ナガサキノート 若手記者が聞く被爆者の物語 (朝日文庫)

制作 : 朝日新聞長崎総局 
  • 朝日新聞出版 (2009年7月7日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022616388

ナガサキノート 若手記者が聞く被爆者の物語 (朝日文庫)の感想・レビュー・書評

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  • こないだ田畑宏さんの講演会を聞きにいったとき、複合施設内のふだん行かない図書館の新着棚でこの本をみつけた。借りてる本が限度いっぱいだったので、メモして帰って予約。昨日届いた。

    昨年の夏から今年の春まで、朝日新聞の長崎県内版に掲載された「ナガサキノート」を再構成したものだという。長崎総局デスクの佐々木亮(1964年生まれ)が、「はじめに」でこう書いている。

    ▼…映画「ヒロシマナガサキ」のスティーブン・オカザキ監督は長崎の高校生に「君たちより若い世代は被爆者の声を聴くことはないかもしれない」と語りました。それを耳にし、私たちは直接取材できる最後の記者なのだと痛感しました。
     (中略)
     この本は09年5月14日までに載せた31人計270回に加筆・修正し、まとめたものです。年齢・肩書きなどは掲載時のままとしました。
     取材・執筆は20~30代の記者たちが担当しました。大半が「親も戦後生まれ」という若手たちです。(pp.10-11)

    それぞれの人のお話のあとに、取材にあたった記者の名と生年が書かれている。1970年代後半~80年代生まれの人ばかりだ。自分たちが、被爆者の声を聞ける最後の世代だという意味のことは、こうの史代もどこかで書いていた。

    「捨てられた、おすそ分け」という米田チヨノさんの話。
    夫の転勤で東京に越して間もない1958年の暮れ、夫の実家から届いたレンコンをご近所に配った。どの家も「ありがとうね」とよろこんだが、翌朝ゴミ出しに出てみると、レンコンはすべて捨てられていた。近所に被爆者だと話したこともなかったが、「食べると原爆がうつる」と思われてのことだった。

    原爆投下から10年余り経った頃、世間の被爆者に対する目はそういうものでもあった。米田さんの子どもの一人は、親が被爆者であることを理由に破談になっている。

    奇跡的にどこもけがをしていなかった場合も、放射能が身体をむしばんでいた。疲れやすく、ひどい倦怠感に悩まされた被爆者たちは、傍目にはただの怠けとしか見られず、「原爆ぶらぶら病」とよばれ、「怠け者」と罵られもした。

    「命を絶った妹」という下平作江さんの話。
    夫も被爆者だった。ずっと体調不良が続き、どの病院にいっても原因不明。仕事を休みがちの夫は、近所の人から「怠け者」と陰口をたたかれ、妻の下平さんも「奥さん、今月もまた給料ゼロ?」と冷やかされたという。

    被爆から40年たった80年代になっても、偏見は残っていた。
    下平さんが手術で入院中に、同室の人のところへ見舞いに来た中年男性2人が、聞こえよがしに「被爆者はよかよねー。保険料がタダで」と話した。

    下平さんはたまらず仕切りのカーテンを開け「そんなにうらやましいなら、どうぞ被爆者になってください。私と代わりましょう。そして原爆で死んだ母と姉、兄、みんな返してください」と言った。

    原爆を生きのびた下平さんの妹が、被爆から10年後に自殺している。当時、病気や生活の苦しさから、自殺する被爆者が後を絶たなかったという。

    時間を戻してほしい、被爆前の状態に戻してほしい、けれどそれは叶わない。
    そのことに対する償い、補償の一つの方法が、経済的な援護だろうと思う(このことは、事件の被害者や肉親を殺された遺族に対する補償のあり方という話にも通じるものだと思う)。

    「助けて」という声にこたえられなかったことを、すがりつかれた手をふりほどき「見捨てた」ことを、多くの人が悔いとともに語っている。心は麻痺していた、かわいそうとも怖いとも思わなかったという声もある。

    また、「ひもじくてたまらなかった」という話も多くの人が語っている。「戦争は、爆弾も怖いけど、何よりつらいのは日常的な空腹。あの体験は二度としたくない」(築城昭平さん、p.276)

    今も長崎に住む被爆者だけでなく、在韓被爆者や、沖縄の被爆者の話、捕虜収容所で被爆したオランダの人の話も収録されている。

    朝日文庫は、こんなに活字が大きかったか?と思うほど字が大きく(最近の文庫はどれも字が大きい傾向にあるが)、新聞連載が元だということもあって読みやすい。ただ、そのことは、さらっと読めるということとは違う。

  • 題名通り、長崎の被爆者の体験談を若手記者が聞き取って書き起こしたもの。31人の被爆者の被爆前後そしてその後の人生は本当にさまざまで、それだけに市民に与えた戦争被害の無差別性について考えさせられる。こうして本になった31人の背後には、幾多の語り部となった人々がいて、さらにその背後には、語ることを選ばなかった人々もいて、そしてそもそも語ることができなくなってしまった多くの人々もいて。巻末の各人の写真を見つめてから、しばし瞑目した。

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