地位高い

    昔の強制的な地域のコミュニティはなくなり、今は選択縁だという。
    地縁、血縁も薄くなった今、自ら選び合う選択縁が重要。選択縁には地域や血縁は関係ない。
    他人に強制しない、足を引っ張らない、言ったことは自ら率先して行う、のが集団運営で大事とのこと。

    少し古い(2005)が、具体的な内容が多く参考になった。

  • 副題は「介護すること されること」。この本の内容があのおひとりさまの老後の裏付けとなっています。社会学者の彼女が研究の軸足をジェンダーや家族から介護に移した時からの足跡です。上野さんは1948年生まれだから私たちより少し上のいわゆる団塊の世代。彼女が50歳の節目を超えた時にこのテーマに目覚めたというから彼女の語る自然な流れというのは、私も実感出来ます。老人問題から老後問題に変化したというのはその辺りのいきさつがよく分かる言葉です。つまり他人事でなく自分自身の問題となった訳です。老年学でなく向老学と名付けた由縁です。

    老いていき、今まで出来ていた事が出来なくなる。能力がなくなり社会的な価値がなくなっても誰からも貶められない社会を作ってゆくことは人生を折り返してみると切望されます。
    この本では老後の在り方はもちろんのこと、介護労働の対価が低いのは何故なのか!など介護の周辺の問題を掘り下げて取り上げています。

    さて、これからの私たちには何が必要とされるのか?それには彼女からのこのメッセージがあります。
    ひとつは"時間はひとりではつぶれない"ということ。2つめは"時間はひとりでにはつぶれない"ということである。
    たとえ有り余るお金があっても家族がいても豊かとは言えない人生を送っている高齢者を見聞きするにつけ、この言葉は重みを増します。時間をつぶすためのノウハウと仲間作り!これらを着々と準備することです。

  • 上野さんの文章は好きです。説明がまどろっこしいこともありますが、基本的に「優しい」ヒトなのでしょう。市民事業についてはちょっと期待しすぎという感じもします。介護保険制度も自立支援法も時間経過した現在、どのように考えておられるのでしょうね。

  • 名著。「おひとり様の老後」のデータ本。
    こっちのほうが断然説得力があり、わかりやすい。

  • 「向老学」による前向きな分析

  • フェミニストもとうとうこの世代になったか、と言う感じ。弱いものが弱いものとして最低限の自立性を得る、という意見は賛成だが、今まで言ってきたことを違うことに驚く。どのあたりで強者の取り分を再配分するか、という提言がもう少し欲しい。

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著者プロフィール

1948年富山県生まれ。社会学者。東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクショネットワーク(WAN)理事長。専門学校、短大、大学、大学院、社会人教育などの高等教育機関で、40年間、教育と研究に従事。著書に『近代家族の成立と終焉』、『家父長制と資本』(岩波書店)、『おひとりさまの老後』(文春文庫)、『女ぎらい』(紀伊國屋書店)、『ケアの社会学』(太田出版)、『サヨナラ、学校化社会』など多数。

「2018年 『情報生産者になる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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