ヒロシマ・ナガサキ 二重被爆 (朝日文庫 や 24-1)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022616333

作品紹介・あらすじ

二重被爆-広島と長崎で原子爆弾を二度被爆した93歳の著者が、重い口を開き語る自らの半生。運命に弄ばれたかのような二度の被爆と、原爆症と闘いながら家族を守り、必死で生き抜くことのみを考えた戦後。最愛の息子を突然の原爆症で失った今、封印してきた「あの戦争」への思いを語る。

感想・レビュー・書評

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  • 広島、長崎で被爆し、93歳で亡くなった山口彊さん(2010年死去)の自伝。英テレビ、BBCがバラエティー番組で、「原爆を2回も体験したもっとも運の悪い男」として紹介したのが、この山口さんである。BBCも、この本を読んでいれば、あんな風には取り上げられなかったはずだ。

    前半部分は生い立ちから、戦中の暮らしぶりが中心で、市民がどのような目で当時を見ていたのかが興味深い。

    後半は二重被爆の体験記。山口さんは長崎の三菱造船の技師で、出張先の広島で被爆した。川には人間が筏のように漂流する風景を見て絶句する。

    自身も左腕に大やけどを負いながら、8日、長崎駅に到着。その翌日、工場で、また空が「ピカッ」と光った。

    「まるで、あれに追いかけられているみたいだ」と山口さんは書いている。

    多くの被爆者がそうであるように、山口さんも率先して被爆体験を語ることはなかった。しかし、「あの戦争をなぜ止められなかったのか」との思いは長年、抱え続け、05年に息子さんを亡くしてから、その思いを強くしたのだという。

    敗戦の年に生まれた息子さんの死因はがん。それは全身に回っていた。「明らかに被爆の影響だ」と書く。山口さんは自分もいつまで生きていられるか分からないと、考えた。同書は、90歳の時に執筆したものだが、文章は引き締まっていて、力がある。

    山口さんは06年、ドキュメンタリー映画「二重被爆」に出演。09年にはジェームズ・キャメロン監督の訪問を受けた。キャメロンは原爆をテーマにした映画を企画していたが、著者側にトラブルが発生し、企画が中断したままになっている。

  • 戦争はだめだ、  
    洗脳されてるし本当のことなんて言えないし 
    お互いが憎みあっても何も変わらない 
     
    山口さんは二度も被爆してひどい火傷を負ったけど 
    長生きされた 
    子供のため、伝えるため、生きるため、 
    すごいパワーがある人 

    少しでも世界中の多くのひとと同じ気持ちに 
    なれたらいいなぁ 

  • All for one, One for all.

  • 広島と長崎での二重被爆。それがなくても著者の人生は過酷な
    ものであった。幼い頃に縊死した生母の姿を見、就職先の
    三菱造船所では職工と大卒社員の待遇の違いを見せつけられ、
    結婚後は授かった長男を医薬品不足で亡くしている。

    戦中、多くの男手が戦地に送られた。広島の造船所で技術者が
    足りない。応援に行ってくれないか。3カ月の広島出張だった。
    それが終わり、長崎へ帰る日、1回目の閃光を浴びた。

    避難列車が出る。閃光に焼かれた体を動かして、帰郷の途に就く。
    長崎へ帰り着いた翌日、会社へ帰郷の挨拶に訪れた時に2回目の閃光。

    原爆に焼かれた広島を、長崎を、詳細に綴っている訳ではない。
    凄惨であったろう情景を描き出している訳でもない。それでも、
    水を求める人たちが辿りついた川で力尽きる様は、それだけで
    原子爆弾という兵器の恐ろしさを教えてくれる。

    一瞬にして、人が蒸発する。ブロック塀に影だけを残して。
    これほど非人道的な兵器があるだろうか。

    戦後、アメリカで核廃絶を訴える教育家の女性が著者を訪ねて来る。
    自分の話をするよりも浦上天主堂の首から下を吹き飛ばされたマリア
    像を見せに連れて行く。

    「こういうことをアメリカはかつて行ったのです。なにも恨みつらみ
    で言うわけではなく、実際にそうなのです」

    20年振りに訪れた広島で、ハワイから来ていた高校生のグループから
    声を掛けられた著者は、自分は二重被爆者であることを告げる。それ
    を聞いた引率の女性教師は「ごめんなさい。本当に、ごめんなさい」。
    そう言って泣き崩れた。

    アメリカは言う。原子爆弾の投下があったからこそ、日本は降伏
    したのだと。しかし、一般のアメリカ人のなかには原爆投下は間違い
    であったと感じている人々がいることを忘れてはならぬ。

    「ファイティング、戦うとは、人を殺めることや人に勝つことを指す
    のではない。困難なことがあってもなお自らを奮い立たせ生きる。
    「生きる」ことそのものが戦いなのだ」

    こんな人を笑いものにしたBBCは大いに恥じろ。

    山口彊氏、二重被爆の初の認定を受けた人。90歳を目前にして、国連で、
    コロンビア大学で、原爆の被害を訴えた人。2010年1月4日、胃癌の為、
    永眠。幼い頃に世を去った生母に、生後間もなく亡くなった長男に、
    沖縄で戦死した弟に、全身を癌に蝕まれ自分より早く亡くなった次男に、
    再会出来ているだろうか。

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/4022616334
    ── 山口 彊《ヒロシマ・ナガサキ 二重被爆 20090707 朝日文庫》改題・復刊
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/20101217
     不適切な人々 ~ 誰も笑ってはならぬ々 ~
     

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